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本田美奈子が歌った「トゥーランドット」    (2006.4.8)

トリノ・オリンピックの開会式で、イタリアのオペラ歌手、ルチアーノ・パヴァロッティがオペラのアリアを歌いました。フィギュアスケートの荒川静香選手は、この歌を聴いた瞬間に「運命を感じた」そうです。 過去の困難を乗り越えての栄光が予想されたのでしょうか。その荒川選手、フリー決勝で、とてもとても美しくダイナミックな演技を披露し、見事に金メダルを獲得しました。その曲が、「トゥーランドット」のアリア「誰も寝てはならぬ」です。
「トゥーランドット」は、ジャコモ・プッチーニの最後のオペラです。トゥーランドットと言うのは中国の北京のお姫様の名前です。 美しいお姫様への求婚者は後をたたず、彼女に一目惚れしたダッタン人のカラフ王子もその中の一人でした。 しかし、トゥーランドット姫は、美しいけれど氷のように冷たい心の持ち主でした。 彼女は、自分の結婚相手になる条件は、彼女の出す3つの難問に答えることができる者と決めていました。答えられなかった者は即刻首切りの処刑に・・・。 でも、カラフ王子はトゥーランドット姫の出した3つの難問に答えてしまいました。 そして、動揺したトゥーランドット姫に「朝までに自分の名前を言い当てたなら、自分の命を捧げます」と申し出たのです。 これに対しトゥーランドット姫は家来達に「王子の名前が分かるまで、誰も寝てはならぬ」と伝えます。それを聞いたカラフ王子が勝利を確信しながら歌うアリアが、この「誰も寝てはならぬ」なのです。

  誰も寝てはならぬ王子の名を知るまでは。
  秘め事を知るのは我が心のみ。
  朝の光がさす頃に...我が名をあかそう。
  口づけは氷のような心をも溶かすことだろう。
  夜明けと共に星よ消えゆけ、
  姫は必ずや我が胸に、我が胸に、我が胸に.。
 
2005年末、急性骨髄性白血病のために急逝された本田美奈子さんが歌った「誰も寝てはならぬ」を収めたCDがあります。「時」というアルバムです。「ミス・サイゴン」など、多くのミュージカルの舞台を経験してきた美奈子さん。クラシックの歌もしっかりと伸びやかに歌いきる実力は並大抵のものではありません。軽やかでとても透明感のある歌声の本田美奈子さん、アイドル歌手から、ミュージカル女優へ、そしてクラシックの歌姫へと、新しい境地を開いただけにその夭逝がとても残念でなりません。
このCDでは、「誰も寝てはならぬ」をはじめ、サンサーンスの「白鳥」、ドニゼッティのアリア「人知れぬ涙」、「新世界」「ソルヴェイグの歌」など、有名なクラシックの曲が並び、どれも雰囲気良く穏やかな気持ちで聴くことができます。
彼女は、死の直前の病床で、再びステージに立つことに備えて、発声練習をしていたとのこと。様々な音楽ジャンルに挑戦し、今まさに大輪の花が咲こうとした矢先の死、安らかにお眠りください。

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