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シェエラザード:穴井 宏実、菊池バレエ研究所  (2012.08.07)

バレエ「シェエラザード(Scheherazade)」は、リムスキー=コルサコフの同名の交響詩をバレエにしたものです。 交響詩「シェエラザード」は、第1楽章:海とシンドバッドの船、第2楽章:カランダール王子の物語、第3楽章:若い王子と王女、第4楽章:バグダッドの祭りという構成ですが、 バレエ「シェエラザード」は音楽をそのまま使用しているものの、物語は全く違います。 ちなみに「シェエラザード」は、妻の不貞を見て女性不信となった王に、毎晩「千一夜物語」を語って気を紛らわさせたという女性の名前で、本人はオリジナルの交響詩にもバレエにも登場しません。
 
バレエ「シェヘラザード」のあらすじは次の通りです。
シャリアール王は王妃ゾベイダを寵愛していますが、王の弟であるゼマンは王妃が不貞をはたらいていると密告します。 王はそれを確かめるため、狩りに出かけると偽って宮殿を留守にします。 そうとも知らず、王妃ゾベイダは男奴隷たちを後宮内に引き入れて、後宮の女奴隷たちと宴に興じます。 王妃や女奴隷たちが男奴隷たちと快楽に耽っているまさにそのとき、王たちが後宮内に一斉に踏み込んできます。 激怒した王の命令によって、ゼマンと兵隊は、奴隷たちを皆殺しにします。王妃は王に許しを乞うが受け入れられず、短剣で自殺してしまいます。
 
セットは、背景の幕だけという簡素なものでしたが、衣装は、王や王妃、主役である金・銀・銅の奴隷はもちろん群舞に至るまで、みなよくマッチしていました。 ディベルティスマンの多い純クラシックと違って、具体的なストーリーに沿って進んでいくので分かりやすいし、出演者はみな生き生きとしていたし、 時としてクネクネしたなまめかしいアラビア風の振付もあるという楽しい舞台でした。
 
ゾベイダ王妃役の穴井宏実は、谷桃子バレエ団からの応援だそうですが、 非常に柔らかい動きで甘美な踊りで、ただ歩いているだけでも気品を感じるような仕草や立ち居振る舞いを感じました。 小柄で華奢ながら、しなやかで繊細な身体表現が美しい、このバレリーナは、オダリスクなどの女性ダンサーたちの中にあって、一際妖艶かつ優雅な輝きを放っていました。 ポワントの立ち居は美しく、片脚を後ろに上げるアラベスクでも、軽々と高々と上がって、その身体のしなやかさと柔らかさに驚きました。 アクロバット的な踊りが多いこのバレエ、穴井宏実は、パートナーの男性にウェスト掴まれたグイッと放り上げられ、ビュンビュンと振り回されるといった過激な振りにも耐え抜き、 まっさかさまに落ちるリプカでは、ハッと息を呑みました。 ふと暗い顔つきになって目を落としてうつむいたり、少女のような明るい笑顔を浮かべたりと、表情も豊か。 「シェエラザード」のバレエは、内容的には特段優れているとは思えませんが、穴井宏実という優れた新進ダンサーを得て、 とても魅力的なバレエになったように思います。
この舞台は、贅沢な装置や衣装を備え、それに有名なキャストをそろえるといった豪華な公演ではなく、いたって簡素です。 でもそれがかえって品が良く爽やかに感じました。ただ、演奏は生ではなく録音を使用。これは仕方がないにしても、踊り良さそうなテンポの演奏でしたが、いかんせん音が悪い。 とはいうものの全体的にはとても満足できた舞台でした。出演者達の熱意に打たれました。主役はもちろん、コールドバレエの一人一人に至るまで、 日頃からの練習の成果を披露しようと、頑張って、舞台を盛り上げようと一生懸命なのが伝わって来ました。とりわけ、主役の穴井宏実の素晴らしさは驚きでした。 発表会にベテランのダンサーが呼ばれて踊ると、失敗を恐れるあまり、こじんまりとなって精彩を欠く場合もあるのですが、 そこは若さあふれる穴井宏実のこと、ひたむきさに緊張感も見られ、当たって砕けろ的な大胆な動作もあって、のびのびと踊りを楽しんでいるという感じでした。 発表会の舞台では、時として、若いダンサーが生き生きとした素晴らしい踊りを見せることがあり、それが公演とは違った発表会の楽しみの一つでもあります。 しばしの楽しい夢の一時を過ごしました。

バレエ「シェエラザード」
賛助出演:穴井 宏実(谷桃子バレエ団)、伊坂 文月(K-Ballet)、
   泊陽平(K-Ballet)、馬渕 唯史(マブチ・ダンス・ステップス)ほか
出演:菊池バレエ研究所
2012年7月22日(日)、麻生文化センター(新百合ヶ丘)

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