パリのサンティエ通りとサン・トゥスタッシュ教会　　　　　　 (2008.6.26)

　 モーツァルトが滞在した場所と、彼の母の葬儀の教会

ヴォルフガング･アマデウス･モーツァルトは、1763年11月７才の時にパリを訪れています。神童としてもてはやされていたモーツァルトは12月末から翌年の1月初までヴェルサイユに滞在し1月1日には宮殿に赴き、フランス国王ルイ15世に拝謁しています。このとき、ヴォルフガングが布きれをかぶせてクラヴィアを弾いたとの話が残っているほど、姉ナンネルとヴォルフガングの二人の子供は、もてはやされ、ほめそやされたのですが、結局は、音楽的な曲芸が出来る見せ物でしかなかったようです。 この旅行は、父レオポルト、母アンナ・マリア、姉ナンネルの一家4人の約3年半におよぶもので、フランスの他に、マンハイム、ロンドン、オランダなどを訪問しています。オランダからの帰途、10才になったモーツァルトは1766年5月パリに立ち寄り、再びヴェルサイユを訪問したそうです。パリを後にしたモーツァルト一家は、ブルゴーニュからフランス第2の都市リヨンを経由して、スイスに入り、各都市を歴訪しながらドイツに出るコースを辿ったということです。

12年後の22才のとき、モーツァルトは再びフランスを訪問しました。幼い頃は神童と呼ばれ、少年時代にイタリアでは14才にして教皇クレメンス１４世から音楽家としては歴代2人目の黄金拍車勲章また貴族の一員となる騎士の称号を授かっていたモーツァルト。これらを背景に、音楽家としての就職活動が、今回のフランス訪問の目的ででした。しかし、パリでは、もはや神童としてのモーツァルトは忘れ去られていましたし、イタリアでの栄光はパリでは通用せず、このフランス訪問は、モーツァルトにとって辛い経験になりました。この旅行には母親であるアンナ・マリアも同行したのですが、長旅の疲れと言葉が通じない異国での労苦で、７月に死去してしまいました。モーツァルトは、異国の地で、哀しみに打ちひしがれながら、母マリア・アンナの葬儀と埋葬をすませました。マリア・アンナの葬儀は、サン・トゥスタッシュ教会で、７月４日に行われました。就職の失敗と母の死、失意のモーツアルトは9月一人で故郷オーストリー、ザルツブルクへの帰途についたのです。

　

モーツァルトが滞在した場所は、パリのサンティエ通りの一角と言われています。 サンティエ通りは、オペラ座近くの百貨店ギャラリー･ラファイエットから東へ延びるオスマン通り(Bd Hussmann)を歩き、その延長のモントマルトル(Bd Montmartre)、ポアソン通り(Bd Poissonniere)を越え、ボンヌヌーブル通り(Bd de onnne Nouvelle)に入ってすぐの交差点から南に延びる通りです。オペラ座から1キロほどの距離です。

なんでも、この交差点近くのサンティエ通り8番地にモーツァルトが住んでいたということです。モーツァルトは22才の1778年、3月23日から9月26日まで約半年の間パリに滞在し、この場所で暮らしていたというのです。はたして、今でもモーツアルト滞在の痕跡はあるのかどうか、とても興味がありました
私は、今年(2008年)6月初、南フランスを旅行し、帰りにパリに寄ってきました。パリでのホテルがオペラ座近くだったこともあり、この場所に行ってみました。 サンティエ通りに入って500メートルほど行くと、サンティア通りの出口に出ました。この近辺がサンティエ通り8番地。 引き返すところで上を見上げると、ありました！！。「Ｗ．Ａ．ＭＯＺＡＲＴ」の表示。モーツァルトが、230年前に、まさにこの場所で暮らしていたのが確認できました。

　

モーツァルトの母マリア・アンナの葬儀が行われたのは、サン・トゥスタッシュ教会。この教会にも寄ってきました。場所は、センティア通りを南へ下り、ルーブル通りに入り、中央郵便局を越えて、左へ曲がったところ。先ほどの、モーツァルトの住んでいたサンティエ通り8番地から、約1キロです。
サン・トゥスタッシュ教会は、1532年に着工し、竣工したのは1637年。随分長くかかったものです。パリでもっとも美しい外装の教会といわれ、建築様式は　16，17世紀のものがまじり、ゴシックの構造に、後世コリント式柱やルネサンス様式の装飾が加えられたとのこと。モリエール、宰相リシュリュー、ポンパドゥール夫人などがここで洗礼を受けたとか。 7,000本以上のパイプからできている世界でも有数のパイプオルガンは、音にすぐれていることで有名です。ピガール Pigalle の聖母マリア像、17世紀作のステンドグラスも素敵でした。私が行ったのは午前中でしたが、夕方にはオルガンのコンサートが開かれるとのことで、係の人たちがその準備をしているところでした。