【トップページへ戻る】

海賊〜パ・ド・ドゥ:尾本安代、石井潤      (2007.2.26)
 第1回日本バレエフェスティバル(1984)

尾本安代さんと石井潤さんが、海賊のパ・ド・ドゥを踊った映像があります。1984年の第1回日本バレエフェスティバルのものです。尾本安代さんは谷桃子バレエ団、石井潤さんはフリーのダンサーということで、初めてパートナーを組んだそうですが、パートナーシップもバッチリでなかなか魅力的なパ・ド・ドゥでした。
尾本安代さんは、日本人ダンサーとしては大柄で美しいプロポーションの持ち主で、ドン・キホーテのキトリのようなパワフルな役が得意と聞いていましたが、この海賊でもイタリアンフェッテやグランフェッテのような回転技で力強さを見せてくれました。石井潤さんも背が高いダンサーで、尾本さんと背の釣り合いもよくパ・ド・ドゥのパートナーとして適役に感じました。
 
この海賊のパ・ド・ドゥは、本来は奴隷のメローラ、海賊の首領コンラッド、その手下アリが加わったパ・ド・トロワですが、ガラ・コンサートでは、コンラッド抜きのメローラとアリのパドドゥとして踊られることが多いようです。女性のエキゾチックな情感に加え、とくに男性には高度なテクニックを要求されます。
最初のアダージョ、女性も大変ですが、サポートの男性は体力的にもっと大変。ポアントで立った女性を倒れないように支えたり、頭上高くリフトしたり・・・。アダージョに続く男性のバリエーションの体力を温存するためにアダージョで手を抜く不届きな男性もいるようですが、石井さんは、長身の尾本安代さんを、力強くしっかりと支えて的確にサポートしていました。尾本安代さんも、石井さんを信頼して身を任せているようで、終始笑顔を絶やさず、微笑ましいアダージョでした。
続くバリエーション。石井潤さんは、アダージョでのサポートの疲れも見せず、ジャンプは全く乱れずバッチリと決めました。また、尾本安代さんも、ゆったりとして優雅な踊りがとても美しく、終盤には難しいイタリアンフェッテを加えて見せ場を作ったのは立派。フェッテの最初、ポアントで立って、反対の足を振り上げたところで一瞬回転を停止、ハッとするバランスの妙技を見せ、観客からも拍手を誘いました。
最後のコーダでも、石井潤さんは、跳躍も高く、回転も衰えず、見事に踊り抜きました。スタミナはたいしたものです。尾本安代さんは、グランフェッテに果敢に挑戦し、やや不安定ながらも懸命に回る姿に観客は大いにわいて拍手を始めました。ところが24回回って、軸足がわずかにずれたとたん、回転を辞めてしまい、そのままゆっくり歩いて下がってしまいました。まだフェッテの音楽は続いているのに・・・・。観客はがっかりして、拍手も途切れてしまいました。かって、あるダンサーがグランフェッテの途中で、苦痛の表情とともに軸足がガクンと崩れて、今にも倒れそうになったものの、痛みを堪えて、最後まで回りきり、大きな拍手を受けたのを見たことがありましたし、腕の間接が外れても滑り続けた安藤美姫ちゃんのように、アクシデントでも、懸命に頑張る姿こそ、感動を呼ぶものです。たとえ失敗しても前向きな姿勢で、32回まで挑戦して欲しかった。
コーダのフェッテにわずかに不満は残ったものの、二人のピッタリとあった微笑ましいパートナーシップを見ることが出来ました。楽しいパドドゥでした。

【トップページへ戻る】