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ロイヤル・バレエ団キューバ公演のDVD発売への期待     (2009.09.21)
英国ロイヤル・バレエ団は2009年7月14日から、キューバ公演を首都ハバナで行いました。意外に思ったのですが、ロイヤル・バレエ団のキューバ公演は、78年のロイヤル・バレエ史上、今回が初めてだそうです。
キューバの伝説的バレエ・ダンサー、アリシア・アロンソ(Alicia Alonso)は、現在88歳で、ほぼ盲目に近いそうですが、今でも、60年前に自らが設立に携わったキューバ国立バレエ団を率いています。
この公演は、アリシア・アロンソをたたえるプログラムを中心に組まれており、タマラ・ロホ(Tamara Rojo)、フェデリコ・ボネリ(Federico Bonelli)ほか、総勢96名が参加し、カルロス・アコスタ(Carlos Acosta)、ジョエル・カレーニョ(Joel Carreno)ほか、キューバ国立バレエ団(National Ballet of Cuba)のダンサーも共演しました。
キューバ滞在中に5人のダンサーが新型インフルエンザに感染したというハプニングがあったものの、用意した抗ウイルス剤を服用して治療し、公演は滞りなく終了したとのことで、とても充実した公演だったそうです。
 
その中でも、タマラ・ロホは、最も評価が高く、文字通り今回のヒロインだったそうです。スペイン出身のタマラ・ロホは、私が大好きなダンサーの一人。日本人並に小柄で、ふっくらとしていて、長身でスレンダーな欧米のバレリーナの一般的なイメージからすると、決して恵まれてた体格とは言えないでしょうが、 黒い髪と大きな瞳のキリリとしたキュートな顔立ちと、短いクラシック・チュチュから覗く綺麗な脚は魅力的で、テクニシャンながら、仕草はしっとりと女らしく品があり、かつ少女のような可愛らしさもあります。 ロホのピルエットやフェッテは、大柄のダンサーが、勢いでブンブンとやる大味なタイプではなくて、 鋭く切り込むようなシャープな回転で、これを余裕をもって危なげなくやってしまうところが流石で、速度も確実さも言うことなしです。 加えて、すさまじく長いバランスを微動だにせず、じ〜と堪えるキープ力は、ため息もので、日頃のたゆまぬ努力を伺わせます。
こんなに凄い超絶技巧も、ロホがやると、少しも、わざとらしさや嫌らしさを感じないから不思議です。 シルビー・ギエムの「どうだ、凄いだろう」と言っているような傲慢な感じと大違いです。自然と滲み出る気品でしょう。
 
キューバ公演の一日目、ロホは、ジョエル・カレーニョとドンキホーテの第3幕から、パドドゥを踊りました。 長いバランスと一糸乱れぬ回転に、ロホのテクニックが冴えて、会場は興奮状態に陥ったとのことです。 二日目は、カルロス・アコスタと組んで、海賊のパドドゥを踊りました。こちらも素晴らしかったそうです。
 
私は、この公演のDVDが発売されることを、今か今かと心待ちししていますが、現在のところ発売されたという情報はありません。 そんな折、You Tubeの中に、この時、ドン・キホーテと海賊のグラン・パ・ド・ドゥの映像が、アップロードされているのを見つけて、 驚愕のテクニックに、思わず見入ってしまいました。本当にタマラ・ロホは素晴らしい。 海賊も悪くないが、とりわけ、ドン・キホーテのキトリが凄い。バランス!バランス!フェッテ!フェッテ!と、これでもかというくらい、高度な技の連発です。 回転の速さと正確さ加えて、バランスのキープ力には驚きを超えた溜息もの。圧巻はアダージョ終盤、左手を腰に、右足は爪先立ちで、左をは後ろに上げた姿勢で立ち、 右手を挙げて片足でバランスをとるところ。左足のわずかな揺れをグッと堪えて、懸命にバランスを保ちます。 その時間は何と15秒。あまりに静止している時間が長いので、観客は途中から拍手を始め、最後は興奮して「ブラボー」の声が渦巻きました。 見方によれば、バレエはこれでいいのかという人もあるかもしれませんが、そんな野暮なことをいうのは止めましょう。 それはもう好みの問題で、素直に凄いと感じます。むしろ、一層の超絶技巧獲得へ努力を続ける、ひたむきで可愛らしいタマラ・ロホを、私は好きです。

ドン・キホーテと海賊のパ・ド・ドゥのYou Tubeに掲載されている映像は、以下のとおり
 
You Tubeの映像より、もっと鮮明な美しい映像で、このタマラ・ロホの素晴らしい踊りを楽しみたい!!。
一刻も早く、ロイヤル・バレエ・キューバ公演のDVDが発売されるのを、期待しています。
 
(参考)ロイヤル・バレエのキューバ公演について、Observer紙のネット版がレポートとスライドショーを掲載しています。
以下のURLです。

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