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サンクトペテルブルク300年記念ガラコンサート   (2003.8.16)

NHKテレビで放送された、「サンクトペテルブルク300年記念ガラコンサート」を見ました。オペラとバレエのさわりから、全部で10曲。うち、オペラが7曲、バレエは3曲。オペラが圧倒的に多く、バレエが少なかったのはチョッと残念な気がしましたが、総監督のワレリー・ゲルギエフがオペラ畑の人だから仕方がないでしょう。
ここでは、バレエの部分について感想を述べます。
 
バレエの演目は、「ラ・バヤデール〜第3幕」、「瀕死の白鳥」、「海賊のパ・ド・ドゥ」。
何といっても素晴らしかったのは、「海賊のパ・ド・ドゥ」のザハロワ。
彼女より先に踊った、「ラ・バヤデール」のディアナ・ヴィシニョーワも、「瀕死の白鳥」のウリアナ・ロパトゥキナも、とても素晴らしいと思ったのですが、ザハロワの踊りを見たら、全く霞んでしまいました。
彼女がステージに現れた途端、パッと華やかな雰囲気になりました。まず、この人の手足の長さと体のしなやかさには、絶句!。上げた脚は、無理なく180度まで達するし、美しく繊細なポーズもピタッと決まります。ヴァリアシオンの中の見せ場のひとつであるイタリアンフェッテでは、さすがに、チョッと厳しい表情になりまたが、その踊りは、正確で、寸分の乱れもなく・・・、ゆったりと、しかもダイナミックで、うっとり。難しい技をミスなくクリアーしてにっこり。この笑顔が、本当に美しかった。また、コーダでのグランフェッテでは、軸足がまったく乱れない完璧な回転を披露。笑顔さえ見せて・・・、余裕でした。
 
ただ、指揮者ワレリー・ゲルギエフが、ステージのダンサー達を気にせずに、自分のペースで、ぐいぐいオーケストラを引っ張っていくようなのが気になりました。音楽が先行する為、ダンサーが必死についていくという感じで、かなり踊りにくそうに見えて、気の毒に感じました。ゲルギエフは、もともとオペラ畑の指揮者なので、歌手を歌わせるのは上手なのでしょうが、バレエの指揮には向いていないようです。つまりダンサーの気持ちを考えて指揮をするということを知らないように思いました。
ゲルギエフは、マリンスキー劇場の総監督なので、ダンサーも自分の指揮について来いという気持ちはわかりますが、肉体で全てを表現するバレエと、声による表現のオペラとは、おのずと指揮の仕方は違うと思います。やはり、バレエの部分は、バレエの指揮の経験者が振るべきだったでしょう。
 
ところで、「海賊・・」を踊ったザハロワは、ペテルブルクのマリンスキー劇場から、モスクワのボリショイ劇場へ移籍するということです。 ボリショイ劇場とマリンスキー劇場のバレエは、全然感じが違います。アクロバティックでスポーツ的なモスクワに対して、ペテルブルクは宮廷舞踊的な優雅さいうところでしょう。したがって、純ペテルブルク的なザハロワが、モスクワへ行って大丈夫なの?と思わざるを得ません。ただ、ザハロワは元々はキエフバレエ学校の生徒で、最終学年だけマリンスキーのワガノワバレエ学校に転入したといういきさつがあり、マリンスキーから環境を変えたいと感じていたそうです。またザハロワがマリンスキーに入団した頃から、ボリショイ劇場に来るよう誘われていたそうで、これが、今回の移籍に繋がったようです。この映像が収録されたのが2003年5月30日で、ザハロワの移籍が8月ですから、このガラコンサート出演の時には、彼女の移籍の意思は決まっていたに違いありません。その意味では、この映像は、彼女にとっては、マリンスキー時代最後の記念の映像ということになります。ガラでの素晴らしい踊りは、「最後を飾りたい」という彼女の気持ちのあらわれかもしれません。
彼女は移籍後は同じワガノワバレエ学校の出身のセメニャーカの指導を受けるようです。マリンスキーの舞台から彼女が居なくなるのは寂しいですが、マリンスキーの海外公演にもゲストで参加するそうなので、ボリショイとの来日も合わせて、彼女を見れる機会は、かえって多くなるかもしれません。期待しましょう。

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