バレエ・コッペリアは1870年パリ・オペラ座で初演されました。主役のスワニルダはジュゼピーナ・ボアッキ。彼女はこの時わずか15歳。まだバレエ学校在学中の女の子でした。
しかし、気の毒なことに、この数年後に夭折してしまいました。
ボアッキが亡くなるのと同じ頃、戦争の影響でオペラ座は閉鎖され、その後一応復活するものの長く低迷の時代が続きます。
このバレエは19世紀のパリ・オペラ座の最後のヒット作だったのです。
当時15歳の少女だったジュゼピーナ・ボアッキを思わせるような、Leilani Tian(レイラニ・シャン)というダンサーによるコッペリアのパドゥドゥの映像がYouTubeに載っていました。 とにかく可愛らしい。それもそのはず、コメントには14歳と書かれており、ジュゼピーナ・ボアッキとほぼ同じ歳なのです。 彼女もボアッキと同じように、MorningStar Dance Academy of Atlantaというバレエ学校の生徒のようです。 パートナーのフランツは、Junxiong Zhao(チョンシン・チャオ)。 この頃はArizonaバレエの所属でしたが、 現在はBostonバレエの第2ソリストとして踊っているようです。 Leilani Tianは、まだ経験も浅いこともあり幾分固さが感じられましたが、キュートで清楚で、チャーミングな表現力はまさにスワニルダのイメージにぴったりです。 スッキリ伸びた細く長い脚、やや長めの上品なスカート・・・、クラシック・チュチュがとてもよく似合っています。 顔の表情は豊かだし、軽快にブーレを刻んで舞い上がり、ふんわりと着地する・・・・。 なにより指先まで神経の行き届いた細やな演技でした。 タメをたっぷりとったバランス、軽快で繊細なトゥさばき・・・、といった高度な技術も破綻なくこなし、日頃の厳しい訓練の成果だと思います。 |
アダージョのアントレで一人で軽快に踊っていたLeilani Tianですが、終わりで首を大きく振ったとき、飾りのティアラが取れてしまったけれど、慌てず踊り終えたのは立派。。 髪が乱れなくて良かった。アダージョに入って、最初の見せ場、ひとり立ちのアティティュードのバランスにさしかかると、 表情が一際険しくなりました。パートナーの支えの腕から、なかなか手を離せない。 意を決して手を離し、アンオーまで腕を上げてグッと堪えたひとり立ちのバランス。 これを3回繰り返すのだから大変。3回目に僅かにバランスを崩したけれど、大過なく終え美しい笑みがこぼれました。 中盤の、男性が女性を頭上に持ち上げるリフト。女性と男性の呼吸が命です。 足を高く上げ思い切り大きく背中を反らしたLeilani Tianを、Junxiong Zhaoはしっかりホールド。バッチリ決めたのは、パートナーの面目躍如という感じで見事でした。 |
終盤の見せ場。 ポアントで立って右手を支えられたアティティュードのポーズでプロムナード。回わり終わって、上体を150度近くまで倒したアラベスクパンシェ。再びアティティュードのポーズでプロムナード。 回わり終わった直後、グラッとなったけれど揺れを必死に堪えて、もう一度、上体を150度近くまで倒したアラベスクパンシェ。歯を食いしばって、懸命に頑張った姿が美しかった。 三度、アティティュードのポーズでプロムナード。回り終わって、支えの手を離してアラベスク。やや不安定なところがあったけれど、グッと堪えたバランスが美しかった。 最後は腰を支えられて12回のピルエット。ややぎこちなかったけれど無難に終えて笑みが浮かびました。 パ・ド・ドゥのアダージョでは、女性はパートナーの男性の的確なサポートがあってこそ引き立つもの。 Junxiong Zhaoは高々とLeilani Tianを持ち上げたり、しっかりホールドしたり、体力の必要なアダージョで、的確にLeilani Tianをサポートしていました。 |
続く男性のヴァリエーションでは、Junxiong Zhaoはアダージョでの女性のサポートに疲れきっていたに違いないけれど、高いジャンプや速い回転を、ミス無くきちっと決めたのは流石。
女性のヴァリエーションでは、Leilani Tianの踊りは、とても正確で品が良かった。
難しい箇所に差し掛かると、振りをこなすのが精一杯といったような、やや険しい表情をみせたけれど、逆にこれが何とも可愛らしい。
ただ終盤の見所の難しいイタリアンフェッテを省いてしまったのは、いかにも手抜きをしたように思えて気に入らなかった。
最後、高速回転のシェネで舞台を回って、トゥで立ってグッと堪えてビシッと決めたフィニッシュは見事でした。
終わった直後、首筋や胸元には僅かに汗が滲んでいながらも、ホッとした笑みが美しかった。 最後のコーダ。Leilani Tianは、きついグランフェッテも危なげなく終え、、 Junxiong Zhaoも高いジャンプや速い回転を果敢にこなし、大きな拍手を受けていました。 このパドゥドゥそれにしても、このパドドゥは、本当に美しかった。二人の息はピッタリ。微笑ましさを感じました。 フランツ役のJunxiong Zhaoの心のこもったサポートに、Leilani Tianは伸び伸びと踊っていました。 Leilani Tianは、高く足を上げたりせず、ややテクニックに物足りなさを感じたところもあったりしたけれど、ミスなく手堅くまとめたことは賞讃すべきでしょう。 アラベスクやアティテュードのバランスは美しいし、フェッテもスピードでぶん回すというような派手な踊りをしないけれど、これがかえって微笑ましさを感じさせ、とても良い感じでした。 軽やかで、繊細で、正確で、しかも、表情がとても豊かで、若いけれど、ほんとうに素敵なダンサーだと思いました。 Morning Stars 2013: Coppelia Act 3 - Pas de Deux
2015/08/30 Pas de Deux performed by Leilani Tian (age 14) of MorningStar Dance Academy of Atlanta and Junxiong Zhao of Ballet Arizona. MSDA's production of Coppelia.→ 【トップページへ戻る】 |