【山口's HP TOPへ戻る】

森下洋子の「シンデレラ」 1990  (2014.12.26)
これは、ステージで見たものではなく、ビデオ映像です。
鈴木さんという森下洋子のファンの方が見せて下さったものです。鈴木さんは森下洋子が、ことのほかお好きのようで、森下洋子の出演されたステージや映像をたくさん見ておられます。
鈴木さんは、このシンデレラについて以下のように言っておられます。
「私はプロコフィエフの音楽が大好きですし、このシンデレラはすごく説得力があって、ただのお伽噺ではなく現代にいきる私達へのメッセ−ジも強くあり、すごく気に入っている物の一つです。」
 
このバレエは、クラシック・バレエの技法で踊られますが、「眠りの森の美女」や「白鳥の湖」といった古典とは少し違います。もちろん、ソロやパ・ド・ドゥもありますが、マイムが重要な要素となっています。従って、一見すると、「眠り・・・」等に比べてハデさがなく、とっつきにくいところがありますが、じっくり見ると自然に引き込まれていきます。
ただこれは、作品そのものよりも森下洋子の演技力によるところが大きいと思います。
鈴木さんも「わかりやすいマイムで本当になりきって演じているのですがそのけなげさと純粋さは心にぐっと来ました。」と言っておられますが、この演技力は森下洋子が長年にわたり築きあげた成果に違いありません。一朝一夕でできるものではないと思います。
 
まず、シンデレラのソロの部分、この部分でも、鈴木さんの言葉を引用させて頂きます。
「お姉さん達がおいていった香水を見つけて、その匂いから舞踏会を想像しはじめるのですが本当にここの演技が見事で、こちらまで良い香りが伝わってくるようです」
続いて、シンデレラと王子のパ・ド・ドゥ、「本当にここはお二人の究極のパ−トナ−シップと感情表現が何ともいえません。もちろんテクニックも抜群ですがそんなことも忘れさせるような不思議な力があるように思います。きっと若いときとにくらべ全然深くなってきているのが分かるかと思います」
本当に、森下洋子あっての「シンデレラ」だと思います。森下洋子さんという方は、すばらしいダンサーであると同時に名女優だと思います。
 
ただ、あえて一つだけ贅沢を言わせて頂けるなら、森下洋子=松山バレエ団というところがチョット??ということでしょうか。私は決して松山バレエ団は嫌いではなく、むしろ日本のバレエ界という厳しい環境の中にあって、このバレエ団の積極的な活動は応援したいし、清水哲太郎氏の新しい解釈への挑戦は頼もしくも思うのですが、森下洋子あっての松山バレエ団というイメージがつきまといます。
森下洋子自身は、新国立劇場のこけら落しに参加したり、海外でも踊っておられるます。でもなんとなく松山バレエ団のプリマ、森下洋子あっての松山バレエ団という気がしてしまうのです。これは私の先入観かもしれませんね。
特定のバレエ団に所属しない下村由理恵や森本由布子が、一匹オオカミで頑張っていますが、二人とも若いながらも独自のスタイルを築いていると思います。大変なことだと思うし頼もしくさえ思います。
だからどうだというわけではないのですが、森下洋子の存在があまりに大きいが故に、森下洋子が居なくなった松山バレエ団はどうなるのかなと、ちょっと気になるところです。
余計なことを言って、ごめんなさい。森下洋子と松山バレエ団のファンの方に叱られるかもしれませんね。
とはいえ、日本の生んだ世界のプリマバレリーナ森下洋子。多少年齢的な衰えが見えてしまうことは否めませんが、若いダンサーには真似できない素敵な魅力を持っておられます。いつまでもお元気で我々に夢を与えて下さることを願って止みません。
 
最後に、鈴木さん。たくさん文章を引用させて頂き、有り難うございました。この場を借りてお礼を申し上げます。今後もお力をお貸し下さい。よろしくお願い致します。

1990年:松山バレエ団公演
シンデレラ:森下洋子
王子:清水哲太郎

【山口's HP TOPへ戻る】