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森下洋子の「バレリーナの羽ばたき」   (2002.10.12)

これは、バレリーナ森下洋子さんが書いた本です。
この本は、彼女が文字通り世界に羽ばたくきっかけとなった「バルナ世界バレエ・コンクール」のリハーサルから始まります。 「本番前の舞台稽古はばらつく小雨をついて行われ、私たちペアは午前1時から始まりました。真夏とはいえ、バルナは黒海のそばですから夜は冷えます。雨のせいか、音楽はふるえているようであり、床は少々すべる感じで、舞台稽古とはいっても、出演前の逃げ出したくなるようなこわさはあいかわらずでしたし、『どうかミスをしないように』と、闇の中に光明を追うのも同じでした。」
 
体が弱くてはじめたバレエ.。広島の両親のもとを離れ、一人東京への出ての稽古。 才能と努力が実を結び、世界の森下洋子へと羽ばたいていく様子が、彼女自身の筆で臨場感豊かに描かれています。 森下洋子は「天才バレリーナ」と言われます。でも、この本を読むと、どんなに彼女が努力してこられたかわかります。
森下洋子さんの師であり母でもある、松山樹子さんの言葉が、これを良く表しています。 「森下洋子は努力の人です。もし『天才は努力なり』と言い切るならば、彼女も天才の仲間入りができるでしょう。しかも彼女は天才と人から言われると、心の中で困っているでしょう。彼女はそう言われることが好きではないのです。ただしこういうことは言えます。彼女はチャンスを逃がさないし、それを成功させるために死にものぐるいに努力できる人なのです」 この本が出版されたのは、1976年ですから、バルナ世界バレエ・コンクールの二年後です。彼女がまさに世界のプリマへの階段を上りだしたころのもの。その後の努力で、文字通り、世界の森下洋子として、世界の頂点に立ったわけです。 森下洋子さんは、昨年一年をかけて「舞踊歴50記念公演」の大イベントを行いました。 これほど長く、第一線でステージを務めているダンサーは、世界広と言えど、彼女をおいて他にいません。 これからも、怪我などのアクシデントに見舞われず、いつまでも踊って欲しいと思います。

バレリーナの羽ばたき
著者:森下洋子
ゆまにて出版:1976年

この本で、森下洋子は、次のように結んでいます。
「踊りは一朝にして上手くなるものではありません。毎日毎日の鍛錬によって一歩ずつ階段を登っていくのです。開かれた世界の扉を叩くとき、私は日本のバレリーナである誇りを失わず、日本の皆さんから教えられ守られている感謝を忘れません。」

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