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ジゼル:佐久間奈緒、スターダンサーズバレエ    (2006.2.5)
 佐久間奈緒の全力投球の舞台に感激

スターダンサーズバレエ団公演の「ジゼル」を見てきました。プティパの原振付にピーター・ライトが追加振付をした、いわゆる「ピーターライト版」ジゼルです。音とマイムと踊りが見事に融合したライトの振り付け。このようにバレエを演劇の様に持っていけるのは、やはりシェークスピアの国イギリスならではでしょう。それだけにライトは出演者にも踊りに併せて高度な演技力や表現力を要求しています。
主役のジゼルはバーミンガム・ロイヤル・バレエ団の若きプリンシパル佐久間奈緒。 たゆまぬ努力で培った実力、そして運も強かったという彼女。おそらく上野水香と同年代で、福岡の古森美智子バレエ団研究所で研鑽を積み、17歳で英国ロイヤルバレエスクール入学。卒業と同時に英国の名門バーミンガム・ロイヤルバレエ団入団。プリンシパルの座についたきっかけは、主役が急な事故で出られなくなったために急遽代役で出演した「くるみ割り人形」が非常に評判が高かったからとか。 彼女は、忙しいスケジュールを調整して年に2回里帰りし、自分を育ててくれた古森バレエ団で、子供たちの指導にもあたっているとのこと。 なかなか出来ることではありません。感心させられます。
今回のジゼル、佐久間奈緒は、非常に正確なテクニックと表現力の豊かさが印象的でした。テクニックも全然嫌味がなくて品がありました。バーミンガム・ロイヤル・バレエ団のディレクター、デヴィッド・ビントリー氏は「奈緒は驚くほど強靭なテクニックの持ち主だが、その一方で表現力においても優雅さや美しさを併せ持っている」、 佐久間奈緒自身は「ダンサーというのはテクニシャンである前に、アクターでなくてはならないのです」と語ったという記事を読んだことがありますが、彼女の演技の表現力の良さは正確で高度なテクニックという基礎があるからこそ成り立っているのでしょう。
 
第1幕は佐久間奈緒の魅力が最大限に発揮されたという感じ。いじらしくて可愛い村娘ジゼルを演じました。彼女はとにかく表情や手振りが印象的で、楽しげに踊りながらもどこか不安げな様子、恋人アルブレヒトに対して少しすねる様子など可愛らしく、見ていて微笑まれます。一方、些細なことに一喜一憂する少女ジゼルの不安定さや孤独も滲み出ていました。 キラキラして華があって、というタイプではないようですが、踊りのひとつひとつがとても丁寧で確実で美しかった。 狂乱の場、髪を振り乱して剣を振り回し、最後、母親の腕に倒れ込むすさまじさ、見事な熱演でした。
第2幕では、初めやや堅さが感じられ、出だしの回転でわずかにバランスを崩しました。また、若さからかややテクニックが目立った感じがないでもなく、ロバート・テューズリーとのパ・ド・ドゥ等に、もう少し自然な表現が欲しいなと思ったところがありました。でも若さと初々しさがあるというのは、これから磨かれていくというこという意味でもあるでしょうから、それは贅沢というものでしょう。 きちっとしたきれいなポーズ、ピシッと決まるパはとてもクリアな印象。ポアントのとき足の甲がまっすぐ伸び、爪先から脚がすっと伸びている。この脚線がなんとも言えず美しい。そしてそれを最初から最後まで同じテンションで魅せてくれたことに感動しました。 足の下に回転台があるのではないかと思うほどスムーズなアラベスクの回転、これ以上前傾したらつんのめってしまうと思うほど足を高くあげグッと堪えたアラベスクのポーズの美しさ等、高度なテクニックが光っていました。
相手役のテューズリーは、長身を生かしたダイナミックな踊りが魅力的でした。豪快でそれでいて軽やかさがある踊りで、アルブレヒトを好演していました。 指揮の田中良和は、ステージのダンサーをよく見てオーケストラを引っ張り、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団も、比較的こじんまりとしていたものの、正確な演奏で、的確にステージの上のダンサーたちをサポートしていました。 終盤近く、私の横の老人の女性がハンカチを目に当てていました。ピーターライトのドラマチックな演出とそれに応えた佐久間さんの演技に感動したのでしょう。踊り終えてのレヴェランス、観客の大きな拍手に加えて、ピーター・ライトから花束を受けて、佐久間さん、張りつめていた緊張が一気に解け、思わずこみ上げてきたものがあったのでしょう、しきりに目をしばたいていたのが印象的でした。 ダンサーとして至福の喜びを感じた一時だったに違い有りません。 英国では、吉田都がロイヤル・バレエのプリンシパルとして活躍していますが、同じ英国のバーミンガムの若きプリンシパル佐久間奈緒、この公演の成功をバネに、一層大きく、羽ばたいてもらいたいものです。
ジゼル:佐久間 奈緒、アルブレヒト:ロバート・テューズリー、
ヒラリオン:新村純一、ミルタ:小池知子、バチルド:小山恵美
音楽:アドルフ・アダン、演出:ピーター・ライト 
振付:マリウス・プティパ ピーター・ライト、
総監督:小山久美、
指揮:田中良和、管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
2006年2月5日、ゆうぽうと簡易保険ホール

この公演の評がありました。→こちら

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