ローズアダージョのヴァリエーションは、ローズ・アダージョを踊り終えたオーロラ姫が、カラボスの毒牙に倒れるまでの間の数分間の踊りです。 オーロラ姫は16歳になったうれしさを体一杯に漲らせての可愛らしくと初々しくい踊ることが要求されます。 技巧面では数回転のピルエットを連続4度繰り返す難しい場面があります。 またフィニッシュは連続高速回転のピルエットの後、両足のポアントで立って爪先の乱れをグッと堪えて締めくくります。 全幕の舞台では、ローズアダージョでの極度の緊張に続き、休む間もなくソロを踊るのですから、バレリーナにとっては精神的に非常にきつい踊りです。 おとなしい振りで、派手な見せ場が無い割りにミスが目立ちやすいので、バレエコンサートで踊られることはあまり多くないですが、とても品の良い珠玉の踊りです。

とても美しいローズアダージョのヴァリエーションの映像が、YouTubeに載っていました。 コメントにはK-PROBAコンクールの『最優秀賞　大学/一般の部：眠れる森の美女のローズアダージョのヴァリエーション　イ･ウネ』と書かれているので、 最優秀賞をとったEun Hye Lee 이은혜(イ･ウネ)というダンサーの踊りなのでしょう。

このヴァリエーション、テクニックを誇示するものではないので、いかにミス無く美しく踊るかが問われるのですが、これ以上はないと思われるほど、丁寧で品の良い踊りなのです。 それに笑顔がとても美しい。難しい場面でも終始柔和な表情を失わなかったのは立派。終盤の4回のピルエットは、このダンサーの技術の高さを証明するものでしょう。 技巧的にもスタミナ配分も難しいといわれるこの4回のピルエット、通常各回が2から3回転なのに、この人は1回目は3回転、2回目は4回転、3回目は5回転、最後4回目はなんと6回転。3回目から観客の拍手が起こり4回目には『ブラボー』の声。 さすがに表情は険しくて強張っていたけれど、それが何とも可愛らしい。じっと目を凝らして見入ってしまうほどウルトラC的に華麗で見事な回転なのです。 盛り込まれた回り終わって『うまくいった!!』とにっこり。観客は驚嘆の叫びと大きな拍手で彼女を祝福しました。 しかもこのピルエットを力に任せて回るのではなく、ごく自然に回っていたのには感心。『やるぞ！！』と身構える様子を少しも見せず、自然にす～っと回ってしまう。 静かで穏やかな雰囲気の中に自然に美しく溶け込んで何とも魅力的。厳しいレッスンにより得られた技術でしょう。 彼女の持ち味の、可愛らしく、しなやかな踊りは、オーロラ姫にふさわしく、パッと花が咲いたようです。

ピンクの長めのクラシックチュチュをエレガントに着こなしたこのバレリーナは、繊細で可憐なだけでなく、 タメるべきところしっかりタメて、回るところは無理なくスムーズに回って・・・。 これほど美しく優雅に踊れる人も珍しい。 うっとりとして眼を離せませんでした。 素敵だったのはシェネで舞台を駆け巡った後のフィニッシュ。両足のトゥで立って数秒間グッと堪えて静止。拍手喝采を受けました。 このフィニッシュ、トゥで立たずに両足を開いて止まる人もいるけれど、いかにも手抜きをしたようで頂けない。 その点このダンサーは、あえてトゥを揃えて立つ難しい静止に挑戦。僅かにトゥ先がズレたけれど、歯を食いしばって必死に堪えて持ち堪えた姿に感動。思わず『やった!!』と浮かべた満面の笑みが美しかった。
こんな素敵なバレリーナが居ることを初めて知りました。これはコンクールでのヴァリエーションですが、このバレリーナは、公演の舞台でもさぞ素敵なことでしょう。 是非、眠れる森の美女のオーロラ姫を全幕通して踊って欲しいものです。

眠れる森の美女のローズアダージョのヴァリエーション Eun Hye Lee 이은혜(イ･ウネ) →