今年もNHKのローザンヌ国際バレエコンクールの放送を楽しみました。
毎年スイスのローザンヌで行われるローザンヌ国際バレエコンクール(Prix de Lausanne)は15歳から18歳までのバレエダンサーを対象としたものです。
今年は、17歳、高校2年生の菅井円加(佐々木三夏バレエアカデミー)がスカラシップ賞とコンテンポラリー賞を受賞し、大きな話題になりました。
審査員を務めた吉田都によると、菅井円加は「すべてが良く、審査員9人全員一致の結論です。
決勝前日の演技からも成長が見て取れ、現代舞踊ではエネルギーを感じました」とのこと。
満場一致の評価を得た文句ない受賞で大変喜ばしいことです。
でも、確かに快挙ではあるものの、大手紙やテレビ各社がトップで報道し、過去にない位の熱狂ぶりはどうかと思います。
菅井円加が、熊川哲也や吉田都クラスのスターになるのが当然というようなほどのフィーバーぶりです。
この10年のうちでも、贄田萌、河野舞衣、佐々木万璃子らがスカラシップ賞を受けても、こんな大騒ぎはなかったのに、今回、ここまで持ち上げられるたのはチョッと異常です。
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私は、NHKの放送を見ていて、確かに菅井円加は堂々として貫禄があり、特にコンテンポラリーはインパクトがあったけれど、
個人的には、決勝に残りながら入賞を逃したものの、早乙女愛毬
(さおとめ あまり)の愛くるしい踊りに愛着を覚えました。
クラシックはパキータ〜パ・ド・トロワの第1ヴァリエーションでしたが、ニコニコ楽しそうな笑顔で、こちらも嬉しくなってしまいそう。
このヴァリエーションを、こんなに丁寧に可愛らしく踊った人を見たのは初めてです。
180度開脚の高いグランジュテ、一糸乱れぬシェネなど技術的にも優秀です。クラシックチュチュが本当によく似合って、とにかくチャーミングで魅せ方を良く身に着けている人だと思います。
コンテンポラリーは、「モモ」(ショスタコーヴィッチ作曲、ディディ・フェルトマン振付)。ファンタジーの世界から飛び出してきた小人のようで、これまた、とても繊細で可愛らしい。
踊ることが嬉しくてたまらないといった感じで、フェルトマンは、彼女の為に振付けたのではと思えるほどで、こんなに楽しめたコンテンポラリーは珍しい。
ただ、小柄でいかにも大和なでしことという感じの早乙女愛毬は、上品で可愛すぎるあまり、日本人離れのスケールと力強さの菅井円加と比べられて見栄えの面で損をしたのでは?と思ってしまいました。
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放送の中で、解説の安達悦子は、早乙女愛毬について、「クラシックでは、難しい飛んで足を打ちつけるパも、回転も軸がずれず安定しているし、とても可愛い。
首が硬いのか肩が上がって見えたところがあったのが残念でした。」、「コンテンポラリーでは、あどけない少女らしさが好感をもてるし、動きもクリアーで可愛らしい」と、「可愛い」を連発していて、
とても高く評価しているように思えました。英国で頑張っている佐久間奈緒を彷彿させるような「可愛い」は早乙女愛毬の最大の武器でしょう。
安達悦子の言うとおり、早乙女愛毬は、観ていて、つい応援したくなるような可愛らしい魅力に溢れたダンサーだと思います。
ちなみに、ローザンヌ国際バレエコンクール解説者は、古くはクロード・ベッシー、最近まで大原永子でしたが、ダンサーいびりとも思えるこの二人の品のない毒舌にはうんざりでした。
数年前から安達悦子に交代し、まともな解説になったのには歓迎。
安達悦子は、清楚で気品に満ちたバレリーナ時代を思い出させるような上品な口調で、時折辛口ながらも、適切な解説で好感をもてます。
さすが慶応出の才媛。教養と高さと育ちの良さが、自然に滲み出てくるのでしょう。
早乙女愛毬は、ローザンヌのコンクールで、入賞を逃したけれど、ファイナルに残ったこと自体、立派なこと。
実際、佐久間奈緒はローザンヌで結果を出せなかったけれど、
バーミンガム・ロイヤル・バレエのプリンシパルに上り詰めて活躍しています。早乙女愛毬は、佐久間奈緒のような上品で可愛らしいイメージあるし、
ローザンヌ国際バレエコンクールは「将来性」を評価するコンクールであり、何よりも「その後」が問われるので、
早乙女愛毬も、今回の結果を一つのステップとして自分のペースでのびのびと成長して欲しいと思います。
You Tubeに、早乙女愛毬のクラシックとコンテンポラリーの踊りが載っていました。
・「パキータ〜パ・ド・トロワの第1ヴァリエーション」は、こちら→ ・コンテンポラリーのシュスタコーヴィッチの「モモ」は、こちら→ 早乙女愛毬について書かれた新聞記事がありました。 こちら→
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