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フレッシュな「ドン・キホーテ」の発表会     (2002.8.17)
     菊池バレエ研究所発表会

菊池バレエ研究所は、毎年夏に発表会を開きます。
昨年の発表会ではドリーブの「シルヴィア」という珍しい作品を上演してくれました。主役の奥山有紀子さんが、凛とした純潔の「女神」と愛を知った「女性」を上手に踊り分けて、素敵なステージでした。
今年は「ドン・キホーテ」。妹の八重子さんが主役のキトリを踊り、有紀子さんは、二幕でドルシネア姫を踊るというものでした。姉妹の競演というこの企画を知ったときから、これは見逃せないぞと、この日がくるのを楽しみにしていました。
 
ところで、バレエの発表会と公演とは、本来全く別のものです。発表会は、バレエ団や研究所が、日ごろの練習の成果を披露するものであり、公演は、プロとして観客からお金を取って作品を見せるものです。
今回の「ドンキホーテ」は発表会ですが、内容的には公演と呼んでもよいくらい優れていて、とても楽しめました。ソリストはもちろん、コールドバレエの方々も、力を合わせて良い公演にしようと一生懸命に踊っているのが肌で伝わってきました。 とはいうものの、コールドバレエは、少し揃わないところがあって気になりました。今後の課題でしょう。
 
一方、奥山さん姉妹のキトリとドルネシア姫の踊りは、この上なく素晴らしいものでした。
妹の奥山八重子さんは、昨年の「シルヴィア」ではシルヴィアの侍女役でした。今回は、主役のキトリ。それはそれは素晴らしい踊りで、彼女が登場してから、踊り終わるまで、私はひと時も目を離せませんでした。
キトリの粋な感じと気取った感じ、それにバジルをからかっているような大人っぽさに、そして少女のような可愛らしさまで、八重子さんの演技に、ただただ感心しました。第1、2幕では、軽快なステップと、吉田都さんを思わせる美しい笑顔にうっとり。第3幕グランパドドゥでは、アダージョでの高いリフトから真っ逆さまに落ちる胸のすくようなフィッシュダイブ。バッチリ決めて、満場の拍手を誘いました。そして極め付きはコーダの32回のグランフェッテ。歯を食いしばって懸命に高度な技に挑む八重子さんに感激。思わず、「頑張って!!」と声をかけたくなりました。
この八重子さんの踊り、素晴らしいを通り越して、驚きでもありました。その証拠に、観客は興奮し、その拍手の凄かったこと。
踊り終えてのレヴェランス。ホッとした八重子さんの笑顔、本当に美しかった。隣で見ていた私の妻も興奮さめやらぬようでした。
 
一方、お姉さんの有紀子さんは、2幕でドルシネア姫とジプシー役を踊りました。正反対の二つの役柄を上手に踊り分けていました。ドルシネア姫の踊りは、控えめながらも要所要所をきっちり決めて・・・・美しい踊りでした。アチチュードの美しいポーズが強く印象に残っています。今まで純クラシック一本槍だったという有紀子さん。ジプシーは新しい挑戦でしたが、情熱的で、とても良かったと思います。彼女も新たな一面を開拓しました。
 
姉妹の二人の踊りの違いは特徴的です。鮮やかなテクニックで目も覚めるような輝きを見せる妹・八重子さんに対して、気品に溢れ、しっとり叙情的な姉・有紀子さん。 八重子さんは軽快なステップとシャープな回転がお得意のよう、有紀子さんはアチチュードの「決め」のポーズに代表される、「静」の美しさが特徴です。
その意味では、キトリ・八重子さん、ドルネシア姫・有紀子さんという配役は、お二人の特徴がよく生かされていたと思います。
バレエは「一瞬の芸術」と言われています。「一瞬の輝き」を求めて苦しいレッスンに励んでこられた八重子さんと有紀子さん。「感動をありがとう!!。お疲れ様」と心から労をねぎらってあげたい気持ちです。
 
発表会ですから、一流のバレエ団の公演に比べたら、ダンサーの層も薄いし、技術面でもまだまだです。でも、一口に言って、とても爽やかで、フレッシュで、楽しく素敵なステージでした。 発表会で「ドン・キホーテ」全3幕上演は大変なこと。ダンサー、スタッフの皆さんの苦労は大変なものだったと思います。発表会でこのドン・キホーテを踊ったことは、このバレエ研究所の今の生徒たちにとって、とても良い経験であり、貴重な財産になったと思います。
 
発表会が終わって興奮冷めやらぬまま、横浜のレストランで、妻と夕食をとりました。素敵なステージを観た後だけに、料理がとてもおいしく感じられました。
横須賀の自宅から新百合ヶ丘まで2時間以上もかかりましたが、観に行った甲斐がありました。
 
また、来年も素敵な発表会を期待します。私個人としては、「眠りの森の美女」にしてほしいところですが・・・・・。
ただ、「眠り」は主役以外のソリストがたくさん必要なのですが、現在の稽古場の状況だと実現は少し難しいかもしれません。
「ローズアダージョ」と「幻想のシーン」で有紀子さん、「グランパドドゥ」で八重子さんの踊りを夢見ているのですが・・・・・・・
 
菊池バレエ研究所発表会
2002年8月11日、麻生文化センター大ホール
奥山八重子(キトリ)、桝竹真也(バジル)、
奥山有紀子(ドルシネア姫) 、菊池武久(ドン・キホーテ)

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