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バレエ「海賊」(Le Corsaire):ケント、スティーフィル、ABT  (2006.9.17改)

バレエ「海賊」は、退屈してしまうことが多いのですが、このABT版の映像は結構楽しめます。まず配役がとても豪華です。ジュリー・ケント、イーサン・スティーフェル、パロマ・ヘレーラ、アンヘル・コレーラそしてウラジミール・マラーホフと、スター達の競演といったところです。それに、ABTの芸術監督ケヴィン・マッケンジーやダンサー達が、ストーリーの解説をしてくれています。舞台衣装・化粧なしの素顔のダンサーの姿を見れるのと、バレエは声がなく体の動きだけの芸術なので、ダンサーの声がきけることは、とてもめずらしいこと。良い企画だと思います。
ダンサー達の踊りは皆素敵です。まずジュリー・ケント。かわいらしく、表情豊かに踊っています。映画「ダンサー」に出演していた頃は、ふっくらとしていましたが、このメドーラは、ほっそりとして、繊細可憐。まさにバレエのためのお姫様といった感じです。コンラッドのスティーフェルは、跳躍がとても綺麗で、しかも豪快です。ケントの可憐さとの対比がとてもよかった。マラーホフはノーブルな王子というイメージがありますが、ここでは、奴隷商人という新たな一面を見せてくれています。これが実によくはまっています。ラテン系のパロマ・ヘレーラとアンヘル・コレーラも、負けじと頑張っています。
第2幕のケント、スティーフィル、コレーラのパ・ド・トロワはとても盛り上がって見応えがあります。アダージョではほっそりとしたケントの美しさが映えますし、 グラン・フェッテは、軸足がずれててきてやや不安なところもありましたが、懸命に頑張って回りきった姿に感動。 文句なしのスタンディング・オベーションという感じです。花園のシーンも、ケント、ヘレーラの美しさにうっとりです。 ケントのピルエットはとてもスムーズ。回転が遅くなり、女性がパートナーの男性に無理やり腰を回されているのは見苦しいものですが、 ケントは自分で楽々回りきり、男性は手を添えているだけで、とても軽快でした。  
カーテン・コールで、花束を渡されたケントが、その中の1本を引き抜き、スティーフェルに渡し、受け取ったスティーフェルがケントの手にキス。これがとても良い感じです。ダンサー仲間同士の信頼感にあふれ、皆で力をあわせて作り上げた舞台の達成感が感じられ、とてもすがすがしい気持ちになりました。やはりアメリカのバレエ団だなと、ロシアやイギリスのバレエ団とは違った一面を見ることができました。
 
   アダン:バレエ「海賊」
   メドゥーラ:ジュリーケント、コンラッド:イーサン・スティーフェル、
   アリ:アンヘル・コレーラ、ギュリナーラ:パロマ・ヘレーラ、
   ランケデム:ウラジミール・マラーホフ
   アメリカン・バレエ・シアター 1999年

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