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長島伸子のミューズ・サロン(クラシックの楽しみY)    (2007.02.18)
    − バロック音楽を尋ねて −

ソプラノの長島伸子さんが、「気楽にクラシック」というコンセプトで開いているミニコンサート。今年で6年目にもなるそうですが、「ステージと各席が同じウェイトで作り上げるコンサート」を目指し、定員50名ほどのアットホームな雰囲気。
今回は、「バッロク音楽を尋ねて」という題で、ゲストのギターとフルートの伴奏による曲を含め、イタリアの古典歌曲とバッハ曲というプログラムでした。
いつもの通り、会場は定員50名ほどの小さなマンションの一室。いつもはピアノの伴奏なのですが、今回は、中根康美さんのギターの伴奏、上野久道さんのフルート。ギターとフルートという、異色なしかもシンプルな音色が、清らかな長島さんの声と調和して、とても良い感じでした。いつもの通り、出演者とのティータイムも設けられ、打ち解けたサロンのようで雰囲気でした。
 
第1部は、イタリアのバロック:イタリア古典歌曲より 
最初、いつものピアノと違うギターの伴奏に長島伸子さんの歌がやや不揃いのところもありましたが、数曲後には長島は調子を取り戻し、いつも通り最後まで美しく歌いつもあげました。ギターの中根康美さんも、歌の伴奏は前奏、間奏、後奏と、休みがなく、通常の演奏のより疲れたと話していました。
中根康美さんは、東京理科大学卒業後にドイツへ留学、国立ケルン音楽大学でギターを学ばれたたとか。理科系から芸術活動へと、異色のギタリスト。ギターの伴奏によるクラシックの演奏会をぜひ開きたいという長島さんの願いで共演が実現したとのことです。
第2部は、ゲストの中根康美さんの演奏:ギターの名曲を集めて
最初の曲は 「リュート為のファンタジー」。リュートは中世からバロック時代にヨーロッパで作られた楽器で、ギターやヴァイオリンのような側板がなく、琵琶のように背面が丸く湾曲している楽器です。今回はこれをギターで演奏してくれました。二曲目、三曲目はギターの名曲中の名曲です。
第3部は、ドイツのバロック:J.S.バッハの遺産
ギター以外にフルートも加わって3人で3曲のカンタータを演奏。カンタータには教会カンタータと世俗的カンタータがありますが、バッハは教会カンタータを中心に300曲余りのカンタータを作ったそうです。 コーヒー愛好家であったバッハは、ライプツィヒのカフェでコーヒーを題材にした「おしゃべりはやめて、お静かに」という風刺喜劇を自らの指揮で初演したとのこと。これが後に「コーヒーカンタータ」と呼ばれるようになったそうで、初めて聞きましたが、若い娘が「コーヒーは何て美味しいのだろう。コーヒーを一杯飲ませてくれる人の所へお嫁に行きたい」という楽しい曲でした。
上野久道さんは、国立音楽大学を卒業後、フルートを宮本明恭、新井力夫氏、スイスにて故マルセル・モイーズ氏に師事され、長島伸子さんとは二度目の共演とか。
慎ましやかで控えめな長島伸子さん、サロンコンサートでは、地味な感じの雰囲気が多かったのですが、今回は二人の共演者を迎えて、黒っぽい地味な衣装ながらラメの入ったショールをまとって、何時になく華やいで、明るく嬉しそうに見えました。
 
それにしても、長島伸子さんの歌声もトークも、なんて心を和ませてくれることでしょう。丁寧な、心のこもった歌声に加え、司会進行や場の作り方の上手なこと。そして誰もがファンになってしまうような人なつっこさと、慎ましやかな人柄。コンサートが終わって帰る私たち一人一人に握手をし、「遠いところをありがとう」と見送ってくれた気の配り方と優しさ。 長島さんが「歌のお姉さん」を志した原点は、子供の頃、虜になっていた、テレビ番組「おとぎの部屋」のシャーリー・テンプルとのこと。 「出演者とお客様が同じウェイトで作り上げていくようなサロン・コンサートを目指したい」と言うとおりの、とても楽しい魅力的なコンサートでした。次回からは会場が変わるそうですが、この夢を与えてくれる自主企画、いつまでも続けて欲しいものです。
長島伸子さんのホームページ
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