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ドンキホーテ~パドドゥ:小泉奈々、Andras Ronai  (2015.9.17)

とても素敵なドン・キホーテ~パ・ド・ドゥを見ました。You tubeに投稿されていた映像で、日本人ダンサーの小泉奈々 とハンガリーのオーランドバレエAndras Ronaiによるものです。 この映像はNureyev International Ballet Competition in 2013のもののようです。

何といっても素晴らしいかったのは、Andras Ronaiのサポート。 バレリーナとパートナーの男性によって踊られるパ・ド・ドゥのアダージョ。パートナーに支えられて、女性は自分の持てる最高の美しさを披露します。 アダージョでは、女性の華やかさの陰に隠れてしまいがちの男性。 でも男性がいなくては女性は何も出来ない。女性を生かすも殺すも男性です。 吉田都がパ・ド・ドゥのパートナーについて、「合わない人のタイプは共通していて、自分のことしか考えられない人です。 たいていは、女性をサポートした後に男性のソロが入ってきますから、自分のことを考えてなるべく体力を消耗しないように・・・・・という人は、その集中力の欠如が体から伝わってきます。 例えばトゥシューズで立っていて、それを支えてもらうとき、何ミリか重心がずれるだけで、ふくらはぎ、腿の負担が変わってきてしまうものなのです。 パ・ド・ドゥは、同じ演目でも相手が変われば表現が劇的に変わります。その変化の楽しさを共有できるパートナーが理想です。《(文藝春秋,MIYAKO) と言っていました。「自分のことしか考えられない男性《つまり「女性への思いやりのない男性《はパートナーには相応しくないということでしょう。 その点、Andras Ronaiは小泉奈々にとって理想的なパートナーという感じがします。 2人の息はとてもあっていて、Andras Ronaiは幾分緊張ぎみの小泉奈々に「そんなに緊張しなくてもいいよ。何が起こっても僕が助けてあげるから《と言って落ち着かせてようとしている感じが伺えました。 小泉奈々は安心して小泉奈々のサポートに身をゆだね、緊張ぎみながらものびのびと踊れたようでした。女性をうまく踊らせるサポートの男性、ここにダンスール・ノーブルとしての存在意義があるのでしょう。 Andras Ronaiが、パートナーの小泉奈々の動きを良く見て、しっかりサポートしていたのが微笑ましい限りでした。 緊張ぎみの小泉奈々は、時折険しい表情をみせましたが、むしろこの真剣な表情が何とも魅力的。 Andras Ronaiの暖かいサポートによって、破綻なく踊り抜いたのは立派でした。

  アダージョ序盤のリフト。飛び上がって180度近く開脚した小泉奈々の腰を、Andras Ronaiは片手で「えいや!《と持ち上げて頭上に高々とキープ。 その滞空時間の長いこと。Andras Ronaiの力強さと小泉奈々の美しいポーズに思わず観客から拍手が沸きました。 アダージョ終盤の二度のアチチュードのバランス、小泉奈々の表情が一際険しくなりました。 一度目は、あまり持ちこたえられず、パートナーの手を離した後すぐに脚を降ろしてしまったのは残念だったけれど、 二度目は、グッと堪えて必死に持ちこたえ、ハッと息を呑む美しさでした。 最後のリフトからのフィシュダイブ。落下したとき、小泉奈々の体がグラッとしたけれど、Andras Ronaiがしっかりと小泉奈々の体を膝の上に乗せてホールドし、 小泉奈々も曲げた脚をしっかりとAndras Ronaiの体に絡めて落下を必死に堪え、二人の息がピッタリで流石でした。思わず観客は拍手喝采でした。 小泉奈々は、手の指先と爪先まで神経の行き届き、大きく弓なりになった体のラインが美しかった。
 
コーダのグラン・フェッテ・アントゥールナン。小泉奈々は相当辛そうでした。前半は果敢にダブル回転に挑戦していたけれど、 体が左右に大きく揺れ、次第に爪先もズレてきて、ハラハラしました。それでも、歯を食いしばって頑張った姿に感動。 最後の回転を終えて、両足の爪先で立ってフィニッシュ。両足を前後に開いて踵を降ろして、楽にフィニッシュする人が多いのに、あえて両足を揃えてトゥで立って停止する難しい技に挑戦したのは偉い。 僅かに爪先がズレそうだったけれど、必死に堪えてズレを止めたのは流石。苦しい稽古の賜物でしょう。 回り終えて、「うまく出来て良かった!!《と、思わずこぼれた微笑みが魅力的。ベテランのダンサーでも失敗しがちなグラン・フェッテ・アントゥールナン、 無事に終えて、さぞホッとしたのでしょう。 終盤のシェネ、最後の力を振り絞って、高速回転で少しも乱れずに、軽快に移動。大いに盛り上がりました。 最後のリフトを終えて、ラストは、Andras Ronaiに腰を支えてもらってのピルエット。パートナーの助けに頼らず、自分の力で無理なく滑らかに回った回転が美しい。 以前ピルエットでサポートの男性にウエストを支えられて回っていた女性の回転が止まってしまい、男性が手で彼女の腰を無理やり回しているのを見たことがあるけれど、 見苦しいことこの上なかった。小泉奈々は自力で最後までスムーズに回りきっていました。美しいピルエットは彼女の最大の武器でしょう。 バッチリ決めたフィニッシュでは、胸が大きく波打って、ハアハアという吐息が聞こえるよう。 力を振り絞って踊りきった小泉奈々、終始柔和な笑顔を崩さなかったのは偉いし、殆ど汗をかかなかったのも立派でした。

このコンペティションのグランプリの受賞者は無く、Andras Ronaiは一等賞を受賞しました。 このパ・ド・ドゥの見事な踊りを見ると、一等をとれたのは当然のように思います。 一方、小泉奈々はファイナリストに残ったものの受賞はできなかったけれど、緊張の中で一生懸命に踊る姿は本当に可愛らしく、じっと見入ってしまいました。 のりが良く、どちらかというとアクロバティチック的な要素の強いドン・キホーテ~パ・ド・ドゥですが、 小泉奈々の踊りは、しっとりとしながら、しかも決めるところはしっかり決めて、とても爽やかで美しい。 小泉奈々はとても可愛らしく、クラシック・チュチュが良く似合う。 加えて、繊細で上品な身のこなし、誠実さがにじみ出ているような端正な踊り。 小泉奈々は三好恵美バレエスタジオの後、東京高等バレエ学校で学び、ブタペストバレエスクール留学しているとのこと。 まだ若いのに、とても魅力的なバレリーナ。今後の成長が楽しみです。

Nana Koizumi & András Rónai: Don Quijoze - pas deux (Adagio)
VI. Rudolf Nureyev Nemzetközi Balettverseny Díjkiosztó Gála -- 2. rész /2. (Variation&Coda)
 

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