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ライモンダ〜パ・ド・ドゥ:川口ゆり子、今村博明  (2007.3.11)

川口ゆり子と今川博明が1984年の第1回日本バレエフェスティバルで踊ったライモンダのパ・ド・ドゥの映像があります。 川口ゆり子は最初かなり緊張していたようでした。このステージには川口ゆり子の先輩格の森下洋子、大原永子、ゆうきみほも出ていました。自分より年上とはいえ、川口ゆり子は牧阿佐美バレエ団のプリマとして彼女らに絶対に負けられないという気負いがあったのでしょう。 またパ・ド・ドゥの最初のアダージョは、アラベスクやアチチュードのバランスのポーズやリフトやフィッシュダイブといった至難な技も多く、 失敗を許されないと、プレッシャーが感じていたのでしょう。 このパドドゥはライモンダと騎士の結婚式の場面での二人の華やかな踊りなのですが、初めのうち、川口ゆり子は笑顔を見せる余裕がないほどでした。 でも、夫でもある今川博明の暖かいリードでアダージョの中盤以降には落ち着いてきたようでした。川口ゆり子は、踊る前のインタビューで「毎日の訓練の結果の軽やかさを見て欲しい」と言っていましたが、このパ・ド・ドゥは、何となく体が重そうで、いつものようなフワッと浮かぶ感じではなかった。 リフトも、ひらり飛びあがるという感じではなく、バートナーがよっこらせと持ち上げるという感じがして、「軽やかさ」は今一でした。
一番の見せ場のポアントで立ってチュードでプロムナードの回転の後、支えの手を離してアラベスクを決めるところでは、 川口ゆり子はバランスをキープするのに苦労しているようで、支えの手に力が入って、なかなか手を離せません。 意を決して手を離したとたん、後方へグラリ!!。「やばい!!」と思いましたが、必死に堪えて立て直したのは流石です。 一瞬時間が止まったよう。思わず、観客から大きな拍手が起こりました。「やった!!」という感じの笑顔を浮かべた彼女。 やっと緊張がほぐれたのでしょう、この後はまさに、ゆり子ワールド、エンジン全開という感じでした。
ただ、パートナーがかなり負担だったのではと思わせた部分もありました。このパ・ド・ドゥはキャラクターダンスの要素もあり、リフトが多いのですが、 「さあ来い」と待ち構える今村博明めがけて飛び上がった川口ゆり子を高々とキャッチしたまでは良かったが、 川口ゆり子の勢いに押されて足元がふらつき、今にも腰が碎けそうになったところもありました。でも懸命に頑張って川口ゆり子を持ち上げ続けたのは立派でした。 またフィッシュダイブも失敗なく決まったものの、ややぎこちなかった。 川口ゆり子はほっそりして小柄でですが、それでも、40キロ近くはあるでしょうから、これを頭上に高々と持ち上げるパートナーの男性は、 余程足腰がしっかりしていないと務まらないとつくづく感じました。

アダージョを踊り終えて二人とも首も背中も汗びっしょり。この二人がお互いに、「お疲れ様」「サポートありがとう」と感謝しあって顔を見合せていた姿が美しかった。 夫婦なので当然といえば当然ですが、二人で力をあわせてやりとげた仕事を互いに讃えあっている・・・・、こんな微笑ましいシーンが見るとバレエがますます好きになります。 川口ゆり子と今川博明は「バレエシャンブルウエスト」を組織し、次の時代を担う才能ある若手の育成、伝統芸術であるバレエ継承に力を注いでいます。川口ゆり子が平成18年度秋の紫綬褒章を受章したのも、この努力が認められたからでしょう。

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