新国立劇場バレエ団の古典全幕バレエがDVD BOOKになって発売されています。
第1巻は「白鳥の湖」。2006年11月18日 新国立劇場で収録したもので、主演は酒井はなと山本隆之です。 この演出は、悪魔ロットバルトが最初人間のお姫様だったオデットを白鳥に変えて城から連れ去るというプロローグ付き、ラストはハッピーエンドです。
2006年という最近の舞台を収録しているわりには画質がそれほど綺麗ではなく、ハイビジョン時代に4:3画面は古臭い気がします。
私は、主役の酒井はなさんには、元気はつらつとしたキャラで、「ドン・キホーテ」のキトリなど、おきゃんな村娘役がお似合いのダンサー
というイメージを持っていました。しっとりとした「お姫様」というイメージはなかったので、DVDの配役を見て、「オデットが酒井はな??」
と意外に思いました。
第2幕のオデットの出。酒井はなは、調子が出ないのか、ちょっと硬かった。
オデットという大役、表情は強張って、かなり緊張しているように感じました。
でも、グラン・アダージョに入って落ち着いてきて、硬さも取れてきたようでした。、
「酒井はなのオデット」を見せようと、よく考えて踊っている気持ちが伝わってきました。
アームスの羽ばたきはなめらかでしたし、
第2幕冒頭での背中をそらせてピシッと決めるポーズや足を高く上げたアラベスクなど、
彼女のオデットは儚げな感じや、お姫様の気品をあまり感じさせない反面、強さという
また違った面白さを感じた、独特のオデットでした。
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第3幕のオディールでは、天真爛漫ではつらつな彼女の良さが出たと思います。アダージョでは、ノーブルな山本隆之のサポートに気を良くしてか、オデットの硬さは取れて、のびのびと踊っていました。
アダージョのアラベスクパンシェでは、山本隆之の手をギュッと握り締め、支えの腕がギクギク揺れながらも必死に堪えて、今にも前のめりになりそうな極限の180度まで足を上げた美しいポーズを決めました。
コーダでの32回転のグラン・フェッテは、かなり辛そうな表情で、幾分ハラハラしたところもありましたが、終盤までダブルを織り込んで頑張りました。
踊り終わってのレヴェランスでは、チャーミングな笑みを見せました。
32回転は踊りというより曲芸に近く、酒井はなほどの経験豊富なダンサーでも失敗せずに踊りこなすのは至難の業で、無事終わってホッとしたことでしょう。
このアダージョがYou Tubeに載っていました。→
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山本隆之は、ノーブルでかっこいい正統派な王子様という感じ。演技は良かったのですが、踊りが、むしろ上品すぎる位。ポール・ド・ブラは酒井はなさんよりも美しいくらいで、踊り全体の線の美しさにはうっとりさせられました。女性のリフトも、軽々とは言えないまでも、スムーズでした。
第3幕では、湯川麻美子が、珍しくルースカヤ(ロシアの踊り)を踊り、とても美しかった。
第4幕の2羽の白鳥に厚木三杏と川村真樹。特に川村真樹がすごくたおやかで美しく、気品にあふれていました。この人がオデットを踊った方がよかったと思ったくらい。
コール・ド・バレエは整然としていてよく揃っていて、とてもレベルが高いと思います。
この映像で、見所は、主役だけではなく、ソリストとコール・ドにもあるように感じました。
こんな素敵なコール・ドをバックに、川村真樹のような、しっとりとしたオデットが踊る舞台を収録した、
DVDを発売してくれたら、一層うれしく思います。
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オデット/オディール:酒井はな
王子:山本隆之
ロットバルト 貝川鐵夫
パ・ド・トロワ 高橋有里、さいとう美帆 マイレン・トレウバエフ
道化 グレゴリー・バリノフ
小さい4羽の白鳥: 遠藤睦子、西山裕子、本島美和、大和雅美
大きい4羽の白鳥: 真忠久美子、厚木三杏、川村真樹、寺島まゆみ
スペイン 楠元郁子、厚木三杏、マイレン・トレウバウエフ、冨川祐樹
ナポリ 井倉真未、小野絢子、八幡顕光
ルースカヤ 湯川麻美子
ハンガリー 西山裕子、市川透
花嫁候補 真忠久美子、本島美和、川村真樹、寺島まゆみ、丸尾孝子、堀口純
2羽の白鳥 厚木三杏、川村真樹
監督・改定振付 牧阿佐美
渡邊一正指揮 東京フィルハーモニー交響楽団
2006年11月18日 新国立劇場オペラ劇場
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