素敵な、白鳥の湖～黒鳥のグラン･パ･ドゥドゥの映像が、YouTubeに載っていました。しっとりとして清々しく、しかもとても爽やかで見とれてしまいました。 踊っているのは、 김단비(Kim Danbi)と이원설(Lee Wonseol)という韓国のダンサーです。 バレエ団の発表会の映像でのようで、女性は14歳となっていますが、美しい容姿と隅々まで行き届いた見事な踊りで、とても14歳とは思えません。パートナーの男性は他の教室からの客演(応援)のようです。

Kim Danbiはアダージョは、しっとりと情感をこめ、ヴァリエーションでは可愛らしく、コーダでは明かるく軽快に踊っていました。 このパ･ドゥドゥは、王子を誘惑する悪魔の娘の踊りなので、全幕の舞台ではオディールはもっと妖艶な感じが必要かもしれませんが これはバレエコンサートなので、観客を楽しませる上で、これはこれで良かったと思います。

アダージョはアチチュードやアラベスクのバランスや高く挙げられたリフトなど難しい場面が多く、 緊張してコチコチになったダンサーも見かけますが、Kim Danbiはそんな感じが全くなく、 冒頭の横に手脚を広げ、王子にリフトされて横に移動して、オディールのカリスマ性を表現する独特の踊りでも、 男性の頭上に高々と上げられたリフトでも、のびのびと踊っていました。 リフトではパートナーの男性は、渾身の力を振り絞ってKim Danbiを持ち上げていました。 腰をかがめて、女性の腰と腿を掴んでヨッコラショという感じに持ち上げ、足元が僅かにふらつきながらも、必死にふんばっていました。 アダージョ最後の、座った体勢から右手で王子につかまりアチチュードで立ち、 バットマン･デヴェロッペで右足を高く上げ、手を離してバランスという難しい技の連続も、Kim Danbiは、難なく美しくクリアしました。 この後再び王子の手につかまりアチチュードしてからのアラベスク･パンシェ。支えの腕がギクギク揺れて危うかったものの必死に堪えて、 左足を180度近くまで高く挙げて決めたのには感動。 ついで、腰を支えられピルエットを回り、最後のアチチュードをピタッと決めました。 ただ、ピルエットの回転が遅く、男性が止まりそうになる女性の腰を必死に回していたのが気になりました。

男性のヴァリエーションでは、Lee Wonseolは、そつなく纏めたという感じで、やや精彩にかけたのが気になりました。アダージョでの女性のサポートで疲れが出たのでしょうか。 続く女性のヴァリエーションでは、Kim Danbiは、終始爽やかな笑顔を絶やさず、自信に満ちて、踊るのが嬉しくてたまらないという感じ。 ピルエット、フェッテの繰返し、アティテュード･クロワゼでのプリエ、といった技を皆美しく見せました。 オデットに見せかけたシソンヌ･フェルメをバッチリと決め、続く、脚を180度近くまで上がるだけ跳ね上げるのが良いと言われるエカルテ･ドゥヴァンでのバランスを楽々とクリア。 最後は、ピケトゥールで軽快に舞台を一周、フィニッシュをピタッと止めてニッコリ。大きな拍手を受けました。

そしてコーダ。難関のグランフェッテ･アントゥールナンではKim Danbiは笑顔が消えていかにも辛そうでした。 前半は観客の手拍子に気を良くしてかダブルを入れて軽快に回っていたけれど、後半軸足が少しずれて、今にもトゥが崩れそうでハラハラ。 でも歯を食いしばって険しい表情でフェッテを続け、破綻無く最後まで回り終えたのは偉い。 最後、両足を前後に開いて踵を降ろして、無難にフィニッシュする人が多いのに、あえて両足を揃えてトゥで立って停止する難しい技に挑戦。 僅かにトゥの先が乱れて危うかったけれど、必死に堪えて無事フィニッシュしたのは偉い。 トゥが崩れて、破綻・・・ということもありベテランのダンサーでさえ恐怖を抱くという、難技グランフェッテ･アントゥールナン。 客のブラボーの叫びに「失敗しなくて良かった！！《と険しい表情がホッとした笑みに変わりました。

グラン･パ･ドゥドゥはもともと女性が主役の踊りだけに、女性は観客の視線をまともに受け、 プレッシャーのあまりコチコチになった女性は、パートナーの男性のリードに助けられて踊る・・・、というのが普通ですが、 Kim Danbiは全然そんな感じがしない。Kim Danbiは、心も健康的で度胸がすわっているのか、終始笑みを浮かべて14歳とは思えない堂々とした踊りでした。 難しいところに差し掛かると、ひときわ険しい表情を浮かべるけれど、それが却って新鮮で可愛らしい。 Kim Danbiは、回転がやや苦手のようだけれど、ポーズの美しさが際立っています。 特に、アダージョでもヴァリエーションでも、エカルテ･ドゥヴァンのバランスの美しさにうっとり。 特にアダージョでは、右足のつま先を左足の膝に付けたルティレから、右足をバットマン・デヴェロッペで上方へ伸ばしていき、 パートナーの手を離し、僅かにグラつきながらも、険しい表情でグッと堪えたエカルテ･ドゥヴァンの美しいバランス。思わず笑みが浮かびました。 色気プンプンで誘惑誘惑といった感じが本来の悪魔オディールの踊りなのだが、気品のある清々しいKim Danbiの踊りでは、オディールには異質とは言え、とても新鮮で気持ちがいい。 Kim Danbiは、小さな頭に、長い脚という均整の取れたプロポーションに、真横に張り出した長めのシックな黒いチュチュが良く似合う。 ややハイレグカット気味のツンにほのかな色気が漂い、長い脚を一層長く見せて効果的。 技量、表現力、気品、優れた容姿・・・とバレリーナの資質をことごとく備えた若き舞姫Kim Danbi。何より、真面目そうで、一生懸命に取り組んでいる姿に好感を持ちました。将来が楽しみです。