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瀕死の白鳥:渡邊順子  (2000/9/10)

注)渡邊順子さんの踊りの感想です。渡邊順子さんのお許しを得て掲載させて頂きました。
 
ここに一本のビデオカセットがあります。 JUNさんこと渡邊順子の「瀕死の白鳥」です。 私があえてこれを紹介するのは、このビデオに、今まで見た「瀕死の白鳥」 にはない驚きを覚えたからです。
 
今まで幾つか著名なバレリーナによる「瀕死の白鳥」を見ました。 プリッセッカヤ、マカロア、モイセーエフ・・・・。 でもJUNさんの「瀕死・・」は、これらとはひと味違った新鮮な驚きを私に与えてくれました。
 
このビデオ中には、二種類の「瀕死・・」が入っています。 一つは、1991年、もう一つは今年2000年の4月のものです。特に今年のものが素晴らしい。2つの踊りを見比べて、私は、JUNさんの「心の成長」を感じました。 1991年のものは、彼女はまだ独身でプロのバレリーナを目指していた時のもの、2000年のものは、結婚して少しバレエからとから遠ざかっていた彼女が、奮起してステージに立ったものです。
暫くバレエから遠ざかっていても、これだけ踊ることができるのですから、JUNさんのバレエの素質は、並々ならぬものであるに違いありません。もし続けられていたら、今頃は・・・、と惜しいような気もします。

彼女は、この「瀕死」を、とても丁寧に、情感をこめて踊っています。
しなやかに波打つ腕、神経の行き届いた指先の動き、正確なブーレ・・・
どれをとっても、言葉に言いあらわせないくらい美しい。”死に至る白鳥”そのもの、といっても、言い過ぎではないでしょう。

撮影者:テス
JUNさんはプロのダンサーを辞められて家庭の主婦の道を選ばれたのですが、師である谷桃子さんは彼女がバレリーナを目指されることを望んでいたご様子です(JUNさんのHPより)。 谷桃子さんは「それだけではダメです。母になっても『ひとつの事を続けなさい。』」と彼女に忠告されたそうです。 JUNさんの素質を見抜いていたからこその忠告だったのでしょう。 JUNさんは、けなげにも、その教えに従い、バレエのレッスンを再開し、この「瀕死・・」を踊られたのです。 この「瀕死・・」を見るにつけ、JUNさんのバレエへの思いと、谷桃子さんの教えに忠実に従って懸命に踊っておられる、彼女の真摯な気持ちを感じます。
 
JUNさんは現在、サラリーマンのご主人と一粒種のお嬢さんの家庭の主婦です。 でも、ファンの一人としては、JUNさんが、幸せな家庭を守る傍ら、彼女の貴重な財産であるバレエを、いつまでも続けて下さることを、願って止みません。 そしてもう一度ステージに立って、あの「瀕死・・」の感動をよみがえらせて下さることを期待しています。

渡邊順子さんの了承を得て掲載しています。無断で複写複製を禁じます。

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