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眠りの森の美女~ローズアダージョのリハーサル:佐久間奈緒、高田茜、金子扶美、倉永美沙ほか    (2017.11.30)

『眠れる森の美女』 ~ローズアダージョのリハーサルの素敵な映像がありました。 一つは佐久間奈緒のバーミンガム・ロイヤル・バレエの佐久間奈緒さん、 二つ目はロイヤルバレエの高田茜さん、 三つ目はロイヤルバレエの金子扶美さん、 最後は、ボストン・バレエの倉永美沙です。 3人は、いずれもそれぞれのバレエ団のプリンシパルです。
佐久間奈緒さんは、おそらく上野水香と同年代で、福岡の古森美智子バレエ団研究所で研鑽を積み、17歳で英国ロイヤルバレエスクール入学。卒業と同時に英国の吊門バーミンガム・ロイヤルバレエ団入団。 2002年にプリンシパルに昇格し。プリンシパルの座についたきっかけは、主役が急な事故で出られなくなったために急遽代役で出演した「くるみ割り人形《が非常に評判が高かったからとか。 たゆまぬ努力で培った実力、そして運も強かったという彼女。忙しいスケジュールの中、自分を育ててくれた古森バレエ団で、子供たちの指導にもあたっているとのこと。 なかなか出来ることではなく感心させられます。ベテランの域に達しながら、今なお輝き続ける彼女に敬朊します。
リハーサルの冒頭、右手を支えている男性に『もっと右に寄って!!。しっかり支えてヨ!!』と厳しく指図して、自らの完璧なバランスを追求する佐久間奈緒。ベテラン・プリンシパルとしての厳しさを感じました。バランスの1~2回目では腕をアンオーに挙げたところでふらつきかけたけれど、3~4回目は上体の揺れをグッと堪えてしっかりと静止したのは流石。真摯に至難な技に取り組む姿が清々しい。
ローズアダージョの稽古(佐久間奈緒)
高田茜さんは、高橋洋美バレエスタジオで研鑽を積み、2016年にロイヤルバレエのプリンシパルに昇格したばかりのフレッシュなバレリーナです。 『One Day at a Time ――未来のことを考えるより、今の自分にできることに全力を尽くす。 それが、私の座右の銘です。今の自分だからできることを見つけて、チャレンジした方が絶対にいい。その日できることに全力で取り組むことが、上確かな未来を確かなものに変えていくんだと思います』 と語っていた記事を見たことがあります。高田茜がキャリアの転機となったのが2016年3月に上演された『ジゼル』。薄幸のヒロイン、ジゼルをドラマチックに踊り、同団の芸術監督ケヴィン・オヘア氏の心を掴み、プリンシパルに昇格した決め手となったそうです。
高田茜は『持久力が要る過酷な瞬間。今まで中で最も難しい役柄』と語っていました。恐る恐る男性の手を放し、ふらつきながらの必死のバランスは、初々しい16歳の乙女・オーロラの揺れ動く心の表現にふさわしい。至難な技に健気に挑む高田茜の険しい表情に、新進プリンシパルとしての意気込みを感じます。最後に15回ものピルエットを決めたのは流石です。 踊り終わって汗びっしょり。『出来た!!』とホッとした表情に胸が熱くなりました。
ローズアダージョの稽古(高田茜)
大阪府出身の金子扶美さんは、地主薫エコール・ド・バレエにて学ぶ。2008年、ヴァルナ国際バレエコンクールで金賞を受賞。続いてモスクワ国際バレエコンクール、USAジャクソン国際バレエコンクールにて受賞。地主薫バレエ団に入団し、『くるみ割り人形』の金平糖の精、『ドン・キホーテ』のキトリ等を踊り、2011年に英国ロイヤル・バレエに入団。翌年にファースト・ソリストに、さらに2013年にはソリストに昇格したという才媛です。 清楚なたたずまい、溢れる気品、伸びやかな爪先など、バレリーナの資質全てを備えた美しい女性。可憐で知的な優しさ、陶磁器のような繊細な輝きが香り立つ、まさにバレエの妖精とも言うべき魅惑の舞姫です。


ローズアダージョの稽古(金子扶美)
この映像で金子扶美を指導しているのは、かってロイヤルバレエのプリンシパルだったダーシー・バッセル。 『眠りの森の美女』は定評があり、ローズ・アダージョは、とても魅力的でしたが、そのバッセルにレッスンを受けた金子扶美。 指導されているのが嬉しくてたまらないというようで、汗びっしょりになって懸命に稽古に挑む姿がいじらしい。
本番では、さぞかし素敵だったことでしょう。 是非、本番の舞台を見たいものです。

ダーシー・バッセルのローズアダージョの舞台

金子扶美のローズアダージョの本番の舞台
倉永美沙さんは、地主薫エコール・ド・バレエで学び、ローザンヌ国際バレエコンクールでプロ研修賞を、第9回モスクワ国際バレエコンクール(女性ジュニア部門日本初)金賞を受賞したことがきっかけで、2003年ボストンバレエ団へ入団。 2009年ボストンバレエ団にてプリンシパルダンサーへ任命され、第一線で活躍しているベテランです。 世界のバレリーナの身長の基準は165センチだと言われている中、倉永美沙の身長156で、日本人の中でも華奢で小柄なバレエダンサーです。 彼女は『私の体格はバレエをするのに完璧なプロポーションではないのです』と言っていたそうですが、倉永美沙は、自身がコンプレックスだと感じて来た体型を彼女の持ち味として魅力に変えたのでしょう。 『世界一ではなく、世界で一人、オリジナルでありたい。自分を誇りに思っている。』という彼女の言葉に、悩んでも変える事ができない生まれ持ったコンプレックスを乗り越えた自信を感じます。
ローズアダージョ終盤のプロブナードに続く至難なバランス。 バレリーナが片足で立ったままサポートの男性の手を離して長くアチチュードのバランスをとり続けるところはクラシックバレエの中で最も高度な技術を要する至難な踊りとされています。 女性が片足の細いトーシューズの先で立ってアチチュードのまま長くバランスを保つには、男性の手をしっかり握りしめていてもぐらぐらして上安定なのに、まして女性は男性が替わるたびに手を離すのですから大変です。 支えを失ったままじっとバランスを堪えていなければなりません。ここはサポートの男性と息が合わないとバランスが上安定になりがちで、バレリーナが恐怖を感じ最も緊張する所です。 ベテランの佐久間奈緒も新進の高田茜も、プリンシパルと言えども真剣そのもの。念入りに稽古する様子が伺えました。
『堪えなければ。耐えなければ。もっと、もっと!!』と自らに言い聞かせるように険しい眼差しで揺れる上体を持ちこたえ、必死にバランスの限界に挑むバレリーナの姿に感動です。
倉永美沙の頑張りには思わず拍手。最初のバランスは13秒、プロムナード後の2度目は支えの足首がふらつきを必死に堪えて12秒、3度目の映像は途中までなのに何と長大の14秒。実際はもっと長かったのでしょう。 これだけバランスを保つ持久力には驚嘆です。見ている方も、思わず『堪えて、堪えて!!。頑張れ!!。』と応援したくなりました。グラッとなっても『持ちこたえなければ。もっと、もっと!!』と、懸命に堪えてやり遂げる精神力の強さと上屈の意気込みには脱帽です。

ローズアダージョのバランスの稽古(倉永美沙)
さらに、バランスの稽古に励むバレリーナの映像がinstagramに載っていました。いずれも、最高の美を求めて、懸命に自らの限界に挑戦する姿に胸をうたれます。

一つ目は、加治屋百合子さん。ヒューストン・バレエのプリンシパルです。 オーストラリアバレエ団への客演のリハーサルのようですが、二度のバランスを無断にこなし、三度目で、グッと堪えた長~いバランスが見事。 おもわず、観客から拍手が湧きました。

ローズアダージョのバランスの稽古(加治屋百合子)
二つ目は、影山茉以さん。ポーランド国立バレエ団プリンシパルです。こちらはバランスの部分だけですが、InstagramとTwitterに同じ映像が載っていました。
彼女は驚異の長時間バランスに挑戦していました。揺れ動く体を必死に堪えて『耐えるのヨ。持ちこたえるのヨ。もっともっと!!』と自らに言い聞かせるように、バランスを維持する健気な姿。感動的です。 今にも崩れそうにグラグラする後方に伸ばした足の揺れを懸命に堪えて辛抱強く持ちこたえ、見ている方もハラハラ、ドキドキ、手に汗握る応援モードになって身を乗り出してしまいました。
途中幾度か体が傾いてもグッと堪え、50秒間もの長い間もバランスをとり続けた影山茉以は『集中力を高めるのに効果的』『辛抱強く』『これが本番で出来ればね』とinstagramにコメントしていますが、これだけ精魂こめて稽古した彼女のこと、きっと本番の舞台は素晴らしい踊りを見せてくれたことでしょう。
彼女の弛まぬ努力にリスペクトです。
さらに、もう一つは、内田千裕(chihiro uchida)さん。Singapore Dance Theatreのプリンシパルです。こちらもバランスの部分だけですが、Instagram映像が載っていました。 なかなかバランスが安定しないようで、幾度か支えの手を下ろしながらも、懸命にローズアダージョの至難なバランスに挑戦していました。
『 以前よりも、何倊も楽しめるようになったローズアダージョ🌹アティチュード・バランスが、良い時と良くない時とあるので、練習あるのみです!。バランスしたい欲が出過ぎて、上手くいかない時も😅欲張り過ぎるのは要注意ですが、上安でカチカチだった頃の私よりは、肝が据わったなと思います。 バランスしやすいシューズ選びや、バランスを助ける筋肉やコアの強化も大切だと思うので、色々と追求していかないと。』とコメントしていました。
至難な技を繰り返し繰り返し練習する健気な姿、本当に素敵。リスペクトです。内田千裕さんの素敵な動画がありました。こちら→
かって、ローズアダージョで息をのむほど見事なバランスを見せて観客を魅了した吉岡美佳さんは、ポアントのバランスを徹底的に研究してこの大役に挑んだそうです。 『ローズ・アダージョはどんなバレリーナにも大変です。リハーサルの時は自分が出来るギリギリのところまでバランスをとってみるようにしました。調子のいいときはそのままずっと立っていられそうなこともありました《。 「調子よく踊れそうだと思っていても、いざ本番となるとうまくいかないことがあります。舞台ではどんなにキャリアのある人でも緊張するものです。オーロラ姫のようにポアントの多い踊りではなおさらで、知らず知らずのうちに上半身に力が入って足元がぐらつきやすくなってしまいます。そんなときにバレエの基礎を見につけているかが問われます。基礎を疎かにしていない人は土台がしっかりしているので、本番の舞台に強いのです』(クララ(99年2月号))(新書館)。 と言って、吉岡さんは公演直前までプリエやタンデュといった基本的なパを繰り返して練習した上で、本番に臨んだそうです。 これほどローズアダージョは難しいのでしょう。

ローズアダージョのバランスの稽古(Yanela Pinera

ローズアダージョのバランスの稽古(畑中葵)

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