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ドン・キホーテ〜グラン・パ・ド・ドゥ:ヘレーラ,コレーラ、ABT    (2005.5.5改)

ABTの若い二人のペアによるドンキ・ホーテのグラン・パ・ド・ドゥ。これは、「アメリカン・バレエシアター・ナウ」というビデオの中に含まれています。まさにヤングパワー炸裂というところ。キトリを踊っているのはパロマ・ヘレーラ。当時まだ21歳だったそうですが、本当に初々しくて、摘み立ての果実といった感じ。同じラテン系のアルヘル・コレーラの好サポートに支えられて、のびのびと、しかし、一生懸命に踊っていました。ヘレーラは「大切なことは常に前を向いて進むこと」と前向きですし、コレーラも「パロマに触れるとエネルギーが伝わってきます。息もぴったり」と言っており、二人は本当にベストパートナーという感じで、素晴らしいパ・ド・ドゥです。

アチチュードアンプロムナードの二度の難しいバランスの場面。ヘレーラ、一回目のバランスは、それほど長くはなかったものの無難にこなして、にっこり。これに気を良くしてか、二回目、見せ場を作りました。もうこれ以上は限界というぎりぎりまで頑張ってバランスをキープしたのです。右足のポアントで立ってアチチュードポーズをとり、サポーターの手をしっかり握りしめてバランスを確保してから、慎重に手を離し、アンオーまで腕をあげます。上体がぐらっと揺れ、今にも倒れそうになりましたが、足首を微妙に動かしてぐっと堪え、懸命に持ちこたえましたv。可愛らしいダンサーが、歯を食いしばって必死にバランスをとり続ける姿は、清々しくて、思わず「頑張れ」と励ましたくなりました。期せずして観客からも激励の拍手が沸きました。 自分の出来る限界まで挑戦する彼女の努力には感激です 。 アダージョ終盤近くのリフトから真っ逆さまに落ちるフィッシュダイブもばっちりでした。

踊り終えてのレヴェランス、観客の拍手にホッとして、やっと笑みが戻りました。彼女の表情は、至難な技を無事こなした安堵感と満足感に満ちた美しいものでした。 「うまくいって、良かった」と心の中で呟いているような気がしました。
コーダのグラン・フェッテ・アントゥールナンは笑みを浮かべながら楽々と回転。前半にはダブルも入れてスピードもあり見事でした。ただ、アダージョのバランスもコーダのグラン・フェッテも、それぞれ単独ではとても素晴らしいのですが、それぞれが独立してしまっているようで、スムーズに繋がらないところが惜しい気がしました。長ーいバランスも、速いフェッテも、見せ場を作る意味では、とても効果的なのですが、やはりパ・ド・ドゥとしての「流れ」が必要だと思います。素人の私が偉そうなことをいって恐縮ですが、このあたりが彼女の今後の課題ではないでしょうか。

ともあれ、バランスにせよ、フェッテにせよ、懸命に踊る彼女の姿は、新鮮で感動的でした。ヘレーラもコレーラも踊り終わって汗びっしょり、でもとても満足そう。「若さの芸術」と言われるバレエの、もっとも魅力的な部分を観せてもらった気がします。

  キトリ:パロマ・ヘレーラ
  バジル:アルヘル・コレーラ
  1998年、アメリカン・バレエシアター

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