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眠りの森の美女~ローズアダージョのヴァリエーション:杉浦優妃  (2015.12.3)

とても美しいローズアダージョのヴァリエーションの映像が、YouTubeに載っていました。 踊っているのは、蔵本誠子バレエスクール所属の杉浦優妃(当時14歳)。 ユース・アメリカ・グランプリ(2014) ジュニアの部 2位の踊りですが、とても上品で優しい雰囲気で、丁寧な手の使い方も素晴らしく、うっとりとして眼を離せませんでした。

ローズアダージョのヴァリエーションは、ローズ・アダージョを踊り終えたオーロラ姫が、カラボスの毒牙に倒れるまでの間の数分間の踊りです。 16歳になったうれしさを体一杯に漲らせての可愛らしくと初々しくい踊ることが要求されます。 技巧面では数回転のピルエットを連続4度繰り返す難しい場面があります。 またフィニッシュは連続高速回転のシェネの後、両足のポアントで立ってグッと堪えて静止するポーズで締めくくります。 全幕の舞台では、ローズアダージョでの緊張に続き、休む間もなく踊るソロですから、バレリーナにとっては精神的に非常にきつい踊りです。 振りはおとなしく、テクニックを誇示する派手な見せ場が無い割りにミスが目立ちやすいので、バレエコンサートで踊られることはあまり多くないですが、とても品の良い珠玉の踊りです。

このヴァリエーション、いかにミス無く美しく踊るかが問われるのですが、杉浦優妃の踊りは、これ以上はないと思われるほど、丁寧で品の良い踊りなのです。 ピンクの長めのクラシックチュチュをエレガントに着こなした杉浦優妃は、繊細で可憐なだけでなく、歩き方のドゥミ・ポイントが高くて美しい。 初めのアラベスクのポーズ、そして途中パッセのポーズはとてもアンデオールされていて、パッセの開き方が美しい。タメるべきところしっかりタメて、回るところは無理なくスムーズに回って・・・。 これほど美しく優雅に踊れる人も珍しい。 中盤の見せ場の4回のピルエットはとても美しい。1回目から3回目は3回転でしたが、4回目は4回転で、危なげなくスムーズ決めて、笑顔がとても美しかった。難しい場面でも終始柔和な表情を失わなかったのは立派です。 回り終わって『出来た!!』とにっこり。 しかもこのピルエットをごく自然に回っていたのには感心。『やるぞ!!』と身構える様子を少しも見せず、自然にす~っと回ってしまう。 厳しいレッスンにより得られた技術でしょう。 終盤の高速で舞台を駆け巡るシェネ。疲れも出てベテランでも失敗しがちな難しいパ。現に杉浦優妃も、かって「神戸洋舞コンクール《の 準決勝の金平糖の精のヴァリエーションでシェネの脚が絡まって「もう決勝に残れない《と思ったこともあったそうだ(無事決勝に進出して優勝した)けれど、 今回は無事に終え、さらに素敵だったのはシェネで舞台を駆け巡った後の両足のトゥで立って静止する危うく難しいフィニッシュ。 トゥの先がズレて、堪らず脚を開いてしまう人も多い中、歯を食いしばって必死にトゥの乱れを堪えて静止。拍手喝采を受けました。 このフィニッシュ、トゥで立たずに最初から両足を開いて止まる人もいるけれど、いかにも手抜きをしたようで頂けない。 その点、頑張ってトゥで立つ静止という高度で至難な技に挑戦したのは偉いと思います。これはコンクールでのヴァリエーションですが、杉浦優妃は、公演の舞台でもさぞ素敵なことでしょう。 是非、眠れる森の美女のオーロラ姫を全幕通して踊って欲しいものです。

杉浦優妃は、何とも笑顔がとても美しい。難しい場面でも終始柔和な表情を失わなかったのは立派。14歳という若さで、こんな素敵なバレリーナが居たとは驚きです。 彼女は、英国ロイヤルバレエスクールに留学中とのこと。今後の活躍が楽しみです。
Yuki Sugiura - Variation from Sleeping Beauty
Yuki Sugiura at YAGP 2014 NYC Finals performing Variation from Sleeping Beauty. Video produced by VAM: Visual Arts Masters.

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