一本のビデオテープがあります。マーゴ・フォンティーン演ずる「水の精オンディーヌ」です。バレエですから、踊ると言いたいところですが、あえて演ずると言ったのは、それだけフォンティーンの演技力が突出しているからです。
このバレエは、ラシーヌの戯曲「敵同士の兄弟」をもとにフレデリック・アシュトンがフォンティーンの為に振付た21番目のバレエで、1958年にロンドンのロイヤル・オペラハウスで初演されました。作曲はヘンツェ。共演はマイケル・サムス。
これをフィルムに収めたのは、ポール・ツィンナーです。ポール・ツィンナーは、カラヤン指揮ウィーンフィルハーモニー管弦楽団によるリヒャルト・シュトラウスの「バラの騎士」の映画が有名です。
シュヴァルツコップ、ユリナッチ、ローテンベルガーという当時最高の歌手を揃え、贅を極めた演奏でした。このビデオは、かなり古いものですが、私の大切な宝物の一つです。
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ポール・ツィンナーは、この「オンディーヌ」の他に、「白鳥の湖第2幕」と「火の鳥」を含め、「ロイヤルバレエ」というバレエ映画として発表しました。1959年のことです。でも、私は、「オンディーヌ」が最高だと思います。
この映画「ロイヤルバレエ」は、海外では評判だったそうですが、残念ながら日本では、あまり話題にならなかったようです。
当時の日本では、バレエは一部の愛好家のものだったので仕方がないかもしれません。
マーゴ・フォンティーンは当時30台の終わり頃。最も脂ののりきった絶頂期です。
この「オンディーヌ」では、マーゴ独特のエレガントな踊りにとどまらず、もの凄い迫力と演技力に圧倒されます。
第一幕・ベルタの館、自分の影に戯れるオンディーヌ=フォンティーンの可愛らしさ、そして神秘の森でのオンディーヌと水の精達の群舞、一目で好きになったパレモン=ソームスとのパドドゥ、マストが折れ船が難破する迫力満点の第二幕、
そして第三幕、パレモンの館、永遠の愛を誓うオンディーヌとパレモン・・・・・、一時も目を離せない迫力満点のしかも美しいシーンの連続です。
全編一時間半ほどですが、彼女はほとんど出ずっぱりで、相当な重労働に違いありません。でも、どの場面も些かの疲れを感じさせず、もの凄い演技に引き込まれて目を離せなくなってしまいます。
ラストのシーンで、パートナーの上に倒れかかる場面は息も絶え絶えになるほどの熱演で、凄いを通り越して、鳥肌が立つほどの迫力なのです。
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久しぶりに、キャビネットから取り出して見たのですが、あらためてマーゴ・フォンティーンというバレリーナの、女優としての素晴らしさを実感しました。
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