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ウィーンフィル・ニューイヤーコンサート2013       (2013.1.3)

今年もNHKテレビで、ウィーン楽友協会大ホールから生中継された、ウィーンフィル・ニューイヤーコンサートを楽しみました。 今回の指揮者はオーストリア人のフランツ・ウェルザー・メスト。 彼は、2010年秋から小澤征爾に替わってウィーン国立歌劇場の音楽監督になった人です。 2年前にもニューイヤーコンサートを指揮をしていますが、フランツ・ヴェルザー・メストは、クレメンス・クラウス、ヨーゼフ・クリップス、ヴィリー・ボスコフスキー、ヘルベルト・フォン・カラヤン、ニコラウス・アーノンクールに次いで、 1月1日にウィーン・フィルの指揮台に立つ6人目のオーストリアの指揮者とのことですから、ウィンナワルツやポルカはお手の物といったところでしょう。

ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートは、1941年にクレメンス・クラウスによって始められ、1955年からウィーン・フィルのコンサートマスターだったウィリー・ボスコフスキーの指揮になりました。 ヴァイオリンを弾きながらの洒落た粋な感覚の優雅な演奏でしたが、健康上の理由から1979年を最後にニューイヤーコンサートの指揮を降り、 80年台になると、マゼール、カラヤン、アバド、クライバー、メータ、ムーティ、アーノンクール、小澤征爾、プレートル、バレンボイムといった巨匠と言われる指揮者の個性的な演奏が多くなり、 優雅なウィーンの味わいが薄れて、特にワルツについては、リズムが重かったり、妙に表情をつけたりして、これがワルツ?と首をかしげたくなるような、 昔ながらのウィンナ・ワルツの味わいとは違うものになってしまった演奏もありました。 今回の生粋のオーストリア人あるウェルザー・メストは、大げさな個性的演奏は目指さず、ウィーンフィルの団員には、自発性に任せて、演奏させているようです。 前回は、未だ50歳そこそこの若さで緊張していたせいか、演奏は真面目で規律正しく、ニューイヤーコンサートのお祭りを楽しんでいるという感じには今一歩という感じもありましたが、 今回は、クールな笑顔を終始保ちながら、余裕のある指揮ぶりでした。ウェルダーメストとウィーンフィルのコミュニケーションが良くとれていて、お互いの意図を分かり合い、尊重し合っているのを、ひしひしと感じました。
 
今年のニューイヤーコンサートは、初登場の曲がとても多い。特にシュトラウス家の次男ヨーゼフの曲が、これほどニューイヤーコンサートで取り上げられたことは、私の知る限り過去にありません。 また、2013年はワーグナーとヴェルディというオペラ作曲家の 生誕200年に当たるため、この2人の曲も演奏されました。 第1部と第2部のインターミッションには、美しい風景を背景に新婚の二人を追っていくなど、気の利いた演出でした。
 
ウィーン国立バレエ団のバレエは「ギャロップ・ポルカ」と「レモンの花咲くところ」。 「ギャロップ・ポルカ」は、取引所の伝令の動きを模したもので アフリカ風のカラフルな衣裳がまばゆい。 「レモンの花咲くところ」は、アシュレイ・ペイジ振り付けで、白い衣裳の男女五組の踊りが美しかった。 中心で踊っていた男性ダンサーは日本人だとか。
 
なお、今回のテレビ中継は、ゲストに作曲家の池辺 晋一郎と女優の夏木マリ。それに中條誠子アナウンサーで進行。 昨年は、場違いと思えるようなゲストばかりを四人も揃えて、それぞれがろくでもない賛辞を繰り返していたのにはうんざりでしたが、 今年のゲストは二人で、まだ良しとしましょう。ただ2010年の時は、女性アナウンサーが第1部と第2部の冒頭に簡単に説明しただけで、ウィーンからの映像をストレートに流していて、とても良かった。 次回以降は、このように余計なゲストなど呼ばずに、あっさりとした解説で進行して欲しいと思います。 ともあれ、地球の裏側で行われているニューイヤーコンサートを、同じ時間に日本に居ながらにして、ハイビジョンの高画質で観ることができるなんて、本当に素晴らしいことだと思います。
 
ちなみに、2014年の指揮者はダニエル・バレンボイムだそうです。バレンボイムは、2009年にニューイヤーコンサートを指揮していますが、全体的に固く、私好みではありませんでした。 ウィンナワルツのやわらかさや遊びの感覚は欠けていたようで、あまり上手いとは思わなかった。 意外な指揮者が再選されたという感じで、正直な所残念に思いますが、逆に、今度こそ、よい演奏をしてくれるだろうという楽しみなところもあります。


  【第1部】
  1.ヨーゼフ・シュトラウス: ポルカ「スーブレット」★
  2.ヨハン・シュトラウス2世: キス・ワルツ★
 3.ヨーゼフ・シュトラウス: 劇場カドリーユ★
  4.ヨハン・シュトラウス2世: ワルツ「山の上から」★
  5.フランツ・フォン・ズッペ: 「軽騎兵」序曲
  【第2部】
  6.ヨーゼフ・シュトラウス: ワルツ「天体の音楽」
  7.ヨーゼフ・シュトラウス: ポルカ「紡ぎ女」★
  8.リヒャルト・ワーグナー: 「ローエングリン」第3幕前奏曲★
  9.ヨーゼフ・ヘルメスベルガー2世: ポルカ・マズルカ「二人きりで」★
10.ヨーゼフ・シュトラウス: ワルツ「金星の軌道」★
11.ヨーゼフ・シュトラウス: ギャロップ・ポルカ★●
12.ヨーゼフ・ランナー: シュタイル風舞曲
13.ヨハン・シュトラウス2世: メロディーエン・カドリーユ★
14.ジュゼッペ・ヴェルディ: 「ドン・カルロ」第3幕バレエ曲★
15.ヨハン・シュトラウス2世: レモンの花咲くところ●
16.ヨハン・シュトラウス1世: エルンストの思い出 またはベネチアの謝肉祭
17.ヨーゼフ・シュトラウス: ポルカ「おしゃべりなかわいい口」
18.ヨハン・シュトラウス2世: 美しき青きドナウ
19.ヨハン・シュトラウス1世: ラデツキー行進曲
【演奏】
フランツ・ヴェルザー・メスト(指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
2013年1月1日、ウィーン楽友協会ホール(ムジークフェラインザール)でのライヴ

★ニューイヤー・コンサート初登場の作品、
●バレエが踊られた曲
歴代ニュー・イヤー・コンサートの指揮者 ( )は回数
1941 クレメンス・クラウス(1)1942 クレメンス・クラウス(2)1943 クレメンス・クラウス(3)1944 クレメンス・クラウス(4)1945 中止
1946 ヨーゼフ・クリップス(1)1947 ヨーゼフ・クリップス(2)1948 クレメンス・クラウス(5)1949 クレメンス・クラウス(6)1950 クレメンス・クラウス(7)
1951 クレメンス・クラウス(8)1952 クレメンス・クラウス(9)1953 クレメンス・クラウス(10)1954 クレメンス・クラウス(11)1955 ボスコフスキー(1)
1956 ウィリー・ボスコフスキー(2)1957 ウィリー・ボスコフスキー(3)1958 ウィリー・ボスコフスキー(4)1959 ウィリー・ボスコフスキー(5)1960 ウィリー・ボスコフスキー(6)
1961 ウィリー・ボスコフスキー(7)1962 ウィリー・ボスコフスキー(8)1963 ウィリー・ボスコフスキー(9)1964 ウィリー・ボスコフスキー(10)1965 ウィリー・ボスコフスキー(11)
1966 ウィリー・ボスコフスキー(12)1967 ウィリー・ボスコフスキー(13)1968 ウィリー・ボスコフスキー(14)1969 ウィリー・ボスコフスキー(15)1970 ウィリー・ボスコフスキー(16)
1971 ウィリー・ボスコフスキー(17)1972 ウィリー・ボスコフスキー(18)1973 ウィリー・ボスコフスキー(19)1974 ウィリー・ボスコフスキー(20)1975 ウィリー・ボスコフスキー(21)
1976 ウィリー・ボスコフスキー(22)1977 ウィリー・ボスコフスキー(23)1978 ウィリー・ボスコフスキー(24)1979 ウィリー・ボスコフスキー(25)1980 ロリン・マゼール(1)
1981 ロリン・マゼール(2)1982 ロリン・マゼール(3)1983 ロリン・マゼール(4)1984 ロリン・マゼール(5)1985 ロリン・マゼール(6)
1986 ロリン・マゼール(7)1987 ヘルベルト・フォン・カラヤン(1)1988 クラウディオ・アバド(1)1989 カルロス・クライバー(1)1990 ズービン・メータ(1)
1991 クラウディオ・アバド(2)1992 カルロス・クライバー(2)1993 リッカルド・ムーティ(1)1994 ロリン・マゼール(8)1995 ズービン・メータ(2)
1996 ロリン・マゼール(9)1997 リッカルド・ムーティ(2)1998 ズービン・メータ(3)1999 ロリン・マゼール(10)2000 リッカルド・ムーティ(3)
2001 ニコラウス・アーノンクール(1)2002 小澤征爾(1)2003 ニコラウス・アーノンクール(2)2004 リッカルド・ムーティ(4)2005 ロリン・マゼール(11)
2006 マリス・ヤンソンス(1)2007 ズービン・メータ(4)2008 ジョルジュ・プレートル(1)2009 ダニエル・バレンボイム(1)2010 ジョルジュ・プレートル(2)
2011 ウェルザー・メスト(1)2012 マリス・ヤンソンス (2)2013 ウェルザー・メスト(2)

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