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コッペリア:プティ、ケイン、マルセイユバレエ   (2006.1.8)

ローラン・プティ振付・演出、コッペリアの映像があります。プティ自身も踊っている、1975年、モンテカルロバレエ団の公演です。
プティの振付は、フランスのエスプリに溢れているとか、クラシックに新しい息吹を吹き込んでいるとか、批評家の間では大変評価が高いのですが、どうも、私は好きになれません。やはり、オーソドックスな純クラシックな演出が好きなのです。
プティは、物語は踊るための口実にしかすぎないとして、踊りを重視し物語りは二の次という考え方ですが、私は疑問を感じます。尤も、物語を全く除き、純粋に舞踊だけを追求するバランシンに比べれば、まだましだと思いますが。
そのためか、最近牧阿佐美バレエ団がプティのデューク・エリントン・バレエやピンクフロイド・バレエを上演しましたが、私は生の公演を観にいきたいと思わず、テレビで見ていました。
 
それはさておき、プティのコッペリアについて述べてみます。
「コッペリア」は、楽しい恋愛もので、貴族の結婚式などに演じられたということですが、プティのはホフマンの原作をイメージを生かし、どこか不可思議で哀しいバレエに仕上げています。
通常のサン・レオン版とプティ版の違いは、まず人形作りの老人コッペリウスがスワニルダに恋していること。人形師はスワニルダに似せて人形コッペリアを作り、その人形に恋人フランツが人形と知らず興味を持つというところ。
コッペリウスの家に忍び込んだスワニルダたちは、それが人形で、スワニルダに似ていることに気がつきます。コッペリウスと人形のワルツが見物。コッペリウスが人形を抱いて踊ります。人形コッペリアを愛する初老の紳士コッペリウスは、プティ自身が演じていますが、プティの腕の中の人形はまるで生きているようです。
そこへ、フランツが忍びこみ、人形師は魔法でフランツの魂を人形に吹き込もうとします。動き出す人形に彼は狂喜するが、実は人形の服を着たスワニルダ。彼女はフランツと逃げ出し、後には裸にされた人形と人形師が残されます。
終幕では、仲直りした恋人たちと仲間たちの華やかなダンス。やがて裸の人形を引きずって、コッペリウス登場。夕闇で誰もいなくなった広場。老人の腕の中で、人形がバラバラになるというものです。
スワニルダはカレン・ケイン、フランツは、ルディ・ブリアン。カレン・ケインはイヴリン・ハートの一世代前のカナダ国立バレエのプリマ。 少し気品が欲しいなと思うところもありましたが、青年たちにもてはやされる町娘スワニルダを、コミカルでチャーミングに演じていて楽しめました。
第1幕、スワニルダ登場からまもなく、プティは、スワニルダに難しい踊りを要求しています。 スワニルダが、片足のアチチュードで立ち、手を離して独り立ちするポーズです。それを三回繰り返します。 女性賛美の振付家と言われるプティのこと、おそらく「眠りの森の美女」の「ローズアダージョ」を意識したのでしょう、 ヒロインには過酷な要求ですが、見せ場を作っています。 それまでキュートな笑顔だったカレン・ケインの表情が、 一転真剣そのものになったことからも、相当難しことが推測できますが、ケインは頑張ってバランスを決めていましたv
このプティのコッペリアは、収録当時、とても好評だったと言うことで、今回改めて見直してみましたが、やはり私は、あまり好きにはなれませんでした。私の頭が古いせいか、普通の演出の方が好きです。


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