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酒井はなさんのサロメの踊り    (20045.1.4)

新春恒例の「NHKニューイヤー・オペラコンサート」。海外や国内の第一線で活躍している歌手たちが、NHKホールでオペラの名アリア、名場面を披露し、1月3日NHK教育TVでオンエアされました。今回は、「ドイツ・オーストリア〜深遠なる音楽の森〜」と題して、ドイツ・オーストリアのオペラやオペレッタを中心の演奏でした。チョン・ミョンフンの指揮で、スペシャルゲストとして、テノールのジョン・カイズが美声を披露し、ウィーン・フォルクスオーパーのスターたちが「メリー・ウィドー」の一部を歌い踊りました。ワーグナーの「タンホイザー」の第2幕のハイライトで終わりました。
 
途中、バレリーナの酒井はなさんがリヒャルト・シュトラウスの歌劇サロメから、「サロメの踊り」のソロを踊りました。サロメの踊りは、歌劇のクライマックスで、王女サロメが身にまとったベールを一枚一枚脱ぎ捨てていく官能的な踊りです。
酒井はなさん、ニューイヤーオペラコンサートの大舞台に抜擢され、しかも全てソロということで、プレッシャーは相当なものだったことでしょう。 舞台袖で震えながら出番を待っていたのでしょうか、出だしでは脚の震えが止まらなかったのか、トゥで立ったバランスの足首がギグギグするほどでしたし、覆った布からわずかに覗いていた彼女の眼からは、固くなっている表情が感じられました。顔の布をとったときも、こわばったような表情に、過度の緊張が伺えました。でも、いつもと違う官能的な踊りへの挑戦、プレッシャーに押しつぶされまいと必死に踊る姿は本当に美しく、思わず「頑張れ!!」と声をかけたくなりました。でも、中盤以降、緊張も和らいできて、表情も穏やかになり、時折笑みも出てきて、技術的にも安定してきたようでした。その後は、官能的で妖艶なサロメを表現しようと懸命に踊る彼女の気持ちがひしひしと伝わってくるような熱演でした。
それにしても、酒井はなさん、ソロの旨さと表現力は抜群です。場面場面で、それぞれ全く異なる質感で踊り分けています。トゥで立ったときの足の甲の美しさはうっとりするほどですし、前に振り上げた足先が前頭部に付かんばかりの勢いと鋭い決めを強調したと思うと、また、あるときは、余裕に満ちたバランスの美しさと、すっきり伸びた足のラインからは、強靭なエネルギーを感じられました。かといって、いかつい感じは全くなく、あくまでもしなやかで柔らかく繊細な感じです。
踊り終わって、深々と頭を下げる、酒井はなさん、満場の大きな拍手に、心底ホッとしたのでしょう、思わず満面の笑み。持てる力を出し切って、大きく波打っていた胸・・・、ジーンときました。
眠りの森の美女のオーロラ姫や白鳥の湖のオデットのような可憐なお姫様役の多い酒井はなさん、今回は今までとは全く違う妖艶な役への挑戦でしたが、見事、大成功だったと思います。

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