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第一幕、オーロラの出。Ryan Leeは実に可愛らしくて輝きがあります。弾むように出てくる登場から、天真爛漫で可愛いお姫様でした。 小走りで舞台の中央に出てくるときの脚運びがとても綺麗。そしてローズアダージョ。 まず、４人の婚約者の王子と、グランバットマン・デヴェロッペから王子の手を離して左足のポアントでバランス。脚の付け根をよく伸ばし、 右脚を頭上高く180度近くまで上げて華やか。続くアチチュードのバランス。王子の手を離してポアントでひとり立ちするところは、ベテランのバレリーナでも極度に緊張するという難関です。

手を離すのが精一杯で次の王子の手に横滑りという人もいる中、このRyan Leeも、きつそうで、バランスを崩しそうで、ひやひやしましたが、離した右手をアンオーまで挙げたのは立派。 しかも、まっすぐ正面を見て、終始、柔和な表情を失わなかったのは流石でした。 ただ一人目、二人目をバランスを無事に終えて、三人目の王子に手を下ろした途端、王子の腕がガクッと下がった。 思わず顔の引きつったオーロラは、たまらず左足を床に降ろしてしまった。でも、すぐに気を取り直して、四人目の王子の手を握りなおし、 180度近いアラベスク･パンシェの決めたのは偉い。 これはRyan Leeが悪いのではなく三人目の王子役の男性のサポートミス。女性がバランスを崩してもしっかりと支えるのが男性の役目なのに、これでは女性が可愛そう。 この王子もバレエスクールの生徒でしょうが稽古不足。もっとしっかり稽古をして欲しい。でもこれはアクシデント。Ryan Leeは気にすることはないと思います。 その後持ち直して、安心して見ていられましたが、最後のプロムナードに続くバランスでは、サポートの腕にしがみついて、なかなか手を離せず、 かろうじて横滑りという感じで、上まで手を挙げられなかった。

ケネス・マクミランの未亡人のデボラ・マクミランは 「…原版を振付けたプティパという人は少しばかりサディストだったのではないかと思います。かわいそうなオーロラ！…」と言っていたそうですが、 片足ポワントで静止したポーズを取りつづけるこのシーン、背骨と腰にきそうで、いやはや、きつそうでした。
でも、このバランスについて、次のような見方をする人もいます。 「オーロラ姫は、なにも片足で完璧にバランスを保つ必要はないのだ。一人では立っていられないという心許なさこそが、 オーロラ姫の初々しさを強調しているのだから。そもそもそれが、本来の振り付けの意図だったのではないだろうか。」 (佐々木涼子：バレエの宇宙(文芸春秋)) そして、ローズアダージョのヴァリエーションから、カラボスの毒牙に倒れるまでは、本当に素晴らしい。

ローズアダージョのヴァリエーションでは、バランスという難関を無事に通過して気をよくしたのか、ローズアダージョのヴァリエーションでは、美しさの象徴のオーロラ姫を完璧に踊りきっていました。 このヴァリエーション、はじめからアラベスクの見せ場や四回のピルエットと、同じパの繰り返しが多く、基礎のあらが目立ちやすいのですが、とても正確で美しい。 ヴァリエーションの最後、段々早くなる音楽とともにピケで舞台上を回るところなど、甲がきれいに出て軸がまっすぐで、 最後まで正確でかつ繊細で完璧にコントロールされた回転が続いて、余裕を持ってきれいに止まりました。 表情は可愛らしく、指先まで神経が行き届いている動きは柔らかく、かといって、 軸足はしっかりと安定していてまったく崩れず、見事でした。

　

終盤のカラボスの毒牙に倒れるところは、本当に苦しそうな表情。力尽きて崩れ落ち、横たわった彼女、 息も絶え絶えに上下に大きく揺れる胸は汗にまみれ、ハアハアという息遣いが聞こえるよう。持てる力を振り絞っての熱演に、ジーンと胸が熱くなりました。 　　→

　

ただ、主役のRyan Leeの素晴らしさに引き換え、他のダンサーのレベルの低さには閉口。とても見るに耐えないという感じなのです。 バレエスクールの発表会ですから仕方がないと言ってしまえばそれまでですが、もう少しマシな踊りをして欲しいと思いました。