私は、バレエの「発表会」を観るのが好きです。「発表会」は、バレエ団が行う公演とは違い、バレエ教室が、日頃の成果を家族や友人に観てもらうものです。従ってダンサーの技術も、演出も、「公演」と比べて、遙かに及ばないのが普通です。でも時として、「発表会」の中にキラッとした輝きを発見する場合があります。
今回の山路留美子バレエ研究所の2002年発表会でもそれを感じました。
プログラムは、3部に分かれていて、第1部は、子供達のおさらい会、第2部はパ・ド・ドう中心のディベルティメント集、第3部が「眠りの森の美女」からハイライトです。第3部が特に充実していたので、第3部を中心に感想を述べさせていただきます。
今回の「眠りの森の美女」ハイライトは、プロローグ、第1幕そして第3幕のさわりからなっています。ハイライトというと第3幕のみのものが多いのですが、プロローグやローズアダージョが含まれているのがうれしい。一通り、物語に沿って鑑賞した気分になれます。
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まずプロローグでは、6人の精のの踊り(山田歌子、手塚聡美、高橋奈々、石川水里、佐々木宏子、大矢野柚子)。この場面は、短いながら、それぞれの精の性格を表現している美しいソロです。6人のダンサー、皆、とても上手に特徴を表現していたように思いました。とくに、リラの精を踊った、山田歌子。
リラの精にふさわしい優しさにあふれた美しい踊りだったと思います。
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そして、ローズアダージョ。この難しい踊りを発表会に取り入れ、しかも若いダンサーが見事に踊り抜いたのは素晴らしいことだと思います。
オーロラ姫を踊った、中村妃織さん。おそらくローズアダージョは初めてなのでしょう。出だしは、笑顔を見せる余裕がないほど、緊張していたようでした。
なにしろ、ローズアダージョには、アチチュードで立ったオーロラ姫が四人の王子の手を離してバランスをとるという、ベテランのバレリーナでも緊張するという難所です。
王子の手を離す場面の険しい表情。握りしめた支えの王子の手をなかなか離せない。思わず「頑張って!!」と声をかけたくなりました。
でも、思い切ってアンオーまで腕を挙げ、歯を食いしばって必死にバランスととる姿は、実にさわやかですばらしかった。さらに、手を下ろして次の王子の手を握る時、にっこり微笑んだ姿が何とも可愛らしかった。
ただ、後半のプロムナードに続くバランスではほとんど手を上げず横滑りのようだったのは残念。
前半と同様、頑張ってアンオーまで腕を挙げて欲しかった。でも無理に離れ業を見せて、破綻するよりはよかったかもしれません。
また、一人目のプロムナードが終わって王子の手を離し二人目の王子の手を握った途端、ぐらっと傾き、思わずドキッとしたけれど、懸命に堪えて事なきを得たのは流石。
二人目と三人目のバランスは無事こなして、にっこり微笑んだ表情が可愛らしいこと。
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可愛らしい乙女が歯を食いしばって、懸命に踊る姿は本当に清々しく、「危ない。堪えて、持ち堪えて!!」と思ったほど手に汗握る危うさゆえに、新鮮な魅力に溢れていました。
踊り終えて「無事終わってよかった!!」とほっとした表情。余程緊張したのか胸や背中には大粒の汗。こんな経験をしてさぞ自信が付いたことでしょう。今後の活躍が楽しみです。お疲れ様!!。
4人の王子は、呉竹伸之、佐藤理基、江本拓、荒井英之。コチコチの中村妃織を優しく支えて、上手なサポートでした。
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踊り終わってレヴェランス。中村妃織さん、サポートの王子たちに「素敵なサポート有難う!!」と感謝の眼差し。彼女の優しい人柄を感じました。 |
第三幕前半のパ・ド・トロワ(尾形友理、谷合春菜、荒井英之)では、金の精の尾形友理さんの軽快さが印象に残っています。
青い鳥のパ・ド・ドゥ(兼子彩、佐藤理基)。フロリナ姫を踊った兼子彩。初々しく、すてきな踊りでした。アチチュードの決めのポーズの美しさには思わず息をのみました。兼子彩さんは、2002年度のNBAバレエコンクール審査員特別賞を受賞されたとか。この踊りを見るとなるほどと思います。今後の成長が楽しみです。
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オーロラ姫とデジレ王子のパ・ド・ドゥ(松澤直美、江本拓)。オーロラ姫の松澤直美さん。流れるような踊りに、しばしうっとり。素敵な踊りでした。
アダージョ・フィニッシュの難しいフィッシュ・ダイブもバッチリ決めました。とりわけ、美しい笑顔が魅力的でした。踊り終えた時は汗びっしょり、さぞ緊張したのでしょう。
でも、緊張の中でも柔和な表情を保ち続けたのは立派なことだと思います。
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もっとも、松澤直美の素晴らしい踊りは、パートナーの江本拓のサポートのによるところも大きいと思います。
バレエのパートナーはこうでなくちゃと思うほど、二人の息はぴったりでした。江本拓は松澤直美に不安を与えないようにとしっかり支えていましたし、松澤直美も江本拓を信頼しきって、伸び伸びと踊っていたのです。
男性のがっちりとした支えがあればこそ、女性は不安定で難しいポーズを、安心して演じられるわけで、サポーターとしての男性の重要さを改めて感じました。
松澤直美、江本拓、若きバレエのプリンセスとプリンスとして一層の活躍を期待したいと思います。
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発表会ですから、一流のバレエ団の公演に比べたら、ダンサーの層も薄いし、技術面でもまだまだです。特に、コールドバレエの不揃いなのは、発表会とは言えいただけない。
でも、一口に言って、とても爽やかで、フレッシュで、素晴らしいステージでした。しばしの楽しい夢の一時を過ごしました。
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