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篠原聖一リサイタル (2001.11.01)
篠原聖一リサイタル<DANCE for Life 2001>を観てきました。
2001年10月30日 青山劇場(こどもの城)
篠原聖一さんは、日本で数少ないクラシックバレエ界を代表するダンスール・ノーブルとして活躍しています。篠原さんは、先日(2001年6月)の「ジゼル」公演で、表向き、いわゆるクラシックの「王子役」としては、引退され、振付家としての新たなステップを踏み出しました。この初のバレエリサイタルです。
篠原さんは、夫人である下村由理恵さんと二人三脚で、日本のバレエ界をリードしてきました。由理恵さんとのパドドゥは、おしどり夫婦ゆえの微笑ましさに溢れた素晴らしいものでした。今回も下村さんも出演し、初のリサイタルに花を添えています。
実は私は、コンサート形式のステージを観るのは好きではありません。バレエは全幕通して観るのが本来の姿だと思っています。
バレエコンサートでは、出演者が否応なしにお互いを意識し、テクニックの競争になりがちだからです。超絶技巧を観るのも楽しい面もあるのでが、バレエは芸術です。アクロバットではありません。
ですから、今回の公演も、チョッとその点で心配でした。でもこの心配は不要でした。それぞれのダンサーは、決してそんな競争しているという様子ではなく、篠原聖一さんを引き立てようという気持ちで一つになっていたのです。舞台を成功させようという懸命な気持ちが伝わってきました。
バレエコンサートにありがちな、テクニックの見せびらかしのようなぎすぎすしたところは微塵もなく、篠原さんを中心にした、美しい輪を作っているようで、終わった時、暖かで柔和な気持ちになれたのです。
ただ、全体に、やや盛り上がりに欠けたのは否めません。「クリスタル」は、女性ソリストを贅沢に使っていたわりには、全般に平坦で、これといった印象に残る場面に乏しかったように思います。
下村由理恵さんと、森田健太郎さんの「グラズノフのパドドゥ」は、とても美しいかったのですが、アダージョやソロでは演技派の由理恵さんにしてはやや単調な気がしました。ただコーダでの二人の盛り上がりは素晴らしかった。
最後のアウトはとても良かった。バッハの曲に乗せた個性的な踊りが続き、佐々木想美さんを中心に素敵なハーモニーでした。でもトゥシューズを使わなかった。
佐々木想美さんは、すっと伸びた甲のカーブが、この上なく美しいのです。もし、トゥシューズでの踊りだったら、さらに上品さと華やかさが加わって、素敵だったのではと思いました。
それにしても、有名なダンサー達がこんなにたくさん応援に駆けつけてくれるのは、
やはり篠原・下村夫妻の人望がことのほか厚いからなのでしょう。お二人は本当に素敵な方達だと思います。
下村由理恵さんは、「Time Time & Time」、「グラズノフのパドドゥ」、そして、「Out」と、3曲も踊りました。相当な体力と精神力を使ったにもかかわらず、少しも疲れた様子を見せなかったのはさすがだと思います。
由理恵さんは、最近、のりにのっておられるようで、精力的にハードスケジュールをこなしておられます。でも、あまりに無理をして、怪我をしないよう気を付けてもらいたいものです。由理恵さんには、マーゴフォンティーンや森下洋子さん
のように、息の長いバレリーナであって欲しいと思うからです。
なお、今回、篠原さんと由理恵さんとのパドドゥはありませんでした。
「王子役」を引退したとはいえ、由理恵さんとのパドドゥほど、心温まる素敵な踊りはありません。これからも由理恵さんとパドドゥを踊ってくれることを願っています。
ところで、日本は、フリーランスの振付家やダンサーのような芸術家はなかなか認められず、苦労の多い住み難い国だと思います。そんな中で今回のリサイタル開催のように、必死に頑張っている篠原聖一・下村由理恵夫妻を見ていると、思わず「頑張って!!」と応援したくなります。くれぐれもお体を大切にして、いつまでも日本のバレエ界をリードする、プリンスとプリンセスでいて欲しいと思います。
プログラムは以下の通りです。
「クリスタル」(1995年)
大畠律子・加藤久美子・森田健太郎 児玉麗奈・島田衣子ほか
「Time Time & Time」(1996) 下村由理恵
「PREST」(1998) 「アブサート」(2001)
「チャップリン」(1993) 篠原聖一
「グラズノフ パ・ド・ドゥ」(初演) 下村由理恵・森田健太郎
「Out」(1999)下村由理恵・佐々木想美・児玉麗奈・島田衣子 ほか
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