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ライモンダ〜パ・ド・ドゥ:バレエハウス3.17発表会    (2013.10.10)
私はバレエの「発表会」を観るのが好きです。「発表会」は、バレエ教室が日頃の成果を家族や友人に観てもらうものです。 従ってダンサーの技術も、演出も、「公演」と比べて遙かに及ばないのが普通です。でも時として「発表会」の中にキラッとした輝きを発見することがあります。 YouTubeに載っている映像にも、そのような素敵な映像がありました。 バレエハウス3.17という映像で、韓国のバレエ教室の発表会の記録のようです。ライモンダ、黒鳥、海賊のパ・ド・ドゥなどが踊られていましたが、 その中でライモンダのパ・ド・ドゥが特に印象に残りました。舞台経験が少ないせいか、プレッシャーに押し潰されまいと懸命に踊る若いバレリーナ、 彼女の不安を和らげようと、優しいまなざしで力強くサポートする男性ダンサー。心温まるデュエットでした。
 
グラズーノフ作曲のライモンダのパ・ド・ドゥはハンガリーの宮廷でのライモンダと騎士ジャンの結婚披露宴の踊りです。 プティパの振付ですが、グラン・フェッテのような派手なパフォーマンスはない代わりに、似たようなメロディーの繰り返しが続くので、 特に女性には、緩急をつけて情緒たっぷりに踊ることが求められます。 またアダージョには男性が女性を肩に乗せて移動するリフトがあり、お互いの呼吸が合わないとすんなり持ち上がらなかったり、 移動するとき男性の足がふらついて、女性が恐怖を感じてバランスを崩したり・・・、最悪、落下したりと、ミスも出やすい踊りです。 危険を伴う、この難しいパ・ド・ドゥに、若い美男美女のカップルが果敢に挑戦したのは偉いと思います。
YouTubeの映像はコメントには何も書かれていないので出演者は誰なか分からないけれど、 ライモンダ役の女性は小柄でポッチャリとした顔にパッチリとした眼の可愛いらしいバレリーナ。 痩せぎすのダンサーが多い中、ふくよかな胸とふっくらした肢体が魅力的。 騎士ジャン役の男性は勇壮な騎士というよりジェントルな王子という感じで、リフトやジャンプでは力強く女性を持ち上げ、バランスでは女性をしっかりサポートし、 優しい心配りが随所に見られました。アダージョのアントレ(導入部)は手を繋ぎ、いかにもフレッシュな恋人同士という感じの軽やかなステップで登場。 二人で舞台を駆け回って、終わりはライモンダが左足を軸にして右膝を床につけて太腿を立てて、ジャンを見上げる独特のポーズでフィニッシュ。 このポーズは、その後も軸足を変えて随所に出てくるライモンダの定番です。 主題に入った直後、女性は緊張からか顔が強張っていましたが、この後の女性を肩に乗せて移動するリフトでは男性がふらついて苦しそうだったけれど、 リフトされた女性は、このあたりから強張っていた表情も幾分和らいできて緊張がほぐれて落ち着いてきたようでした。 女性はその後一度足がもつれ気味になったところもあったけれどリフトもジャンプもミスなく踊り終えて、いよいよフィニッシュ・・・、 そこで悲劇が起きた。 アダージョのフィニッシュは、左足で支えて右膝を床につけて太腿を立てて・・・、という幾度も出てくる定番のポーズ。 アントレのフィニッシュと殆ど同じだけど、右手を腰に左手を頭の後ろにあてて左足の爪先を立てる点だけが異なります。 直前の腰を支えられたピルエットが終わり、男性が腰からサポートの手が離し、女性が最後のポーズに向けて右膝を下ろした瞬間、 左足の支えが崩れて上体が左へ大きく傾いた。たまらず左手を床についた女性!!。 「舞台には悪魔が居る」とはアダム・クーパーの言葉ですが、アダージョの最後の最後に悪魔に捕まってしまった。 とっさに体制を立て直し左足の爪先を立ててフィニッシュのポーズを整えたけれど、疲れきったように肩で大きく息をして、今にも泣き出しそうな表情が痛々しかった。 でも、この時パートナーの男性が、すかさず女性に手を差し伸べて、暖かい眼差しを女性に注ぎ、優しくレベランスへ導いていきました。 レベランスで観客の拍手を受けて、彼女は無理矢理笑顔を作っけれど、ショックで落ち込んだ眼はうつろでした。
ジャンのヴァリエーションに続いて、ライモンダのヴァリエーション。 手を打つようなライモンダ特有の仕草や、たくさんのパ・ド・ブーレやピルエットなどのトゥさばきなど、難しいパやポーズを上手にこなして、フィニッシュ。 とても可愛らしい素敵な踊りでした。頑張ってアダージョのショックから立ち直った女性は立派です。 コーダはやや疲れが出たのか、足元がやや不安定に感じたところもあったけれど、破綻無く終了。レベランスでの笑顔が素敵でした。

このパ・ド・ドゥではパートナーの男性の女性を思いやる気持ちを強く感じたし、女性がグラつきかけた時ビシッとフォローしていた頼もしさを感じました。 パ・ド・ドゥを踊る女性にとって、頼れるのはしっかり支えてくれるパートナーだけ。 パートナーには女性に不安を与えない力強さと優しい思いやりが大切で、ダンスール・ノーブルとはこういう男性を指すのでしょう。 そして、ライモンダ役の女性がほんとに可愛い!。優雅で気品もあって、ほのかな色気さえ感じられる素敵な女性。 結婚を迎えての、若い女性の恥じらい、新生活への憧れといった感じもよく出ていました。 回転系など、技術的にはまだまだと思えるけれど、そういう部分を発見できるのも、「発表会」ならではの楽しみでしょう。 何より、将来を夢見て力一杯踊っていた健気な姿に感動しました。 大きく夢を育てて、技術を磨いて、バレリーナとして成長した姿を見たいものです。  

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