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ドン・キホーテ:デュポン、ルグリ、パリ・オペラ座   (2005.10.9)

2002年に上演されたパリ・オペラ座でのヌレエフ版のドン・キホーテの映像があります。
ヌレエフ版の演出の特徴は、第二幕第一場にキトリとバジルのパ・ド・ドゥが挿入されていることです。第1幕の情熱的なスペインの広場の雰囲気から、一転、二人の叙情的なパドドゥとなり、再び、ジプシーの踊り、そしてうっとり美しい幻想の場、そして第三幕のお祭り・・・と、次々と場面の転換の面白さを味わえます。結果として、主役のオレリー・デュポンは、第一幕と第二幕第一場ではパ・ド・ドゥ、第二幕第二場ではドルシネア姫、そして第三幕ではグラン・パ・ド・ドゥと、ほとんど出ずっぱりということになり、かなりの重労働を強いられます。よほど、力の配分をうまくしないと、後半は疲れてしまうでしょう。
 
全体的に、ドン・キとしては、上品で洗練されすぎているような感じがしないでもありません。大人っぽくおとなしい、落ち着いた雰囲気です。これはこれで素敵なのですが、庶民的なスペインの物語としては、特に一幕は、違うのでは?という感じもします。逆に第二幕幻想の場はとても美しくてうっとりでした。 オレりー・デュポンのドルシネア姫は、気品高くゆったりとした物腰、流れるように美しい腕の動きにで、この世のものとは思えないほどの美しさです。森の女王のドルフィーネ・ムーサンもとても優雅で素晴らしく、見所の難しいイタリアン・フェッテを見事に決めました。また、キューピットのクレール・マリ・オスタがとても軽やかで可愛らしくて素敵でした。 彼女は、このあと、エトワールニなったそうですが、この踊りを見るとなるほどと思います。若いエトワールの誕生、今後が楽しみです。
バジルのマニュエル・ルグリは、いつもながらサポートがうまく、ソロも安定しています。しかし、オーレリー・デュポンの動きが、何となく精彩に欠けます。数年前の、「眠りの森の美女」の映像に見られた軽やかさ、透明さが無いのです。この時より、少々太った感じで、動作が重く、支えのルグリも、苦労しているように感じられました。
 
第三幕、グラン・パドドゥでは、オーレリー、かなり緊張しているようで、表情が硬く、にこりともしません。アダージョ序盤のアチチュード・プロムナード、パートナーのルグリと腕を組み合ってバランスをとっています。 ヌレエフ版の振り付けはこれが多いのですが、私は好きではありません。練習ならまだしも、本番でこれはチョッとと思ってしまいます。
アダージョでの中盤の、3度のアチチュード・プロムナードに続く、ひとり立ちのバランス。オーレリーは、いずれも安定さに欠け、バランスを長く保てず今一でした。でも、アダージョの最後の、アラベスクのプロムナードに続くアチチュード・バランスで、彼女は意地を見せました。かなりグラグラ揺れながらも、歯を食いしばって懸命に保った長〜いバランス。笑みを忘れて必死に頑張る姿には感動を覚えます。 それまで、にこりともしなかったオーレリーですが「うまくいってよかった」と安堵の表情。観客の大きな拍手に、思わず笑みがこぼれました。また、コーダでのグラン・フェッテは、軸足のズレが大きく、かなりきつそうでしたが、必死に頑張って無事踊りぬきました。
ただ、このオーレリー・デュポン、トゥでのブーレは美しいのですが、普通に歩く姿がやや蟹股のようで、あまり美しくないのです。数年前の、オーロラ姫の映像では、もっとずっと綺麗な歩き方だったのですが・・・・。この後、彼女は足の手術をしたと聞いていますが、このステージの頃から足が悪かったのかもしれません。 このDVD、オーレリーがやや不調なのがチョッと残念ですが、映像も音もとても美しくて、華やかな舞台を存分に楽しめました。
 

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