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ドン・キホーテ ~ 森の女王のヴァリエーション:JungYon Seo  (2017.7.30)

バレエ『ドン・キホーテ』の森の女王のヴァリエーションのお手本とも思えるくらい素敵な踊りの映像がYouTubeに載っていました。 踊っているのは韓国の서정연(JungYon Seo)。ADC IBC International Ballet Competition 2017に挑戦した時のものです。 長い脚のスリムな均整の取れたプロポーション、 表情は穏やか愛らしく、踊りは、丁寧で柔らかく上品で、タメるべきところしっかりタメて、回るところは無理なくスムーズに回って・・・。 こんな素敵なバレリーナが居るんだ・・と、うっとりとして眼を離せませんでした。 全く力みがなく自然で、アティチュードとアラベスクのポーズが惚れ惚れするほど美しくうっとりでした。
バレエ『ドン・キホーテ』(レオン・ミンクス作曲)の森の女王のヴァリエーションは、アントワーヌ・シモーヌの曲で、あとから追加された曲です。 『眠りの森の美女』のリラの精と似たところがありますが、違いは女王独特の優美さというところでしょうか。 終盤のイタリアンフェッテ以外は大技がなく地味な感じの踊りですが、堂々と気品高くエレガントな女王らしい『雰囲気』が求められます。 優雅な音楽と振り付けで、キープするところはしっかり、ジュッテは元気よく、上半身は顔の位置にも気を配りながら腕を大きく柔らかく動かす・・・という 究極のエレガントな踊りで、若いダンサーの憧れヴァリエーションの一つです。 この踊りは、後にバレエ『海賊』のパ・ド・ドゥにも使われ、マーゴ・フォンティーンとルドルフ・ヌレエフによって踊られて、世界的に有吊になりました。
このヴァリエーションは、背中を綺麗に見せることで一層美しさが際立つので、後ろを向いた時こそ気を抜かないよう気をつけたり、 終盤のイタリアンフェッテでは、しっかりと軸をとり目線を定めて回らないとジタバタして見えがちだし、重心を意識しながら体を引き上げてバランスをとらないと軸足が崩れて破綻・・・、 とミスも目立ちやすく、難易度の高いバレリーナ泣かせの踊りでもあるのです。これをコンクールで踊るには、よほど勇気が要ったことでしょう。 まっすぐ伸びた綺麗な脚と、まろやかな腕が美しく、踊りは全く力みがなく美しく、自然で優雅で気品に溢れ、かつ可愛らしく、惚れ惚れして見入ってしまいました。
出だしのアティチュードでは、アンオーの腕がまろやか可愛らしく、優雅なアラベスクでは、美しい脚にうっとり。 続くエカルテ・ドゥヴァン。脚は上がるだけ挙げたほうが良いとされるこのポーズ、グッと堪えて華麗に決めた開脚の角度は驚異の180度超。 蹴り上げた脚は無理なく高々と爪先までまっすぐ伸びている。ここまで容易に高々と脚を挙げることができるのは股間接が完全に開く証拠。日頃の厳しい稽古で、完璧なアン・ドゥオールが身についているのでしょう。 しかも蹴り上げたところで、グッと堪えて一瞬停止。極限のポーズにハッと息を呑みました。こんなに高く脚を挙げても軸足が殆どグラつかずトゥの先のズレもなく柔和な表情で軽々とこなしたのは流石です。これだけ挙げると、 かってシルビーギエムが『こんなに挙がるのよ。凄いでしょ!!』と言わんばかりに足を挙げ過ぎ、わざとらしさが鼻につき『エレガントの欠片もない』と言われたこともあるけれど、 JungYon Seoは、これほど高く挙げても爪先から手の指先まで神経が行き届いて品が良く、惚れ惚れするほど美しかった。
極め付きは、イタリアンフェッテ。片手アロンジェのアラスゴンドとアンオーのアティチュードの組み合わせの連続というこの難しい技。 今にもトゥが崩れそうでハラハラ・ドキドキと手に汗握る人も多いなか、振り上げた脚はほぼ垂直でピタリと止まります。 片足のポアントで立ったままで、ほぼ垂直に高く上げた脚をピタリと止め、続く回転でも全くバランスを崩さず、美しいアチチュードのポーズをグッと堪えて美しく決めるという、 並々ならぬ技術の高さが分かります。 8回のイタリアンフェッテでは、メロメロになって6回位しか回れない人もいるけれど、彼女は頑張って最後の8回まで回りきりました。 イタリアンフェッテをこれだけ正確に美しく踊れたのは素晴らしいこと。人並みはずれた技術の習得は、日頃のたゆまぬ精進の賜物でしょう。彼女の努力に敬朊します。
JungYon Seoのしなやかな身のこなしには気品が漂い、難しい箇所に差し掛かっても、柔和な笑顔を失わず、見終わったとき心の中に花が咲いたようなホッとした幸せな気持ちになる。 フワッとまろやかな弧を描く腕、トゥの先までスッキリ伸びた長い脚・・・、クラシックチュチュがとてもよく似合い、時折垣間見えるツンにはほのかな色気が漂う。 ポアントでの足の運びは軽やかで、まるでチュチュの裾から光る泡を撒き散らしているよう。 手の指の先から、伸びやかな爪先まで細かく神経が行き届いて、JungYon Seoは、まさにクラシックバレエを踊るために生まれてきたと思われるくらい。『若さの芸術』と言われるバレエ。JungYon Seoは、まだ17歳でSeoul Arts High Schoolの学生だそうですが、弱肉強食のバレリーナの世界の中で、一層大きく羽ばたいてくれることを願っています。
JUNGYON SEO 2017 ADCIBC -Queen of dryads (donquixote)

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