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映画「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」を観て来ました。この映画は、元英国首相のサッチャーが認知症になってからの日常と、サッチャーが政治家として世の中に出て、54歳で首相となり、
65歳で首相の座を降りるまでのエピソードを綴った映画です。現在と過去とがめまぐるしいく入れ替わり、政治家としての思い出と、
家族への思い出が錯綜し、ストーリーがわかりにくいのですが、不思議に冒頭から引き込まれてしまいました。
物語は、81才のサッチャーが認知症のため朦朧とした意識の中で昔を回想していく数日間を描いたものです。オープニングは、
年をとって認知症のため警護されているサッチャーが自宅をこっそりと抜け出してスーパーにミルクを買いに出かけるシーン。
家に戻ると、すでに死去しているのに未だに死んでいないと思っている事業家の夫、デニスの幻が次々と浮かんで、回想が始まる。
サッチャーが話している相手は亡霊なのです。雑貨商の家に生まれた彼女が、政治家としての階段も昇りつめて首相になり、
失墜した英国を再建し・・・そして落選。朦朧とした中で、夫デニスの遺品の洪水の中で、「あなたは幸せだった?」とつぶやき、夫の思い出に浸っている姿で終わります。
実は、あのサッチャー元首相が認知症だなんて知りませんでした。そして認知症であることをあえてとりあげた映画の内容は驚きでもありました。
この映画は政治家マーガレット・サッチャーの伝記というより、愛する夫や子供たちとの時間を犠牲にし、
たった一人で闘い続けたサッチャーが、信念を貫き通したがゆえに、自分にもたらした代償に苦しんでしまった、というひとりの女性の物語です。
それにしても、雑貨屋に生まれた一人の娘が、まだ女性への偏見の多い時代に政治家になり、その強い意志で困難を乗り越えながら道を切り開いて首相となり、
首相就任後もフォークランド紛争など難問に全力でぶつかっていく姿には感動を覚えます。
こんな時代に10年以上も首相を続けた信念の強さは今の日本の政治家に見習ってもらいたいものです。
若き日のサッチャーを新人のアレクサンドル・ローチが演じ、メリル・ストリープが首相だった50歳代〜80歳代までを演じています。
監督は、女性のフィリダ・ロイド。「茶碗を洗って一生を終えたくない」、「あなたは幸せだった?」といった台詞に、女性監督らしい目線を感じました。
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映画「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」
原題:THE IRON LADY、2011年イギリス映画
スタッフ:監督フィリダ・ロイド、製作:ダミアン・ジョーンズ、
脚本:アビ・モーガン
キャスト:(マーガレット・サッチャー)メリル・ストリープ
(若年のマーガレット・サッチャー)アレクサンドル・ローチ
(デニス・サッチャー)ジム・ブロードベント
(若年のデニス・サッチャー)ハリー・ロイド
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