とても素敵なドン・キホーテ~パ・ド・ドゥを見ました。You tubeに投稿されていた映像です。
踊っているのはパク・セウン(박세은 Sae Eun Park)とイジュウ(이재우)という韓国のダンサーです。
パートナーのイジュウも、よくサポートしていますが、とりわけパク・セウンが素晴らしい。
のりが良く、どちらかというとアクロバティチック的な要素の強いドン・キホーテ~パ・ド・ドゥが、こんなに爽やかに、しっとりと、踊られたのを見るのは初めてです。
うっとりでした。
現在パリ・オペラ座のスジェであるパク・セウンは、ほっそりとした体に長い手足でプロポーション抜群、クラシック・チュチュが良く似合いとても可愛らしいバレリーナ。
体のしなやかさは驚異的で、とにかく良く脚が挙がるし、グラン・ジュテの開脚はゆうに180度を超える。伸びやかな爪先とまろやかなカーブを描く甲は彫刻のように美しい。
加えて、繊細で上品な身のこなし、誠実さがにじみ出ているような端正な踊り。バレリーナの資質全てを備えた魅惑の舞姫です。
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パ・ド・ドゥのアントレでは、二人の気合がぴったりで、パートナーは、180度近く脚を開いて飛び上がったパク・セウンを片手で高々と持ち上げ、観客の『オォッー』《という驚きの声と拍手を誘いました。
アントレが終わってアダージョの序盤、プロムナードの回転後のバランス。サポートの手を離そうとした途端グラリとしたけれど、かえってご愛嬌。
思わず険しい表情を見せ、とっさに手をギュッと握りしめ、必死に姿勢を立て直した姿は可愛らしい。
ニコッと微笑んで、パートナーに『危ういところを、有難う!!』と感謝の眼差しが美しかった。
終盤の二度のアチチュードのバランス、一際表情が険しくなりましたが、一度目はパートナーの手を離して、グッと堪えて必死に持ちこたえ、観客の拍手を誘いました。
ただ二度目は、持ちこたえられず、すぐに脚を降ろしてしまったのは残念。
最後のリフトからのフィシュダイブ。二人の息がぴったりで、バッチリ決まりました。手の指先と爪先まで神経の行き届き、大きく弓なりになった体のラインが美しかった。
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また、パク・セウンのピルエットは実にスムーズ。
パートナーにウェストを支えられて回るときも、高く上げた腕の指を軸にして回るときも、抵抗が全く無いように美しく回ります。
女性が自力で回りきれず止まりそうになって、サポートの男性が女性の腰をグルグル回していたのを見たことがあります。
有吊なバレリーナなのに、見苦しいことこのうえなくて、『しっかり回れよ!!』と言いたくなった。これに比べてパク・セウンの美しい回転は、素晴らしい技術です。
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最もパク・セウンの良さが発揮されているのがヴァリエーション。誠実な人柄がにじみ出たよう。上品で丁寧な身のこなし、繊細な感情表現。
一方、垂直近くまで脚の上がるグラン・バットマン、開脚180度を越える見事なグラン・ジュテ、・・・とテクニックも秀逸。非の打ち所の無い美しい踊りなのです。
あえて言えば、着地で稀に「コトッ《という靴音が聞こえること。
でも、彼女の靴音は、軽やかで心地よい。有吊バレリーナですら、『ドスン、ドスン!!』と、いかにも重そうな下品な音をたてる人もいますが・・・・。
体重を増加を抑え、柔らかく繊細な着地を心がけているからでしょう。
パク・セウン、コーダのグラン・フェッテ・アントゥールナンの前半は果敢にトリプル回転に挑戦。体が左右に大きく揺れて、とても辛そう。
でも歯を食いしばって、つま先のずれを必死に堪えて懸命に回る姿に感動でした。後半は無理をせずにシングル回転。余裕をもって回っていました。
終盤のシェネ、最後の力を振り絞って、高速回転で少しも乱れずに、スムーズに移動。観客は手拍子、大いに盛り上がりました。
ラストは、パートナーに腰を支えてもらっての、高速のピルエット。バッチリ決めて観客の『ブラボー!!』の嵐。何より、パク・セウン、終始柔和な笑顔を崩さなかったのは立派でした。
パク・セウン(Sae Eun Park(박세은)は、17才の2007年にローザンヌ国際バレエコンクールでグランプリを獲り、ABTに入団。2009年、韓国国立バレエ団に入団、第二のカン・スジン(姜秀珍)と言われて、韓国では最も期待されている若手ダンサーだそうです。
2011年にパリオペラ座バレエ団に入団しました。
NHKのテレビの2007年のローザンヌバレエコンクールの録画の中に、パク・セウンのジゼルのヴァリエーションの映像がありました。
パク・セウンは繊細で上品な身のこなしで、優雅なグラン・ジュテと、とても魅力的な踊りでしたが、フィニッシュで僅かに乱れました。
終了後今にも泣き出しそうな表情でしたが、大した減点にならず、彼女はグランプリを獲得しました→。
にもかかわらず、解説者の大原永子は『最後に崩れたし、音に遅れている、スピードが無い』と酷評。
大原永子や、その前の解説者のクロード・ベッシーの品のない毒舌にはうんざりでしたが、数年前から解説者が安達悦子に替わったのは歓迎。
バレリーナ・安達悦子の踊りは気品溢れる清楚で美しいものでしたが、解説者としても、慶応出の才媛らしい教養と育ちの良さが滲み出た適切な解説と上品な口調で好感をもてます。
ドン・キホーテのパ・ド・ドゥ:パク・セウン、イジェウ
2011.4.13 韓国芸術総合学校(KNUA)ホール
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