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ローザンヌ国際バレエコンクール2006  (2006.6.09)

今年もNHKテレビで若手バレエダンサーの登竜門「第34回ローザンヌ国際バレエコンクール」の決戦を見ました。今回、決戦に残った12人のうち日本人3人を含み、半数以上が東洋人というのは驚きです。欧米やロシアバレエの地盤沈下?とも思われるほど。日本には国立のバレエ学校が無く、当然欧米に比べてプロになるチャンスが少ない。従って、こういうコンクールに出てスカラシップをもらって海外に留学すれば、海外のバレエ団に就職できる機会があるわけです。 中国や韓国からの参加者が多いのも同様の理由からでしょう。
 
さて、コンクールの審査は、今年から、クラシックバリエーション@、コンテンポラリ、クラシックバリエーションAとなりました。以前はクラシックバリエーションAのところがフリーで、クラシックを踊るかコンテンポラリを踊るかは参加者の自由でした。これがクラシックの課題曲になったことで、一部の観客からは「クラシックの同じ踊りを繰り返して観ることになり、つまらなくなった」という声もあるようです。主催者側は、フリーだったが故に「本来の意図からかけ離れた演技がおこなわれた」という問題もあり、クラシックの課題曲を踊らせることにしたと説明しています。ただしバージョンは自由、衣装も自由でより芸術性を求められるということです。私はこれは正しい選択と思います。このコンクールは将来性のあるダンサーを見つけ、一層その才能を伸ばすために有名バレエ学校への留学の機会を与えるものです。そんなコンクールですから、付け焼き刃的な技術ではなく、バレエの基礎がしっかりしていて、その上で、どれだけ芸術的な要素を盛り込めるか・・・ということを競うものだと思います。コンテンポラリしか踊れずクラシックを踊れないダンサーに、バレエの基礎が出来ているとは言えません。ですから、バレエの基礎が備わっているかを見る為にクラシックを課題曲とするのが正しいと思います。
 
2005年は日本人は一人も受賞しませんでしたが、今年は、森志乃さん(16歳)がスカラシップを受賞しました。森さんは、クラシックバリエーション@では緊張が見られましたが、コンテンポラリーバリエーションを無難にこなし、クラシックバリエーションAでは落ち着いていました。グラン・パ・クラシックを、伴奏の音楽を無視しているのでは・・・と思うくらい踊りを引き延ばして踊りましたが、逆にこの評価が高かったのではないでしょうか。振り付けの指示通りにきちんと踊るだけでなく、大いに自分の感情を込めて踊ったからでしょう。森さんは群馬県の山本禮子バレエ団の所属。このバレエ団は過去にも受賞者がたくさんいます。中村かおりさん(1986年スカラシップ賞)、渡部美咲さん(1988年エスポワール賞)、平田桃子さん(2001年エスポワール賞)。平田さんはイギリスバーミンガムロイヤルバレエ団でファーストアーティストで活躍しています。プリンシパルになるのが楽しみですね。
もう一人、注目したいのが韓国のホン・ヒャンジ(Hyang Gee ong)さん(16歳)。ほっそりとして幾分か弱そうながらとても美しいダンサー。彼女、相当緊張していたようで、それがテレビ画面からも伝わってきました。クラシックバリエーション@の出を待つとき、チュチュの肩紐を直したりそわそわと落ち着きません。でもいざステージに出たら「眠りの森の美女」のバリエーションを流れるように美しく踊りました。音感がとても良さそう。 フィニッシュでわずかにトゥの先がずれましたが、むしろご愛敬。クラシックバリエーションAの出の時は緊張がピークに達した感じ。目をつぶり、両手を合わせて、「うまく踊れますように」と神に祈っている姿、いまにもプレッシャーに押しつぶされそう。名前を呼ばれてハッと我に返って舞台に向かう彼女、「落ち着いて!!」と声をかけたくなりました。でも「コッペリアのバリエーション」を彼女はとてもわかり易く教科書どおり?に、 丁寧に、しかも感情たっぷりに踊り、大きな拍手を受けました。踊り終えて、思わずこぼれた笑顔。ホッとした表情がなんとも可愛いらしかった。彼女も見事スカラシップを受賞しました。良かったですね。
森志乃さんも、ホン・ヒャンジさんも、スカラシップをもらって海外で研修し、数年後には一層魅力的なダンサーになっていることでしょう。将来が楽しみですね。

○追) 森志乃さんは、カナダナショナルバレエスクールへの留学が決まったとのこと、おめでとうございます。 

  【スカラシップ賞】セルゲイ・ポルニン(16歳、ウクライナ)、
   グォ・チンウ(16歳、中国)、ホン・ヒャンジ(16歳、韓国) 、
   森志乃(16歳、日本) 、チャン・イジン(16歳、中国) 、
   ヴァディム・ムンタギロフ(15歳、ロシア)
  【コンテンポラリー賞】グォ・チンウ(16歳、中国)
  【観客賞】セルゲイ・ポルニン(16歳、ウクライナ)
 
  【ファイナリスト】:セリーヌ・ギッテンス(18歳、カナダ)、
   イオアナ・アヴラーム(17歳、キプロス) 、
   ダヴィド・チェンシーメフ(17歳、ポーランド) 、北村由希乃(16歳、日本) 、
   福田友美子(15歳、日本) 、チェ・ヨンギュ(15歳、韓国)    

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