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何とも美しく微笑ましいジゼル〜第2幕からのパ・ド・ドゥの映像がYouTubeに載っていました。
Artistic Ballet Gala2018というバレエのガラ公演の一部です。
演じているのは、瀬島五月とアンドリュー・エルフィンストンです。
ジゼルを演じている瀬島五月は、静かな物腰で、清楚な中にたおやかさを感じさせる美しいバレリーナ。
天性としてバレエの資質を持っているようで、フワッと風のように踊る姿は精霊そのものでジゼルを踊る為に生まれてきたと思われるほどです。
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パートナーのエルフィンストンにエスコートされて登場した瀬島五月の精霊ジゼル。アントレでは腕を組んでゆっくりと中央へ進んでいきます。
センターで分け、お団子に結わえたヘアと釣鐘状のスカートのロマンチック・チュチュがとても良く似合い、円やかな甲とスッキリ伸びたトゥがこの上なく美しい。
踊り手泣かせの、とんでもなく難しいバランスの技を控えてか、とても緊張した険しい表情。思わず『頑張れ!!』と声をかけたくなった。
まず左足をデヴロッペして右足をゆっくりと上げていくポーズ。両手をアンオーの位置にあげ、右足を上げ始めた瞬間、軸の左足が僅かに揺れ、一際瀬島五月の表情が一層険しく引きつったようになった。
でも懸命に粘って右足をゆっくりと上げ、意を決して120°近くまでアラスゴンドに開脚しグッと堪えます。
無事終えたのもつかのま、続いて第2の難関、アチチュードでの回転。足裏全体を床に付けたまま右足を軸にして、左足を水平に上げてゆっくり一回転する至難な業。
ベテランでも失敗しがちなこの回転。わずかにギクギクしてぎこちなかったものの、軸足の下に回転台があるかのように無難にこなし美しかった。
無事回り終えて、最後の第3の難関は、左足のアラスゴンド。右足を軸足にして、左足をゆっくりと上げていきます。
この時、軸の右脚のくるぶしがギクギクと揺れて,、『ヤバイ!!、堪えて!・堪えて!』と一瞬手に汗を握ったけれど、歯を食いしばって必死に持ちこたえ、120°程まで足を上げてグッと堪えました。
最後はアラベスクパンシェ。これは90°強で、やや物足りなく、最低でも120°は上げて欲しかったけれど、それは贅沢というものでしょう。
むしろ、『エレガントの欠けらもない』と言われたシルヴィ・ギエムや上野水香の180°もの開脚の”六時のポーズ”より、ほどほどの節度をわきまえた上品で優雅な、この瀬島五月の開脚の方が、ジゼルのイメージにふさわしい。
かって故蘆原英了が、
『バレエの美は不安定の安定。デンと立っている姿は美しくない。崩れそうで崩れない”不安定の安定”のバランスこそ美しい』と言っていましたが、多少軸がブレても、必死に堪えて持ちこたえるバレリーナの姿の方が魅力的ということでしょう。瀬島五月の踊りを見ていると、その通りのような気がします。
歯を食いしばって険しい表情で、かといってわざとらしく技術を誇示せず節度をわきまえて、至難な技にひたむきに取り組み、精魂こめて踊りぬいたバレリーナの姿、本当に美しいものです。思わず観客の感嘆と賞賛の拍手が沸きました。
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前半の難関を無事終えた安堵感で気をよくしたのか、その後はまさに瀬島五月ワールド。伸び伸びと踊っていました。
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アダージョ最後の難関のアラベスクパンシェ。両腕を胸前で組んで瀬島五月の腕の支えがなくアンドリューの腕の支えだけが頼りのバランス。前につんのめりそうになるまで、ゆっくりと恐る恐る体を倒していきます。
グッと堪えた美しいバランスに、再び観客から大きな拍手が起きました。
踊り終わってのレベランス。暖かい大きな観客の拍手を受けて、二人の表情はさわやかでした。
瀬島五月は、『初めのバランスとか客席を緊張させた出来でしたが、、、温かく見ていただけると・・・。ガラでやると膝震えます。』とコメントしていました。『客席を緊張させた』と言ってもバランスを崩したわけでもなく、わずかにグラついただけなので、それほど悔やむことではなく、むしろ胸を張って良いと思う。
『客席を緊張させた出来』は、客席に『ハラハラ、ドキドキ、頑張って!!』と思わせた、蘆原英了氏の言っていた”不安定の安定”の魅力そのものであり、むしろギクギク・ガタガタと膝が震えるほど緊張して、恐怖で顔面が引きつったようになりながらも、真剣に至難な技に立ち向かった彼女の健気な姿は、この世のものとも思えないほど美しく魅力的で、うっとりと見入ってしまいました。
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こんな極限の状態の中にあって、その恐怖を乗り越えて、膝の震えを抑えて懸命に頑張って生み出した『客席を緊張させた出来』だったこそ、観客の感動を呼んだのでしょうし、これこそバレエの醍醐味であり、最高の美だと思います。 『ブラボー、瀬島五月さん!!』。 |
瀬島五月は、2018年末、夫君のアンドリュー・エルフィンストンと共に長年所属していた貞松・浜田バレエ団を退団し、バレエ団体「Ballet Company West Japan」を立ち上げ、活動を始めました。先程のコメントの中で、『私たちの踊ってきたもの、信じるものをお伝えできたのではと思います。また精進致します!』という言葉に感動しました。『客席を緊張させた出来』というのは、彼女はこの舞台には納得いかないところがあったのでしょう。
だからこそ、『また精進致します!』という言葉が出たのでしょう。慎ましやかな気持ちの表現の中に、新たな世界で力強く生きていこうとする彼女の意気込みを感じます。
『頑張れ、瀬島五月さん!!』。 |
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