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モーツァルトの作ではない「モーツァルトの子守歌」

 
有名な「モーツァルトの子守歌」。
    眠れよい子よ 庭の牧場に
    鳥も羊も みんな眠れば
    月は窓から 銀の光を そそぐこの夜
    眠れよい子よ 眠れや
実は、モーツァルトの作ではないのです。
 
ケッフェル番号を設定したモーツァルトの研究家で有名なケッフェルも、これをモーツァルト作と考え、K.350を与え、1780年頃の作としています。
しかしその後、これがモーツァルトのものかどうかをめぐって、様々な論議が戦わされました。そして現在この曲は、ベルンハルト・フリースがフリードリヒ・ヴィルフェルム・ゴッターの詩に作曲したものというのが一般的な意見なのです。
 
モーツァルトの妻・コンスタンツェは悪妻として有名です。彼女はモーツァルトの死後再婚しますが、その再婚相手こそ、「モーツァルト伝」を書いたニッセンなのです。
この新しい夫は「モーツァルト伝」の完成を目前にして亡くなり、出版にこぎつけたのは、結局はコンスタンツェ自身の努力でした。生前は不遇だったモーツァルトが爆発的な人気を博するようになるのは、この伝記が出版されてからだそうです。
コンスタンツェは悪妻でしたが、その後彼を有名にしたのも彼女だったのです。
 
このコンスタンツェによる「モーツァルト伝」の付録として、この「子守歌」が付けられていました。そこでケッフェルもモーツァルトの作としてケッヘル番号350をつけ、以後モーツァルトの作として親しまれてきました。
しかし、100年もたってから、フリートレンダー(1852〜1934)という研究家が、ハンブルクの図書館で「ゴッダーの子守歌:フリース作」と題された本を発見し、ようやく本当の作曲家が明確になったのです。
作曲者フリースは、モーツァルトと同じ王宮で音楽家として働いていた人だそうです。
 
ともあれ、この曲が19世紀にモーツァルトの作として信じられ、親しまれて理由は、8分の6拍子で優美に流れる、親しみやすい単純な旋律の曲が、まるでモーツァルト曲といっても不思議でないほど美しい魅力に溢れているからだと思います。
 
私はこの曲の素晴らしいCDを持っています。
「トロイメライ」<世界子守歌集>というアルバムの中の一曲ですが、ソプラノの長島伸子さんが、ウィーン・フィルの団員から成るウィーン・リング・アンサンブルの伴奏で歌っています。
長島伸子さんの天使のような、透き通った清らかな歌声は、夢の世界に誘ってくれます。

「トロイメライ」<世界子守歌集>のジャケット

 
 

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