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メール・パークとヌレエフの「くるみ割り人形」     (2002.3.10)

CS放送シアターテレビジョンが、先日の牧阿佐美バレエ団の「くるみ割り人形」に続き、ロイヤル・バレエの「くるみ割り人形」を放送してくれました。
この映像は、ヌレエフが当時のソ連から亡命してロイヤルバレエで踊り始めた頃のヌレエフ全盛時代の1968年に制作されたもので、フォンティーンのパートナーとして有名なヌレエフが、メールパークと組んだ貴重な映像です。 
ヌレエフ版の『くるみ割り人形』は、大人のバレリーナがクララを踊り、終幕でくるみ割り人形が変身した王子とグラン・パ・ド・ドゥを踊るというロシアで主流の振付もとに改訂し、ドロッセルマイヤーが王子になって夢の世界のクララを導くという物語になっています。
この映像が収録されたのは、1968年ということですが、映像の美しさに驚かされます。また、さすが「ロイヤルのくるみ」で、踊り手が充実しているのみならず、ストーリーの展開が実に上手で、往々にして退屈になりがちな第一幕もとても楽しめ、約1時間半を見入ってしまいました。
 
まずは踊りのみならずプロデュースも行っているヌレエフ。ヌレエフは、高いジャンプなど、ソロの踊りも素晴らしいのですが、アダージョでの女性のサポートのうまさは抜群です。メール・パークのテクニックも華麗ですが、ヌレエフはそれを見事にサポートして彼女の美しさを一層引き立てていました。まさに、うっとりするような素晴しいパ・ド・ドゥです。
かつて、森下洋子さんがヌレエフと組んだとき、「彼はとてもストロングなダンサー。私がバランスを崩しても大樹のようにしっかりと立っている。だから私は安心。この安心感は女性にはありがたいものです」(バレリーナの羽ばたき(ゆまにて出版))と言っていましたが、このメール・パークとのアダージョを観ていると、この言葉がなるほどと思われてきます。ダンスール・ノーブルとは、このような男性を言うのでしょう。
 
ところで、男性の中には、一人で踊るソロは派手で巧くても、女性のサポートが下手なダンサーも居ます。日本の人気スターのK氏などは、アダージョで女性のサポートを忘れて、危うく女性を倒れさせかけたり、リフトから降ろす時に、手を滑らせて女性を落とし、危うく女性に大怪我をさせかけたこともありました。パートナーの女性への思いやりがない証拠です。
アダージョは所詮女性の踊りです。女性の美しさが最も輝く場面です。男性は引き立て役なのです。それなのにアダージョでパートナーの女性を引き立てようとしないで、自分だけ目立とうとする男性は幻滅ですね。とてもダンスール・ノーブルとは言えませんよね。
 
話がヌレエフばかりになってしまいましたが、メールパークについて一言。
私は、一度だけメールパークの生の舞台を観たことがあります。1975年頃のロイヤル・バレエの来日公演です。彼女は、お茶目なお転婆娘役で定評があったのですが、この公演では、珍しく?「眠りの森の美女」のオーロラ姫を踊りました。
私もお茶目な娘というイメージがあり、メール・パークがどんなオーロラを踊るか興味がありました。 でも予想に反して、メール・パークの踊りはとても丁寧で、お転婆娘のようではなく、美しく優雅なお姫様でした。 お転婆娘とお姫様をうまく踊り分けることができるパーク、さすがにロイヤルのプリンシパルだけのことはあります。
今回、「金平糖のパドドゥ」を観て、この時のオーロラ姫を思い出しました。

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