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眠りの森の美女~ローズアダージョ:影山茉以  (2019.6.20)

影山茉以さんが踊ったローズアダージョの映像が、彼女のinstagramに載っていました。 ローズアダージョは、お姫様と4人の王子のお見合いの場での踊りですが、踊りの全編ではなく4人の王子にサポートされたバランスの部分だけですが、とても美しい彼女の踊りに、見とれてしまいました。 彼女はinstagramのコメントに、『16歳のオーロラ姫になりきってるつもりです』と書いていましたが、天真爛漫でお姫様という感じで本当に可愛らしい。 さらに、『オーロラ姫はジゼルと同じくらい大好きな役なので 、全幕を踊ることができて幸せです』、『ヴァリエーションは学生の頃 沢山踊ってたけどね〜』と言っているように、全幕を踊ったのは、この時が初めてだったのでしょう。険しい表情からは、かなりの緊張が感じられましたが、懸命に踊る彼女の健気な姿に、思わず『頑張って!!』と声をかけたくなりました。

影山茉以は、ポーランド国立バレエ団所属のプリンシパルダンサーだそうです。 この人、タマラ・ロホのようなバランスの超絶技術はないような気がしますが、どこかアリーナ・コジョカルのような可憐さや、優雅というか、おっとりとして品がいいというか、控えめでやさしげな雰囲気というか・・・、 とても真面目そうで、なかなかいい感じなのです。 険しい表情でハラハラさせられるところがありながら、音を十分に使ったゆったりとした踊りはとても魅力的で、何よりこの難しい踊りに一生懸命取り組む姿に感動しました。

このローズアダージョは、クラシックバレエの中で最も至難な踊りとされていて、吉田都さんですら、『ローズアダージョの前には、逃げ出したくなる』と言っていたほどです。 ケネス・マクミランの未亡人であるデボラ・マクミランが『原版を振付けたプティパは少しばかりサディストだったのではないかと思います。 かわいそうなオーロラ!』と言ったそうです。 サディストとは、相手に身体的または精神的に苦痛を与えることによって性的興奮を得るタイプを指すので、プティパが、本当にサディストだったか知りませんが、 片足ポワントで静止したポーズを取るというローズ・アダージョのバランスは、バレリーナにポアントでの極限の平衡感覚と、背骨と腰の負担を強いることに加え、バレリーナにとっては、常にバランスの崩壊~破綻という恐怖に苛まれる、極めて至難な踊りには違いなく、『逃げ出したくなる』という吉田都の言葉も分かるような気がします。 影山茉以さんは、バランスでは、支えの腕に力が入って、バランスをとるのがきつそうでした。 でも、手を離すのが精一杯で、ほとんど横滑りという人もいる中、しっかりとアンオーまで手を挙げてみせたのは偉い。 そして最も難しいプロムナードを伴う後半のバランス。その4人目、険しい表情ながらグッと堪えて長いバランスを決めたのは流石。 どちらかと言うと、グラついてハラハラ、ドキドキ、手に汗を握るバランスでしたが、まずは破綻無くこなして、ホッとした笑顔が美しかった。 いやはや危なっかしくて、見ている方もどっと疲れが出てしまったくらいでしたが、これが却って新鮮で、バレリーナが可愛らしく感じました。 そう言えば、批評家の佐々木涼子は著書『バレエの宇宙』(文芸春秋)の中で、『なにも片足で完璧にバランスを保つ必要はないのだ。 一人では立っていられないという心許なさこそが、オーロラ姫の初々しさを強調しているのだから。 そもそもそれが、本来の振付の意図だったのではないだろうか』と言っていますが、同感です。

このバランスの部分。20年ほど前にシルヴィ・ギエムが長いバランスを見せて以来、これでもかと言うくらい長くバランスをとって技巧を誇示するダンサーを見かけます。 観客の方も、バランスの部分にさしかかると、妙に緊張し、まるでオリンピックのように肩怒らせた判定モードになってしまう。 こうなると物語りもバレエもそっちのけで、身を乗り出して観戦?するという感じになってしまい、あまりいい趣味とは言えません。 その最たるのがタマラ・ロホ。『凄いでしょう!!』と言わんばかりのビクともしない長~いバランスですが、 曲芸のようで、ビックリするだけで美しいとは思えません。 ローズアダージョはお見合いの場ですから、ロホのような長時間ビクともしない曲芸的なバランスよりも、今にも崩れそうで、思わず支えてあげたいと思わせるような心許なさを感じる方が、 見合い相手を前にして揺れ動くオーロラ姫の心の表現にふさわしい気がします。その意味で、むしろギクギク・ガタガタと膝が震えるほど緊張して、恐怖で顔面が引きつったようになりながらも、 必死にバランスを維持していた影山茉以は、理想的なローズアダージョを演じたような気がします。真剣に至難な技に立ち向かった彼女の健気な姿は、この世のものとも思えないほど美しく魅力的で、うっとりと見入ってしまいました。 『バランスの成功おめでとう!!。影山茉以さん素敵です!!。』
ただ、影山茉以のinstagramに投稿されているローズアダージョのこの映像は、バランスの部分だけだし、しかもカメラのアングルが良くなく前半の影山茉以のバランスは、サポートの王子の陰に隠れてみえません。さらに画質も良くない。もし、元の映像があるなら、ぜひ紹介して欲しい。影山茉以のオーロラ姫を全編通して見たいものです。
さらに、影山茉以のアチチュードノのバランスの稽古の映像も、instagramに載っていました。 グラグラする肢体を必死に堪え、バランスを保つこと何と一分弱。こんなに長くバランスを維持する稽古を積んだからこそ、無事に本番をこなせたのでしょう。彼女の努力の賜物でしょう。一層彼女が好きになりました。 コメントには、『集中力を高めるのにこの曲がベスト 』、『これが本番で出来ればね』 とありましたが、この踊りに懸ける彼女の意気込みを感じます。
ローズアダージョの本番の舞台
バランス、お見事!!
1分間近くのアチチュードのバランスの稽古
頑張って、堪えて!!
上の二つの画像は、影山茉以さんのinstagramに掲載されている、ローズアダージョのバランスの映像とバランスの稽古の映像から頂いたものですが、これをクリックするとinstagramにリンクします。なお、『ローズアダージョの本番の舞台』の映像は、何故かInternet Explorerではうまく表示できませんでした。Microsoft Edge、Firefox、Google Chromeでは正しく表示できました。『1分間近くのバランスの稽古』の映像は、どれでも正しく表示できました。

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