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モナコ公国〜バチカンに次ぐ小さなリゾート国家     (2007.3.15)
バレエをこよなく愛したグレース王妃、ガルニエによるカジノやオペラハウス

「ハリウッドからモナコ王妃へ」と女優グレース・ケリーが、シンデレラ物語を地でいくような鮮やかな変身を遂げたのが1956年。当時の皇太子さまと正田美智子さんが、1959年テニスの縁で結ばれる3年前です。私はその頃小学生でしたが、二つとも大きなニュースにだったのを覚えています。私はこの夏、南フランス旅行でモナコにも立ち寄る予定なので、事前の勉強としてモナコについて調べてみました。
 
モナコ公国は日本の皇居の2倍程度のわずか2.02平方キロメートルで、バチカン市国に次ぐ小さな国ですが、国連に加盟しているれっきとした立憲君主制の独立国です。100年前までは何もない岩山でしたが、19世紀半ば、時の大公シャルル3世は、地中海を臨むモナコが高級リゾートとして発展する可能性を予測し、カジノやホテルを次々と建設しました。グランカジノもオペラハウスも、なんと、パリ・オペラ座で有名なシャルル・ガルニエの設計なのです。
現在モナコは「ヨーロッパの社交場」として名を馳せています。モンテカルロ市街地コースで行われるF1のレース「モナコグランプリ」は有名です。モナコは、三方をフランスに囲まれ、もう一方は地中海に面しています。平地の面積は極端に少なく、写真で見ると平地を山と海に囲まれたような形に見えます。モナコはEUには加盟していないのですが、EC(欧州共同体)と通貨協定を締結しユーロを公式通貨として使用していますので、観光客には便利です。
 
グレース王妃について触れておきましょう。レーニエ3世のもとに嫁いだグレースケリーは、フランス語を話せないことで、モナコ国民から良く思われていなかったようで、初め大変苦労したそうです。でも彼女は、レーニエ大公の間に一男二女をもうけ、国の広告塔となってモナコの繁栄に努力しました。グレース王妃は芸術への感心が高く、グレース王妃基金、ガーデン・クラブなどを設立、モナコの芸術や文化の発展に尽力しました。特にパリで一世を風靡したディアギレフのロシア・バレエ団の伝統を受け継いだバレエに興味を持ち、後援もし、自らバレエ学校を開設するほどの力の入れようでした。彼女が如何にバレエに感心があったかは、当時の出演した「劇場通りの天使たち」という映画でも分かります。これは1977年のアメリカとソビエトの共同制作で、アカデミー賞のドキュメンタリー部門の候補にもなったそうです。 バレエのメッカ、ペテルブルグ(当時はレニングラード)のワガノワ・バレエ学校の生徒達の過酷な訓練や日常の生活を紹介したものですが、グレース王妃は一人でナレーターを務めています。驚くべきことは、この映像がアメリカのカメラマンによって1970年代に撮影されたこと。当時はソビエト連邦、共産主義政権の時代です。西側のカメラマンが、ソ連の学校や学生の写真を撮るのはほとんど不可能な時代。まして、西側の王妃が解説を担当するなど、よく許されたものだと驚きです。許可を得るまでには、相当の努力があったに違いありません。なおこの映像はDVDでも発売されましたので手に入れて大切にしています(海外版なので日本語字幕なしですが)。グレース王妃の清楚なたたずまいや語りかけるような暖かい解説を聞いていると、モナコ王国のレーニエ大公が、女優グレース・ケリーに一目惚れをしたのも無理もないと思えてきます。また、彼女が如何にバレエに愛と憧れの念を抱いていたか分かります。
彼女はモナコもバレエ団を持ちたいと思い、バレエ団設立に力を注ぎました。その結果、1985年モナコ・モンテカルロバレエ団が生まれました。でも旗揚げ公演にグレース王妃の姿はありませんでした。彼女は、その3年前の1982年、娘のステファニーとドライブの最中、宮殿近くの道路のカーブを曲がり切れず、断崖から転落、帰らぬ人となってしまったのです。52歳でした。当時、心臓発作か、ステファニーが運転していたのか、などいろいろとささやかれましたが、依然事故原因の究明には至っていないそうです。
モナコ公立モンテカルロバレエ団は、グレース王妃の意志を継いだカロリーヌ王女により王妃の死の3年後に旗揚げされたのです。現在このバレエ団は、ジャン=クリストフ・マイヨーが率いて、シンプルで躍動感溢れるストーリー展開を創り出し、小さいながらもパリオペラ座とは違う独特のエスプリを感じさせる舞台作りには定評があり、世界で注目されるカンパニーに成長しました。グレース王妃が生きていたら、さぞ喜んだことでしょう。

「劇場通りの子供達」のDVD

夏の旅行では、モナコでゆっくりバレエを鑑賞する時間はないのですが、ガルニエ設計のオペラ・ハウスや、グレース王妃が設立したバレエ学校 「アカデミー・ドゥ・ダンス・クラシック・プリンセス・グレース」に足を伸ばせたら・・・、と思っています。

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