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フォンティーン・ヌレエフの「ロミオとジュリエット」       (2003.1.4)

マーゴ・フォンティーンとヌレエフ主演の「ロミオとジュリエット」のビデオがあります。1966年のロンドン・コヴェントガーデン王立歌劇場での公演で、振付はケネス・マクミラン、撮影はポール・ツィンナー。
ツィンナーの作品では、カラヤン指揮、ザルツブルク音楽祭の「バラの騎士」の映画が有名ですが、フォンティーン主演で、オンディーヌ、白鳥の湖、火の鳥を含めた「ロイヤル・バレエ」もすばらしい映画ででした。この巨匠ツィンナーが「ロイヤル・バレエ」から再び6年後に手がけたのが、この「ロミオとジュリエット」です。
 
マーゴは、このころ40歳を超え、引退を囁かれていましが、ソビエトから亡命したヌレエフと出会い、再出発となったのです。彼女は、次のように語っています。「彼は23歳、私は42歳。23対42のペアなんて見苦しい。でも私が踊らなければ、誰かが彼と踊ってしまう。勇気を振り絞って踊りました。お互いにしのぎを削って、高めあいました。」(LD:マーゴ・フォンティーン・ストーリーより)
この「ロミオとジュリエット」を見ていると、このマーゴの意気込みがわかるような気がします。有名な「バルコニーの場」など、涙が出るくらいです。
 
また、ヌレエフとのパートナーシップは、さすがと思います。ヌレエフというダンサー、ソロも見事ですが、女性ダンサーのサポートが実にうまいと思います。マーゴを優しく、しかも力強く支えて、しっかりマーゴを引き立てようとしているのが良くわかります。ヌレエフと組んだこともある森下洋子さんが、「彼はものすごくストロングなパートナーだと思いました。私がもしバランスをくずしても、彼はまるで根が生えたように床に吸い付いてびくともせずに、しっかり立っているのです。だから絶対に私は心配ない。そのような面での安心感は、女性にとっては非常に有難いものです」(バレリーナの羽ばたき(ゆまにて出版))と語っていましたが、ソロでの自分を良く見せたがるあまり、アダージョでの女性のサポートを忘れてしまったような、女性への思いやりの欠けた、ある日本の有名ダンサー、とは大違いです。
また、ラストのベットで息絶えるシーンは、マーゴの迫力に鳥肌が立つようです。ダンサーというだけでなく女優です。
この映画、1966年の撮影のせいか、映像は良いとはいえませんが、それを忘れてしまうほど素晴らしいものです。
 
フォンティーンは、これまでずっと、フレデリック・アシュトンの振り付けで踊ってきましたが、この作品は、ケネス・マクミランの振り付けです。マクミランは、マーゴを「彼女の頭が首の上に座るさま、肩に首が座るさま、絶妙な身のこなし、華のある音楽性・・・。」(パコダの王子の解説より)と語っていたそうですが、超一流の振付師にここまで言わせるほど、マーゴ・フォンティーンは素晴らしい踊り手だったといえるのでしょう。
 
最近、古い映画がDVDで復刻され、見違えるような美しい映像が蘇っています。是非このフォンティーン・ヌレエフの「ロミオとジュリエット」も、DVDで再発売されることを期待します。

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