バレエ「パキータ」の原型は、19世紀パリオペラ座の振付師ジョゼフ・マジリエが人気バレリーナ、カルロッタ・グリジの為に作ったもので、
プティパがお気に入りのバレリーナ、エカテリーナ・ヴァーゼムの為に改変したとのこと。
主役のパ・ド・ドゥ以外にもソリストのヴァリエーションもふんだんに取り入れられ、踊り手いかんで、何倍にも楽しさが増す作品と言われています。
ソリストのヴァリエーションは、ミンクス、プーニ、チェレブニン、ゲルベル作曲の四つで、
主役のバレリーナが踊るエトワールのヴァリエーションと並んで見ごたえがあります。
特に「ナイヤードとオンディーヌ」の中の踊りとしてミンクスが作曲した第1ヴァリエーションは、
出だしには、
トゥで立った反対の脚をギリギリまで上げるというエカルテ・ドゥヴァン、
最後はイタリアン・フェッテと見せ場が多く、バレリーナの腕の見せ所です。
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パトリシア・ツォー:Patricia Zhou)のパキータ〜第1ヴァリエーションがYouTubeに載っていました。
2011年に当時17歳のパトリシア・ツォーが、ミシガン州アノーバーでのロイヤルバレエの「ロシアバレエの星」というガラに招待されて、踊ったもののようです。
この難しい踊りにひたむきに取り組むパトリシア・ツォーの健気な姿に、じっと見入ってしまいました。
パトリシア・ツォーは、カナダ生まれのアメリカで育ちで、長い脚にスリムで均整の取れた美しいプロポーションのバレリーナ。
彼女がバレエを始めたのは13歳と遅かったのですが、ワシントンD.C.のキーロフ・アカデミーで訓練を受けて急速に進歩し、様々な国際バレエコンクールで
好成績を収め、最も期待されている若手バレリーナの一人です。キーロフ・アカデミーを卒業後、2012年からベルリン国立バレエで踊っています。
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ヴァリエーションの出だしのエカルテ・ドゥヴァンは、トゥで立った反対の脚は上がるだけ上げ、バランスはためるだけためて・・・とされていますが、
パトリシア・ツォーは、しっかり180°近くまで上げ、ここでグッと堪えてバランスを維持。
そしてアティテュード・クロワゼ・ドゥヴァンのポーズを優雅に決めたあと、
最後の難関のイタリアン・フェッテを全く危なげがなく美しく決めて終了へ。
ポアントで立って寸分のずれもなく両爪先を重ね合わせての完璧なフィニッシュで、大きな拍手を受けました。
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バレエ「パキータ」は、主役とソリストたち、それにコールドバレエのアンサンブルが大切です。
主役だけよければ他は適当で良いというわけではなく、中でも第1ヴァリエーションの優劣で作品全体の成否の鍵でもある。
特に、イタリアン・フェッテは、グランフェッテよりゆっくりだけれど、
アラセゴンドからアティテュードまでを一気に回り軸足を床に着けたり立てたりしてかなり辛い。
足を高く上げようとすると上半身がそりかえりがちになり、回転を意識しすぎると足が置いてけぼりになり、
上半身と下半身のバランスが崩れて失敗しがちで「32回のグランフェッテより16回のイタリアンフェッテのほうが苦手」という人も居るほどです。
かってバレエ「パキータ」で、日本人のバレリーナがこのイタリアン・フェッテを失敗。
途中から上半身がぐらぐらしし始め、続いて脚がもつれて下半身がメロメロになってしまった。
主役の二人を外国から招いての公演を、この第1ヴァリエーションのソリストが台無しにしてしまった。
「プロなのに見っとも無い。しっかり練習しろよ」と言いたくなった。
それに引き換え、若いのにパトリシア・ツォーの踊りの見事なこと。このベテランのダメプロに、ツォーの爪の垢でも煎じて飲ませてやりたい位です。
尤も、パトリシア・ツォーは、この第一ヴァリエーションに相当自信を持っているようです。
2010年のパリでのYAGP FRANCE Semi-Finalsでも、このヴァリエーションを踊り、
クラシカル部門で一位になっています。(→)
なおこの時にはグラン・パ・クラシックも踊っていて、こちらも素敵です。(→)
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