【トップページへ戻る】

JUNさんの「瀕死の白鳥」    (2002.11.07改)
(『新鮮な瀕死』に感動。成長するダンサーは美しい。)

注)JUNさんの踊りの感想です。JUNさんのお許しを得て掲載させて頂きました。
 
同じ踊りを踊っても、見るたびに新たな感動を与えてくれるダンサーがいるものです。JUNさんもその一人です。
 
今年もまた、JUNさんの「瀕死の白鳥」を観る機会に恵まれました。私は昨年12月、丁寧で心のこもったJUNさんの踊りに、深く感動したのですが、今回はそれ以上に新鮮な驚きを覚えました。
昨年末JUNさんが「瀕死の白鳥」を踊ったとき、彼女は「去年の瀕死よりは今年の瀕死の方が、良かったと思う。でも来年また瀕死を踊ったら来年の方が、いいかもしれない。瀕死を踊るチャンスがあったら踊り続けたい。」と言っておられましたが、それが実現した今回、再び「瀕死」を踊れることへの喜びと、これにかけるJUNさんの意気込みは、より大きかったようで、その気持ちが、最高の「瀕死の白鳥」となって現れたのだと思います。
 
彼女は、ご自身のHPに今回の「瀕死」について書いておられましたが、そこには、新しい挑戦、思うようにいかない、逃げ出したい、でもそれは出来ない・・・・・心の葛藤が見られました。
とても踊る事が難しく。パドブレを踏みながらブルーの気分になって涙がこばれそうになりました。 私はこの作品を2000年、2001年、今年と連続して踊り続けているのですが、 今回ぐらい、パドブレを踏む事が大変な事はありません。
実は、今回 湖の上を優雅に泳ぐ白鳥をイメージして踊るため、 トゥシューズと言うよりはバレエシューズに近い、マリー・タリオーニが1832年に履いたバレエシューズの様に柔らかなトゥシューズを履いています。後ろにパドブレを踏み足が軽やかに滑っているかの様にバドブレを踏む様心がけているからです。 今回は2回のアラベスクに神経をすりへらしています。
新しいチュチュを着て、新しい挑戦。このための苦しいレッスンを続けるJUNさんの姿が目に浮かびます。
 
JUNさんは、今回の「瀕死」を踊るにあたり、かなり心配をなさっておられたようで、本番の一週間前、以下のようなメールを送ってこられました。
私の踊りは明日から本格的に踊り込みに入ります。
殻をやぶる事の難しさに悩んでいるのかもしれません。3年目の壁。自分の「瀕死」を踊ろうと思うと大変なんです。
今、衣装をオーダーで作ってもらっているのですが、ルジ*ハナの先生に「瀕死の白鳥」の衣装を依頼しました。白鳥の衣装を作ると言う概念をなくして作って下さいとお願いしましたのです。
去年の瀕死はある意味で凄くいいできだったのだと思うのです。だから、今年、去年以上の踊りを私自身が踊れるのかな〜〜〜と思っているのかもしれません。
舞台に立っただけで去年の私と今年の私は違います。でも、それがいいのか、悪いのか私自身にはまだわかりません。
JUNさんの「新しい瀕死」への取り組みへの悩み、そして湧き上がる不安がひしひしと感じられます。
 
私は、「3年目の壁。自分の『瀕死』を踊ろうと思うと大変なんです。」という言葉が妙に気になって、私は、「そんな弱音を吐いてどうします。自分を信じて、心配しないで頑張って下さい」とメールを送りました。
すると、彼女から、力強い返事が来ました。
足で『瀕死の白鳥』を表現してみたいと思います。足に注目して下さい。今回の瀕死は。
彼女の心は決まったようでした。
 
そして、迎えた本番の日、JUNさんは練習の成果を身をもって証明しました。彼女が「足に注目して下さい。」と言っていた意味が分かりました。
照明がかなり明るかったのです。今までの「瀕死」は、薄暗い青白い光の中で一羽の白鳥が踊る・・・というものでした。これほど明るいステージの「瀕死」は見たことがありません。
彼女が「足に注目して下さい。」と言われた「足」を観客によく見て貰う為に、あえてステージを明るくしたのでしょう。この舞台のために作ったという新しい衣装もよく見ることができました。彼女が神経をすり減らしたという、パドブーレとアラベスクも、よく見ることができました。それはそれは、細やかで美しいものでした。
観客は、物音一つたてずに、うっとりとJUNさんの踊りに見入っていました。
 
なのに、踊り終わってのレヴェランス、大きな拍手の中に、深々と、頭を下げておられたJUNさんには、なぜか、笑顔がありませんでした。
必死に踊っていたあまり、笑顔を見せる余裕がなかったのかもしれません。あるいは、ご自身の感動にのめりこんで、笑顔を忘れてしまわれたのかもしれません。
わずか数分の踊りなのに、踊り終えた彼女は、息を切らして、美しい胸は大きく波打ち、胸には汗がにじみ出ていました。力の限り踊り抜いた、一羽の美しい白鳥がそこに居ました。
 
ただ一つ不満??だったのは、JUNさん独特の時間が止まったようなアラベスクの「決め」のポーズが見られなかったこと。おそらく、これは、今回柔らかいトゥシューズを使ったためで、贅沢というものでしょう。
 
バレエは「一瞬の芸術」です。一瞬の輝きを求めて、毎日精進を続けるバレリーナ。人事を尽くし、それが開花し、ホッとして感動に浸る彼女の姿・・・・
「バレエって、なんて素敵なんだろう!!!」とあらためて感じた瞬間でした。
 
   2002.8.31 バレエ&舞踊フェスティバル、グリーンホール相模大野

 
この文章をHPに載せるにあたり、原稿をJUNさんに見て頂き、ご了解を頂いたのですが、そのとき、彼女は次のようなコメントを下さいました。併せて、掲載させて頂きます。
 
本当に私も舞台を何度も経験しているのですが、照明合わせのない舞台は初めてでした。だぶん、照明のスタッフの方は「瀕死」を見た事がないのではないかと思い、スタッフの方に去年の「瀕死」のビデオをお送りして、照明のプランを考えて頂いたのですが、私も明るい照明の中で踊ったのはコンクール以来です。(あはははは〜〜)
 
踊り終わって、今日はバレエを教えます。足にはシップをして。
踊って、怪我をしたのではなく滑って転んで捻挫したので、あまり痛さを感じません。踊りながら怪我をすると、踊りに対するストレスを感じますが、ごく普通に転んだ怪我は、痛さが違うんです。31日も踊らなければならないし。
 
今、すごーく踊り込んでいる自分が好きです。こんなに真面目にレッスンする私って、過去の私の中にあったかな〜〜〜。いつも、何処かで、ここ迄頑張ったからもーーーこれ以上は無理と諦めるのが過去の私だったんです。
でも、この頃自分が少し大人になったらしく、ここ迄頑張ったけど、もっと努力できるかもしれないと思える様になったんです。
 
去年の「瀕死」よりもまた、一つ成長できたのは、自分の考え方が変わったからだと思います。自分の内面的な感情、物の考え方が変わると、回りも私に対しての感じ方が変わると思うのです。
今の気持ちを忘れないで、これからも踊り続けていきたいと思うのです。
                                   JUN

この画像はJUNさんご本人の了承を得て掲載しています。無断で複写複製を禁じます。

【トップページへ戻る】