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パキータ~第1ヴァリエーション:ミコ・フォーガティ   (2014.12.1)
ミコ・フォーガティはイギリス人実業家の父親と、日本人の元プロ・ピアニストの母親を持ち、サンフランシスコに住んでいるバレリーナ。 彼女が、2013年にユース・アメリカ・グランプリ(YAGP) ニューヨーク ファイナル シニア部門6位に入賞したときのパキータ~第1ヴァリエーションの映像があります。 映画「ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ《に出演した時は12歳とは思えなかったのです()、15歳の彼女は一層大人っぽくなり、女性らしい色気が出てきたように思います。

バレエ「パキータ《の原型は、19世紀パリオペラ座の振付師ジョゼフ・マジリエが人気バレリーナ、カルロッタ・グリジの為に作ったものだそうですが、プティパがこれをお気に入りのバレリーナ、エカテリーナ・ヴァーゼムの為に改変したそうです。 主役のパ・ド・ドゥ以外にもソリストのヴァリエーションもふんだんに取り入れられ、踊り手の踊りいかんで、何倊にも楽しさが増す作品になっています。 ソリストのヴァリエーションは、ミンクス、プーニ、チェレブニン、ゲルベル作曲の四つで、 主役のバレリーナが踊るエトワールのヴァリエーションと並んで見ごたえがあります。 中でも、「ナイヤードとオンディーヌ《の中の踊りとしてミンクスが作曲した第1ヴァリエーションは、華やかで、バランス、イタリアンフェッテといった見所満載で楽しめます。

まず序盤には、脚は上がるだけ上げ、バランスはためるだけためて・・・とされている出だしのエカルテ・ドゥヴァン・デヴェロッペのバランスが見もの。 これを2回繰り返すのですが、ミコ・フォーガティは2回とも、これでもかという位高く脚を上げて180度の開脚。そこで、グッと堪えてバランス。思わず観客の溜息と拍手が沸きました。 続く、3度のバットマン・デヴェロッペでも、180度の開脚のバランス。いやはや恐れ入りました。 最後は、至難なイタリアン・フェッテ 。 グランフェッテよりゆっくりだけれど、エカルテ・ドゥヴァンのデヴェロッペと、クロワゼ・デリエールのアティテュードを交互にくり返して回転し、軸足を床に着けたり立てたりするので、 かなり辛い。 上半身がグラつき脚がもつれて下半身がメロメロ・・・破綻となることもあり「32回のグランフェッテはへいちゃら。でも16回のイタリアンフェッテは嫌い《いう人も多いけれど、ミコ・フォーガティは一糸乱れず完璧。 16回回りきらないうちから観客の拍手が沸きました。フェッテを終えたら両爪先を重ね合わせてポアントで立ってフィニッシュ。わずかにトゥの先がずれたけれどご愛嬌。 むしろ必死に堪えた表情が美しかった。何より、コンクールという緊張の中で、出だしから最後まで、笑顔を絶やさなかったのが素晴らしい。

ミコ・フォーガティは、エカルテ・ドゥヴァン・デヴェロッペやバットマン・デヴェロッペの開脚が本当に美しい。 「ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ《の時も、人の可能性を超えた開脚と評判でしたが、今も楽々と180度を越えてしまう。 わざとらしく無理やり脚を開いて、嫌らしく下品にさえ見えるダンサーが多いけれど、ミコ・フォーガティのそれは全くそんな感じがなく自然なのです。 クラシックの基本を徹底的に教え込まれ、アン・ドゥオールを完璧に身に着けて、両脚全体が付け根から足先まで完全に開ける証拠でしょう。 これからが楽しみなダンサーです。
 

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