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「眠りの森の美女」〜第二幕バリエーション:パク・セウン   (2012.06.01)

素敵な「オーロラ姫の幻影」のヴァリエーションの映像を、You Tubeで見つけました。 韓国の若いバレリーナ、パク・セウンの踊りです。パク・セウン(Sae Eun Park)は、17才の2007年にローザンヌ国際バレエコンクールでグランプリを獲りABTに入団。 その後、韓国国立バレエ団に入団し、韓国では最も期待されている若手ダンサーだそうです。 2011年にパリオペラ座バレエ団に入団したとのこと
パク・セウンは、溢れんばかりの気品を備え、クラッシック・スタイルの美しさに満ちた素晴らしいダン-サーで、テクニックを誇示せず、抑制された踊りで、これだけ感動的に踊れる人は珍しい。クラシックチュチュ姿は本当に美しい。彼女の背筋から脚へと続く、しなやかな曲線を描くシルエットは、人間の肉体が描き出す極限の美とも言えそう。 見せ場のエカルテ・ドゥヴァンでのバランンス。開脚は150°位だったけれど無理なくフワッと脚が挙がる。この場面、日本の人気バレリーナが脚をもっと高く垂直近くに挙げたポーズを見たことがありますが、 いかにも開脚の凄さを見せびらかしているようで、品が無かった。パク・セウンのそれは節度をわきまえていて、とても上品で美しい踊りでした。 うっとりするくらい美しかったのは、アラベスクに続くアティテュードの回転。 滑らにゆっくり回転してグッと堪えてバランスを決めたアティテュードのポーズの美しさは、ため息の出るくらい。思わず観客から拍手が沸きました。 フィニッシュは、高速のシェネを巧みにこなして、両足のトゥで立ってピタッと止まる難しいポーズ。 勢いあまって、止まった瞬間わずかにトゥがブレたけれど、歯を食いしばってトゥの先のズレを必死に堪えた姿に感動。一瞬見せた険しい表情が、何とも言えず魅力的でした。 パク・セウンは、フィニッシュのトゥのブレが不本意だったのか、レヴェランスでは表情は冴えず笑顔が無くなかったけれど、「素晴らしかった。お疲れ様!!」と声をかけたくなりました。
「眠りの森の美女」第二幕は、オーロラ姫16歳の誕生日から百年の時を経た時代の想定。狩りへ向かう途中のデジレ王子は、善の精リラに導かれ、オーロラ姫の幻影と出会い、 王子はその人こそ運命の相手だと確信するという場面です。 第一幕の華やかさとは異なり、オーロラ姫には、心を置き去りにしてきた人形のように、能面を思わせる無表情で、一心に待ち続ける乙女の心を表現する演技が要求されます。 全幕上演では、第一幕の「ローズ・アダージョ」の緊張から解放された直後の場面だけに、つい力を抜いて、疎かにするバレリーナも居るようですが、 初めて王子がオーロラ姫に出会う重要な場面なので、まじめに演じてもらいたいものです。 これは全幕ではなくバレエコンサートでのバリエーションですが、パク・セウンの演技は全幕での素晴らしさを予感させる、心のこもった美しい踊りでした。

 「眠りの森の美女」〜第二幕バリエーション:パク・セウン
   2011.4.14 韓国芸術総合学校(KNUA)ホール  

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