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草刈民代ファイナル公演「Esprit 〜エスプリ〜ローラン・プティの世界」  (2010.7.18)

昨年、バレリーナ草刈民代のファイナル公演が、NHK BSで放送されましたが、ふと録画を取り出して観て、感動を新たにしました。この公演は、草刈民代自身の企画・構成・プロデュースだそうで、バレエ界の巨匠ローラン・プティと親交も厚い彼女のこと、すべての演目がローラン・プティの振り付けで構成されており、バレエというよりコンテンポラリーというような、演劇的な要素の多い舞台でした。草刈民代オープニングで踊った、無視されても拒否されても恋人へ向かっていく「アルルの女」に始まり、一人芝居のチャップリン、ノートルダム・ド・パリから等等・・・。最後は全員で「チーク・トゥ・チーク」。鳴りやまぬ拍手の中、笑顔で手をふって舞台を降りる草刈民代には、毅然としたプロフェッショナルの顔と無邪気な少女の顔と 両方のぞかせて、美しかった。タマラ・ロホなど共演者がとても充実していて素晴らしく、舞台を盛り上げていました。今まであまり好きにはなれなかったプティでしたが、これは一味違いました。身体一つで、こんなにも人を感動させられるとは・・・、さすがプティだと思いました。
 
・「アルルの女」 「アルルの女」より:草刈民代/マッシモ・ムッル
古典的な馴染みのある曲から。仲睦まじい男女の踊りから、いつしか男性が女性を疎ましく思い、離れて一人で踊る。最後は窓から外へ飛び出していく。最初のせいか、草刈民代は、怪我しないようにコワゴワ慎重に踊っている感じ。トゥのバランスは心許なかった。マッシモ・ムッルは、柔らかくてしなやかな踊りで、力強さはないけれど、美しかったです。
 
・「ヴァントゥイユの小楽節」 「プルースト 失われた時を求めて」より:タマラ・ロホ/イーゴリ・コルプ
美しい男女の踊り。どちらかというと、古典的でオーソドックスな感じ。直前の草刈民代が、やや消化不良気味な踊りだったせいか、タマラ・ロホは実にのびのびとした伸びやかな踊りでした。とにかく身体を大きく使って、気持ちよかった。コルプも素晴らしかったのですが、小さなタマラ・ロホとは身長差がありすぎた感じ。
 
・「コッペリウスと人形」「コッペリア」より:ルイジ・ボニーノ
等身大の人形とのコミカルな踊りです。プティが踊っているのを見たことがありますが、その時ほどの印象はありませんでした。
 
・「タイス パ・ド・ドゥ」 「マ・パヴロヴァ」より:タマラ・ロホ/リエンツ・チャン
小柄なロホと丁度良い背丈のリエンツ・チャン。息がピッタリで二人ともとても良かった。チャンは、サポートも上手なようです。ロホはドンキのようなノリの良い踊りが得意ですが、このような優雅な踊りもなかなかいい。ピルエットは軸が曲がらずに、回転数も凄かった。
 
・「オットー・ディックス」より 〜切り裂きジャック〜:草刈民代/イーゴリ・コルプ
切り裂きジャックのエピソードをそのまま短い舞台にしてみせられたよう。かなりエロティック、そして狂気に満ちていました。草刈民代のルルはピンクのかつらが可愛らしく、熱演でした。コルプは、狂気じみたまなざしと、身のこなしといい、とても似合っているように思いました。
 
・「白鳥の湖」1幕2場より 男性のソロ/パ・ド・ドゥ:草刈民代/マッシモ・ムッル
草刈民代は、白の衣装が美しく、彼女の華やかさや気品が垣間見える踊りでした。プティの白鳥は初めてみましたが、マッシモ・ムッルはとても美しい白鳥でした。腕は美しく羽ばたき、身体もしなやかで、とても良かったと思います。
 
・「エスメラルダとカジモドのパ・ド・ドゥ」 「ノートルダム・ド・パリ」より:タマラ・ロホ/リエンツ・チャン
せむし男のカジモドが美しいジプシー・エスメラルダと踊ります。タマラ・ロホのエスメラルダが素晴らしい。赤の衣装も似合い、とてもキュートで可愛らしく、キビキビとした軽快な踊りでよかったです。グッと堪えたアラベスクのバランスも見事。 リエンツ・チャンとの息もよく合ってました。
 
・「ティティナを探して」 「小さなバレリーナ」 「ダンシング・チャップリン」より:ルイジ・ボニーノ
「ティティナを探して」は椅子を使った短いパントマイムのよう。「小さなバレリーナ」チュチュを着て、手にトゥシューズを履いて手で踊るという、かわいらしくコミカルな演出。
 
・「ジムノペディ」 「マ・パヴロヴァ」より:草刈民代/リエンツ・チャン
体操選手みたいな衣装が妙に似合ってましたが、リエンツ・チャンは、決して力任せにはならず、本当にきれいな踊りでした。
 
・「モレルとサン=ルー侯爵 パ・ド・ドゥ」 「プルースト 失われた時を求めて」より:マッシモ・ムッル/イーゴリ・コルプ
男性二人のダンス。裸のような衣装で、ややエロティックですが、二人ともとても美しかったです。コルプは、バレエのポジションが素晴らしく正確で美しいので、クラシックバレエの王子のような感じでした
 
・「チーク・トゥ・チーク」:草刈民代/ルイジ・ボニーノ
草刈民代もとてもリラックスして楽しんでいるような、軽い感じでなかなかステキな演目でした。草刈民代は、華やかで可愛らしくて、とても魅力的でした。黒の衣装も似合って、華のあるプリマバレリーナなんだなと思いました。最後に出演者全員が黒の衣装で「チーク・トゥ・チーク」の曲に合わせて踊って終了。
    草刈民代 ファイナル公演「Esprit 〜エスプリ〜ローラン・プティの世界」
    【振付】ローラン・プティ、【企画・プロデュース】草刈民代
    【出演】草刈民代、タマラ・ロホ、ルイジ・ボニーノ、マッシモ・ムッル、
    リエンツ・チャン、イーゴリ・コルプ
    【演目】ビゼー:「アルルの女」より、チャイコフスキー:「白鳥の湖」1幕2場より
    フォーレ:「プルースト〜失われた時を求めて〜」より  ほか
    (2009年4月、オーチャードホール)

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