『グラン・パ・ド・フィアンセ』は、チャイコフスキーの作曲したバレエ「白鳥の湖《第3幕で通常カットされることの多い『パ・ド・シス』の音楽の中からブルメイステルが発見し、
後にジョージ・バランシンが「バランシンのパ・ド・ドゥ《として発表した作品の女性ヴァリエーションにあたる曲を加えて、ジャック・カーターが構成振付したものだそうです。
『グラン・パ・ド・フィアンセ』は6人の女性舞踊手が1人ずつヴァリエーションを踊り、コーダで終わるようになっています。 その中で最後6番目のソロはプリメステル版の黒鳥のパ・ド・ドゥのヴァリエーションでも使われてポピュラーですが、 私は派手な回転や跳躍が組み込まれているわけではないけれど叙情的な音楽に乗って踊る3番目のヴァリエーションが最も好きです。 ごまかしの利かないゆっくりとした振付で、正確な動きとたっぷりとしたタメのコントロール力が求められる、非常にシビアな踊りと言われています。 その意味では、見栄えがして発表会に取り上げられて人気があるけれど、ミスが目出ちやすく、バレリーナ泣かせのヴァリエーションでもあるようです。 とても素敵なこのヴァリエーションがYou Tubeに載っていました。踊っているのは、Ashley Chin-Mark(アシュレイ・チン・マーク)という若いダンサーです。 コメントにUniversity of Utah_Fall 2014 Utah Ballet Performance となっているので、University of Utahの学生でしょう。 両足で立って静止した姿が本当に美しい。加えて片足のポアントでの脚捌きが絶妙だ。グッと堪えたアティテュードのポーズがピタリと止まる。ハッと息を呑みました。 それにトゥで立ってゆっくりとスムーズに回るピルエットが見事。並々ならぬ技術の高さが分かります。 ゆっくり回るとトゥが崩れそうでハラハラ・ドキドキと手に汗握る人やバランスを失ってメロメロ・・・破綻、となる人も多いなか、殆どグラつかず、柔和な表情で軽々とこなしたのは流石です。 かって舞踊評論家の故蘆原英了が、『最も大切なことは、体の平衡と安定である。 ゆっくりとした動きは易しいと思われがちであるが、早く動けば、まだバランスは誤魔化せるが、ゆっくり動くとそれができない。 そのために非常な筋肉の緊張がいる。こらえる為の力が異常に必要である。 アレグロのピルエットは、急激に廻るのだから却って易しい。しかし、ゆっくり回転するというのは何と難しいことだろう。 まるで力学の法則を無視したような遣り方である。』(バレエの基礎知識:昭和25年)と言っていましたが、 バレリーナは、体の「平衡《と「安定《を身に着けるために苦しい稽古が必要なのでしょう。 Ashley Chin-Markのこの素晴らしい踊りは、日ごろの苦しい精進の賜物に違いありません。彼女の努力に敬朊します。 Ashley Chin-Markはダンサーにしては小柄ながら、美しい脚の均整の取れたプロポーション。 病的なまでに華奢で弱々しい舞姫が多い中、 ふっくら豊かな胸、ピチピチとした肢体・・・が眩しい。 クラシックチュチュから覗くあらわな太ももは、はちきれんばかり健康的でセクシー。クラシックバレエには色気はご法度と言われるけれど、彼女の容姿を見ているとそんなことどうでも良いと思ってしまう。 後半になると、額には薄っすらと汗がにじみ、フィニッシュ間近のアティテュードの回転の後、両足のポアントで立って、歯を食いしばって懸命に爪先のズレを堪えて静止した健気な姿には目が釘付けになってしまった。本当に魅力的なヴァリエーションでした。 |
“Grand Pas de Fiancees”
Choreographed by Marius Petipa & Staged by Maggie Wright Tesch
Music by Tchaikovsky (Scène: La sortie des invités et la valse, No. 17 & Grand Pas de Six, No. 19)
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