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ラスタ・トーマスのバレエ・リサイタル  (2006.7.1)

ラスタ・トーマスのバレエコンサートの映像があります。2000年11月、ラスタがまだ19歳の時、東京・新宿の厚生年金ホールで芸術監督として初めて開いたリサイタルで、MXTVが収録して放送したものの録画です。競演は、ダニー・ティドウェル、フェルナンダ・タバレス=ディニス、レナータ・パヴァム等、日本からは、佐々木大と下村由理恵。才気溢れるダンサーが、多くのダンサーたちを引き連れて初めてのプロデュースに挑戦する姿は、頼もしさを感じます。全体の構成はゴッタ煮的な感じでしたが、「ラスタが興味を持っていることは全て盛り込む」ということなのでしょう。
踊りはクラシックもコンテンポラリもありましたが、コンテンポラリーは好きではなく理解できないので、クラシックを中心に感想を書きます。
下村由理恵さんは、大サービスという感じで、3曲も踊りました。しかも全てトゥを使ってのクラシックですから、これは体力的にも精神的にも相当過酷でしょうが、見せるんだ!!という意欲が伝わってきました。プロですね!!!。 まず、佐々木大さんとの「ドン・キホーテ」〜パ・ド・ドゥ。アダージョ出だしの二回のリフト、佐々木大さん、下村さんを高々と挙げて静止、その長いこと。下村さんがいかに相手に負担をかけまいと軽やかにジャンプしたとしても、佐々木さんは一人の人間の体重を片手で支えるのですから、相当な重さのはず。少しのふらつきもなくじっと支える力と技術はあっぱれです。 アダージョ後半のアチチュード、女性の見せ場ですが、2回目のバランス、佐々木さんの支えの手を離した直後、下村さん、上体がグラッと大きく揺れました。 下村さん、思わず険しい表情になりましたが、そこが彼女の凄いところ、グッと堪えて体勢をを立て直し、しっかりとバランスを維持、観客の大きな拍手を誘いました。 アダージョの最後、佐々木さん、再び下村さんを高々とリフト。そして真っ逆さまに落ちるフィッシュダイブ。バッチリ決まって、お互い顔を見合わせてにっこり。見事でした。 ただ、下村さん、コーダでのグランフェッテは、不調??。ダブルを入れた前半は快適に回っていたのですが、シングルになって観客の手拍子も加わった後半は、かなり辛そう。軸足がまっすぐ伸びておらず、その為か回転もスムーズではなかった。終了近くには軸足が大きくずれて・・・、でも、下村さん、必死に持ちこたえました。 その分、「挽回だ!!」と言わんばかりに、ラストの決めポーズの時は、うんとためて、大見得をきって終わりました。大変な精神力ですね。
「エスメラルダ」は音取りが遅めで、音楽にあっていないようなところもありましたが、回転しながら足でタンバリンを叩いていたのは凄い技術だと思います。
「ロミオとジュリエット」は下村さんも佐々木さんも、とても気に入りました。 佐々木さんは、白のタイツとブラウスが似合っていて、とてもノーブル。彼は「ドンキ」のような技巧派な作品より、「ロミジェリ」のような抒情的な作品の方が似合うように思います。 佐々木大さんは、かって下村さんを「バイオリズムも同じで、最も息の合うパートナー」と言っていたことがありますが、今回も二人の呼吸はこの「ロミジェリ」でもバッチリでした。
最後の「海賊」は、ラスタ・トーマスとレナータ・パヴァム。当時まだ16歳のとても可愛らしく、ほっそりとしなやかな肢体の美しいダンサー。アダージョの出だしでは緊張感がみなぎっていて発表会のよう??。バレエ団の一員として踊るのではなく、ラスタの相手役としての責任からか、かなり緊張しているようでした。でも、アダージョが終わってバリエーションに入ると緊張も解けて笑顔が覗いていました。 バリエーション最後のシェネ、途中から観客の拍手も誘う軽快さ。ピタッと決めてホッとした表情。 コーダ見せ場のグランフェッテは、前半ダブルを加えて熱演。懸命に回る彼女に会場からも暖かい拍手がおくられていました。

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