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映画「赤い靴」とそのバレエ音楽 (2002.2.1改)
映画「赤い靴」は1948年に製作されたアメリカ映画です。
モイラ・シァラー、レオニード・マシーン、ロバート・ヘルプマンなど世界的ダンサーとサドラーズ・ウェルズ・バレエ(現在のロイヤル・バレエ)が出演しています。
日本での公開はその2年後ですから、戦後まもない時代で、おそらく日本人が本格的なバレエに接したのはこの映画が最初なのではないでしょうか。
私は以前に幾度か映画館やテレビで観て、5年ほど前にレーザー・ディスクも購入していたのですが、今回ディスクを再度取り出して観たところ、改めてこの映画のすごさに驚きました。
物語は、ヴィッキー(モイラ・シァラー)という少女が、バレエ・リュッスのディアギレフを思わせる団長に認められ、新作「赤い靴」を踊り大成功を収めます。しかし芸術と若い作曲家ジュリアンへの恋との板挟みになったヴィッキーは、汽車に飛び込みはかない生涯を終えるというものです。 この映画の中で踊られるバレエと同じく赤い靴を履いたまま。
50年以上も前に作られたというのに、古さを少しも感じさせない堂々たる作品です。 約2時間があっという間に過ぎてしまいます。
「白鳥の湖」、「ジゼル」、「コッペリア」などのさわりの部分が踊られ、これを見るだけでも楽しいのですが、なんと言っても中心は、最大の見どころは、劇中で上演される約15分の新作バレエ『赤い靴』の場面。
魔力をもつ赤い靴を履いたが最後、踊り続けなければならないというアンデルセンの物語を題材にし、映画のヒロイン・ヴィッキーの運命を暗示しています。 この場面はバレエの舞台を映像化していると思われますが、幕が開いて舞台が始まるや、ステージのサイズは大きくなり、各種の編集技術や特撮技術を使って、映画ならではのステージ表現に挑んでいます。コンピュータグラフィックスを多用した最新の映画にもひけをとらない美しい映像効果に驚かされます。
このバレエの音楽はブライアン・イースデールという英国の作曲家のものですが、クラリネットと弦の主題の演奏に、電子楽器とオーケストラが加わり、とても迫力のある見事な音楽です。
電子楽器の神秘的な曲で始まり、幕が上がると靴屋の場面。靴屋が赤い靴を履かせる犠牲者を捜しています。ここで「春の祭典」の振り付けで有名なレオニード・マシーンの至芸を見ることができます。
少女ヴィッキーは靴屋の赤い靴に目を留め、履いてみたくなります。少女は靴に足を入れ、踊り始めます。少女は次々とパートナーを変えながら踊ります。山を越え谷を越え森を抜けて踊り続けます。
くたくたに疲れた少女は家に帰りたくなるのですが、赤い靴は踊りをやめません。少女はナイフで靴のリボンを切ろうとしますがナイフは木の枝にかわってしまいます。
教会の前で疲れ果てた少女は司祭に靴を脱がしてくれと懇願します。司祭が靴を脱がすと同時に少女は死に絶えてしまいます。
靴屋の前では靴屋が「赤い靴」を両手に、次の犠牲者を待つ踊りを踊っています。
以上で映画の中のバレエ『赤い靴』は幕となります。
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